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December 6, 2010

2010関東大学ラグビー対抗戦 早稲田対明治 31-15
梅本洋一

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 下馬評を覆して早稲田の快勝。慶明戦と早慶戦を見る限り、今年の明治は相当やると皆、考えたはずだ。昨日の帝京対慶應を見ても慶應の充実ぶりは目立っていたから、その慶應を敗った明治はかなり強いと考えられた。そして僅差だが、早稲田は慶應に負けている。かつての明治を彷彿とさせるFWと吉田義人が吹き込んだ魂。そしてSO田村の充実ぶり。明治が強いときは、もちろん盤石なFWもあるけれども、それよりもバックスが素晴らしいことは、ぼくのように森=松尾時代を知っている年寄りばかりではないだろう。だから明治有利だと思えた。
 そしてキックオフから明治のラッシュ。かつての早明戦の再現ビデオを見ているよう。だが、押し切れない明治。スクラムもほぼイーヴン。早稲田の若い第1列の健闘が光る。そしてモールができる前に低いディフェンスで対抗する早稲田。早稲田ゴールに近付きならも、しっかりしたモールを組めない明治。それでもごり押しに固執する明治。辻がこの展開を読んでいたかどうかは分からないが、早稲田はカウンターに徹していた。田村の延びるキックをキャッチすると、バックスリーがスペースに入り込み、FWが押し込み、フロントスリーで勝負。前半は、それで2トライ。
 早慶戦で、これほど広いスペースをもらったことはなかった。そして、ラインに余裕があるせいか、山中のプレーにブレがない。ミスパスが極めて少ないゲームになった。彼のプレーは、ファンタジスタとも言われていたが、今年は勝負するとき、キックするとき、パスするときの判断力が上がっている。その分、彼自身が目立たなくなっているかも知れないが、プレーの選択が正しいと、両センターも両ウィングも思った通りの動きをする。早稲田のこうしたプレーを前にすると、慶明戦で光っていた明治が実に凡庸なチームに見えてしまう。
 さすがに後半は明治が気合いを入れ直して向かってきたので、2トライは奪われたが、終わってみればトライ数4-2。その程度の差は明らかにあったように見える。スクラム第1列を除いて上級生がレギュラーを占めている早稲田には、経験値という上積みがあるようだ。普通にプレーして普通に勝ったという感じ。つまり、慶應のように対早稲田戦にあたって、早稲田を徹底的に研究してきたチームと、この日の明治のように、「自分たちのプレーをすれば勝つのだ」という根拠のない信念だけでぶつかってきたチームを比べれば、もちろん、慶應の方がずっと優れたチームだという結論が導かれる。
 早慶戦の時の早稲田は、今日の明治のようだった。「自分たちのプレーをすれば勝てる」という無根拠な確信を持つとき、「自分たちのプレー」ができないときは、敗戦に追い込まれる。それぞれのゲームには異なる戦略を戦術があるという単純な事実をこのゲームは思い出させてくれた。