関東大学ラグビー 対抗戦 早稲田対帝京 33-14 慶應対明治 17-20 梅本洋一
[ sports ]
この1週間、フットボールだけでも数多くのゲームを見た。まず不甲斐ない敗戦を喫したジャパン・ラグビーの対サモア戦。ジョン・カーワンのラグビーは、結局のところ、いつも真っ向勝負を挑むだけであって、それでは主要8か国とぜったい拮抗するゲームなど期待することができない。春には確かにアウェイでサモアに勝った。だが、今回、遠征してきたチームは若手主体のいわば2軍、そこに勝てない。つまり、強くないということ。真っ向勝負と書いたけれど、彼がしているのはごく普通のラグビーであって、チームとしての特長は、全体として平均的なスキルが高いということ。
それからリーグ戦では今シーズン不調の法政が、関東学院に対して前半で24点のビハインドを後半にひっくり返して勝利を収めた。ちょっと感動的なゲームだった。だが、冷静に考えれば、学生のラグビーというのは、メンタルな部分が大きな要素を占めているということ。気を抜いてはいけない、とか、最後まで諦めない、とか、精神的な訓話の方が具体的な戦術よりも重要性を持ってしまうのは好きにはなれないけれども……。もちろん、大西鐵之輔だって、最後は精神論だったことは知っているが、精神論にたどり着くまでは、信じがたいほどに戦術的な思考を展開したのも本当だ。
そして、4戦全勝同士がぶつかった2ゲーム。残念ながら、どのチームもチーム作りの途上にあり、高度なラグビーを楽しめはしなかった。個人のスキルにしても、ハイプレッシャーの中で素早く正確なスキルを見せられるほどではない。ノックオンなどの基本的なミスが多すぎた。しかし、それぞれのチームがどんな方向へ向かおうとしているのかは手に取るように判った。まず帝京は、昨シーズンと同じ。ゆったりしたリズムの中でボールを支配しながらゲームを作っていく。セットピースはまだしも、肝腎のブレイクダウンの厳しさが欠けていた。早稲田はスキルの上でのイージーミスや判断ミスを重ねながらも、言い方を換えれば、それらのミスに目を瞑りつつ、速度だけを指向することで、未完成の帝京チームを粉砕した。これは方法論の問題だが、まず速度から出発するのか、あるいは基本的なスキルのレヴェルアップを行ってから、そこに速度を導入するのか、という問題について、早稲田はまず速度から入っている。もちろんセットピース──特にラインアウト──の稚拙さは目を被うが、23日の慶應戦までにどの程度仕上げてくるかを見る必要がある。
そして慶明戦は、いい勝負。原点回帰を明治がめざすには吉田という人材はうってつけだろう。しかし、明治が最も強かった松尾雄治の時代は、「前へ」という原点の明治に、ディフェンス力と展開力が備わっていたことを忘れるべきではない。そして慶應は、ほれぼれするようなラインアウトの正確性を持っているのだから、それを活かして、もっとワイドだ。