2010-11ラグビー大学選手権準決勝 帝京対東海 36-22 早稲田対明治 74-10 梅本洋一
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いよいよ東海が本気を出して、ピリピリした緊張感に満ちたゲームをやってくるかと思ったのが、大きな間違い。東海はいつも通り。そして、帝京は、慶應を敗って焦点を絞った戦いをしてきた。
やはりリーグ戦グループでは真剣勝負が少ないのか、それとも東海の実力が抜けているからなのかは分からないが、ディフェンス勝負、ミスひとつが命取りになる戦いをやって来なかったことが原因だろう。ほぼ全員がナチュラルボーン型の東海は、潜在能力を発揮しないまま負けてしまった。対する帝京は、FW周辺に的を絞ったゲームメイクに磨きをかけ、精度を上げてのぞんできた。東海はけっこうやる感じだが、その程度。だって、個々を抜かれたら終わりというゲームをする前に勝ってきたから。相手の重いFWにタックルが高い。今まではタックルが高くても、抜かれても、もっと多く楽に得点できたから。きっと後半20分からは、やばいなと皆、思っていたろうが、どうしていいか分からないうちにノーサイドになったのだろう。その意味で、帝京は、対抗戦グループに属していることを感謝すべきだろう。明治、早稲田、慶應に特に感謝すべきだ。
そして開始早々に13番を失い、後半開始早々に10番を失った明治は、目を被いたくなるような敗戦。これは早稲田対成蹊、あるいは早稲田対立教ではない。早稲田対明治だ。早明戦だ。それも吉田義人の明治だ。それが12トライを奪われ、後半だけ見れば59-0の惨敗。対抗戦ではトライ数で4-2だった。ここまで奈落の底に落ちた明治は、どこに原因があったのか。この分析は面倒な作業になるだろう。もちろん、事の発端は7分に衛藤が早稲田のダブルタックルを喰らって退場したことに始まる。早稲田はセットピースをイーヴンで切り抜け、流れの中では、まず対面に勝つことを徹底して行っていた。明治は、FWに拘りすぎた早明戦を「反省」したのか、いつになくバックス勝負。だが、おそらくひとりひとりに才能はあるのだろうが、ラインとして早稲田と勝負するまで力はなかった。ラインブレイクできたのは2度ほどだったか。明治は、まるで第1試合の東海のようにナチュラルな──つまり何も考えていないラグビーをし、早稲田はディフェンスからのカウンターに的を絞った。つまり「まずディフェンス」。ディフェンスで勝ち、カウンター。井口のランか山中のハイパント。そのゲームメイクが恐ろしいほどに的中した。明治のディフェンスの中心になる衛藤が7分に退場した後、前半のラスト近くではアタックを仕切るを田村が怪我。もうタオル!
後半20分からの明治にとって、ノーサイドの笛までの時間は永遠にも感じられたのではないか。
さて早稲田対帝京はどうなる? 早稲田のFWがどれだけ頑張れるか、ということだ。まずセットピースでイーヴンなら、早稲田が勝つだろう。帝京が勝つつもりなら、スクラムで圧倒し、徹底して近場で勝負し、キックを封印することだ。誰でもその程度のことは予想するだろうから、別なことを指摘すると、早稲田の狙い目は、帝京の9番。9番にプレッシャーをかけ続ければ、帝京のプレーはもっと遅延され混乱を来すだろう。帝京の5番、6番、10番のマークするのは当然だろう。しかし狙い目はぜったいに9番。