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January 26, 2011

2011アジアカップ準決勝 日本対韓国 2-2(PK3-0)
梅本洋一

[ cinema , sports ]

 今野のブロックがPKに値するかどうか(もちろん後半の岡崎に対するファウルがPKに値するかどうかも含めて)は、主審の問題に帰着するので(より高いレヴェルのレフリングができる審判の養成を希望する以外)書きようがない。だが、前半の日本は、今大会で一番の出来だったことは疑いようがない。パススピード、ボールの回り、ポジショニングもとても良かった。悪かったのは1点しか取れなかったこと。だが、こんなことはフットボールならよくあることだ。(アーセナルなんて、もっと良いフットボールをしていても、点が入らないゲームなんてたくさんある。)
 問題は後半だ。パク・チソンがやや深めに、やや左にポジションを移し、21分にはCFを外してボランチを入れてきた。フォーメーションは4-5-1でも4-1-4-1でも4-3-3でも各種に書きようがあるが、要は、中盤にアンカーが投入され、2列目に4人が並び、日本のサイドに張り出す選手のスペースが詰められてしまったことだ。これで、日本は、トップの前田にもボールが収まらなくなり、長友=香川のコンビでほぼ制圧していた左サイドのスペースが使えなくなり、中央に絞る傾向のある岡崎に内田からのボールが渡らなくなった。パク・チソンを少し動かすことで始められた韓国の戦術の転換は、前半の日本のファンタスティックなフットボールを消すことになった。日本が前半にオーヴァーペースだったことで足が動かなくなったことを差し引いても、また、パク・チソンのポジションを動かしたことで、彼の攻撃力が弱まり、韓国もロングボールしか攻め手がなくなるにしても、ゲームは徹底して膠着状態に持ち込まれた。
 問題は、後半の最初に引き起こされた状況の変化に、日本の選手が対応できなかったことだ。相変わらず日本のミッドフィールドは、狭い範囲に拘り続ける。残念なことに、日本にはセスクもチャビもイニエスタもいない。このようなときには、大きなサイドチェンジを長くて速いパスで行うことが有効なのだが、遠藤も長谷部も「火消し」に追われて、サイドチェンジどころではない。そして、こうした膠着状態を打ち破るには、力強いCFの突進も必要だが、前田は釜本ではない。サックが重い腰を上げたのは42 分。香川を細貝に代えた。ちょっと遅いことを除いて、この交代は正解だが、パク・チソンがポジションを変えたときに、長谷部と遠藤を縦並びにし、長谷部をアンカーにする選択を意志的に行えれば、この膠着状態は回避できたかも知れない。延長に入って岡崎がラッキーなPKをもらいリードするが、終了直前に追いつかれる。ザックとしては伊野波を投入して5バックにして逃げ切るという目論見だったろうが、いたずらにラインが下がってしまい韓国にボールを回されてしまった。このあたりの終わらせ方は、ザックも含めてまだまだナイーヴだ。
 ふたつの「応用問題」の解法がうまく行かず、PK戦で勝ったから結果オーライだが、大人のチームは、勝ちきる勝負強さが欲しい。2番目の問題の解法は5バックではなく、内田と伊野波の交代でよかったろう。本田拓(長谷部の足がつったことで投入)と細貝、遠藤で中盤のスペースを埋め、サイドアタックの必要がなくなったラストに伊野波を入れて、サイドを固める。バックラインに人を増やしても、有効なディフェンスができるとは限らない。遠藤も「5バックにして中盤が空いてしまった」と言っている。