ヴァンクーヴァー・オリンピック ジャンプ団体梅本洋一
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黄金時代の日本ジャンプチームを率い、今日は解説者席に座る小野学はいったい何を考えたろう。バイツ、ユリアンティラと外国人ヘッドコーチを招聘しているが、好結果を残せない。今でも素晴らしい結果を残し続ける葛西の努力は賞賛に値するけれども、今なお、彼が代表でもっとも良い成績を残し続けることは、やはり強化がうまく行っていないということだ。結局出場機会はなかったが、岡部までもが代表に呼び戻されるということは、長野オリンピック以来、選手が育ってきていないということだ。確かに伊東大貴は、今シーズンの前半は好調だったが、ヴァンクーヴァーにピーキングできなかった。W杯に出続けていた湯本は代表落ちし、団体戦に出た竹内択にせよ栃本翔平にしても、オーストリーはもちろん、ドイツ、ノルウェイの選手と比べると大幅に見劣りする。ジャーナリズムは、日本の実力を過信し、何とかメダルを!と叫ぶが、昨夜、テレビ出演した小野学は、5位ぐらいが妥当でしょう、と述べていた。その通りになった。昨年の世界選手権の3位はラッキーだったというだけだ。
選手強化に問題があるのだろうが、もっと大きな問題も見え隠れする。企業スポーツという問題だ。雪印(原田、伊東)、土屋(葛西)といった企業に選手たちが丸抱えされている。彼らはサラリーマンなのだ。だが、W杯を見続けている者にとって、大倉山のNHK杯優勝程度が目標の企業スポーツの枠を、この競技ははるかに越えている。ヨーロッパ・ジャンプ週間の賑わいぶりを見れば、そんなことは明らかだろう。ウィンタースポーツに関わる企業がコンソーシアムを組んで、SAJをサポートする体制が最低限必要ではないか。あるいは、カーリングのチーム青森のように、大倉シャンツェのある札幌市が、ジャンプチームを完全にサポートする体制を作るのもいいかもしれない。船木和喜の弁だが、日本人選手の多くは大倉山で練習しているので、大倉山特有の向かい風に慣れているので、無風や追い風では結果が出せないということだ。W杯形式のジャパン・カップを設けて、各地の台──スキー場に行くと大会後はまったく使われていないジャンプ台がたくさんある──を回りつつ、ヨーロッパ・カップのように、そこで好成績を収めた選手を次々にW杯に参戦させるのもいいだろう。フットボールのようにジャパンA、ジャパンBといったカテゴリーに10名程度の選手を入れておく。AチームはW杯、Bチームはヨーロッパ杯といった感じで。
とにかく数人のエリートのみが常にW杯に参戦する現在の方式では、選手層がさっぱり厚くならない。