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January 22, 2011

アジアカップ2011準々決勝 日本対カタール 3-2
梅本洋一

[ cinema , sports ]

 このゲームが終わった後、遠藤は、6年前に似てきた、と言っていたそうだ。6年前の中国開催のアジアカップでも確かに薄氷を踏む勝利の連続だった。準々決勝のヨルダン戦では、PK戦で俊輔、アレックスが連続して外し、宮本の機転で反対側のゴールが使用されたこともあった。(懐かしいね!)
 遠藤の言っていることは、ゲームの結果については、近いかも知れないが、ゲーム内容について見ると、今回の方が数段上だ。開幕戦のヨルダン戦は引き分けはしたが、「負ける予感」はなかったし、カタール戦にしても、吉田のレッド後にFKで1点を献上したが、同点、逆転は十分にあるだろうという予感がした。結果論ではない。今日までの4ゲームを見る限り、その程度の「力の差」を感じる。否、「力の差」という表現は当たっていないかも知れない。フットボールの質が日本の方が数段上だと感じる。カタールの監督の策士ブリュノ・メツは、日本を「アジアのバルサ」と言っているが、確かに他のチームは、カウンター狙いの「伝統的な中東」のチームに過ぎない。フィジカルにものを言わせて、長い距離を走り、CFにボールを託して一発勝負以外に、有効な武器がない。中盤の組み立て、そして、崩し、シュートという一連の戦術が見えない。
 もちろん日本も「バルサ」からは程遠いけれども、これまでの他のチームと比べれば、戦術眼も個人技も、頭ひとつ抜けている。W杯後の香川を初めとする若い選手たちが自分たちの技量を発揮すれば、その程度の差がつくということだ。
 だが、問題がないわけではない。一番の問題は、失点の多さ。このレヴェルの相手に、シャットアウト・ゲームができないのは大きな問題。経験豊富な中澤=闘莉王に比べると、今野=吉田はまだまだ見劣りする。そして、中盤のパス回しに速度が感じられない。当然、相手も日本の中盤を消しに来るが、それを上回るパススピードでボールを散らしながらヴァイタル・エリアに侵入したいが、ぜんぜんできていない。長谷部=遠藤と、本田=香川と距離感が今ひとつなのが原因だ。そして、長友は十分に力を見せていると思うが、右サイドバックの人材難で、ウッチーがいないときは、右からのアタックに威力がなくなる。松井大輔の怪我による帰国で、右サイドのコンビネーションが見られなくなった。ザッケローニがこのフォーメーションが維持するなら、右のふたりと左のふたりの間の関係をより緊密にして、サイドからの崩しをより有効に使用する必要がある。バランサーとしての遠藤はポジショニングがいいけれども、(ガットゥーゾのような)ボランチとしての潰し役も欲しい。つまり、もっとポゼッションを上げて、中盤を完全に制圧することができれば、本田=香川ももっと活きる。次戦はおそらく韓国だろうが、アジア最高峰のフットボールを見せて欲しい。