『明日が、あなたの日々の最高の一日になりますように。なぜなら、あなたの最後のであるから』ベン・リヴァース結城秀勇
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渋谷イメージフォーラムで行われた「Imaginary Riverside」と題された上映会で、ベン・リヴァースの作品群を初めて目にし、衝撃を受ける。ロッテルダム映画祭のタイガーアワードに2年連続ノミネート、そして同賞を受賞と、世界ではまさに評価の固まりつつある作家であるだけに、こうした機会に発見できたのはとても良かった。
彼の作品を薦めてくれた中原昌也さんも言っていたことだが、とにかく音の処理がすごい。16mm、自家現像、及び自給自足的な生活を送る人々をよく被写体として選ぶことなど、前情報からどうしてもローファイな作品を想像していたのだが、そんなことはなく総合的に非常に作りこんである印象を受けた。それは前述の「音」ひとつとってもそうであるし、また平均して10分足らずの彼の作品群が、「編集」という要素を強く感じさせるのもそうしたことだろう。
たとえば『We the people』という作品では、無人の光景(都市計画用のモデルハウスだという)に群衆の叫び声(『M』や30年代のホラー・ムーヴィのサウンドを使用していると語っていた)が重ねられ、さらにそこに具象的としか言いようのないノイズが重ねられる。ある種の理想を持っているはずの計画が、無人の光景として、日常それに接していながらも決して目にすることのない「もの」の世界をそこから引き出す。
またこの日上映された作品の中ではいちばん新しいものである『明日が、あなたの日々の最高の一日になりますように。なぜなら、あなたの最後のであるから』では、農民にも抗夫にも捕虜にされた兵士のようにも見える人々が、森の中をさまよい歩く。そこで浮き彫りにされるのは、衣装のテクスチュアであり(そもそもこの映画は、この作品の衣装を担当したデザイナーとのコラボレーションという点から出発したのだそうだ)、人々の顔や手に刻まれた質感であり、皮膚のしわや襞に潜り込んだ土の物質性である。
リヴァースは現在最新作のために軍艦島を撮影しに来日したとのこと。是非その作品の上映機会を待ちたい。なお3月発売予定のnobody33にて、ベン・リヴァースインタヴューの掲載を予定している。