2010-11ヨーロッパ・チャンピオンズリーグ バルセロナ対アーセナル 3-1(4-3) 梅本洋一
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アーセナルは故障のセスクを間に合わせ、ソングとウォルコットを欠いているものの、ほぼ現状のベスト。バルサはピケ、プジョルのCBコンビを欠いている。
このゲームにどう入るのか? これはかなり重要な問題だと思う。1点ビハインドでホームに戻ったバルサ。引き分けか勝ちでベスト8に進むアーセナル。微妙なのは、バルサがロンドンで1点取っていること。だから、現実的にはほぼ互角か。で、どう入る? これといった特別なことは両チームともしていない。「いつも通り」。おそらく、バルサは、これでいい。「いつも通り」。このチームは、誰の目で見ても現在世界最高のチームであり、「いつも通り」とは、世界で最高のアタッキング・フットボールを見せることだから。ロンドンのゲームを落としているとはいえ、見た人なら分かると思うが、内容的には圧倒的にバルサ。アーセナルの勝利は単なる偶然の賜物。だから、アーセナルは、おそらく「いつも通り」では勝てない。カンプノウで「いつも通り」のやり方でバルサに勝てるということは、相対的にアーセナルの力がバルサを圧倒していなければならない。だが、現実は逆だ。
去年インテルを率いたモウリーニョは、こういう場合の鉄則としてkill the game! 自分たちの長所を押さえてでも、相手の長所を消し、たとえ観客にとってゲームがいかに退屈に見えようとも、トータルスコアで勝つ方法を実践に移していった。
だから、ゲーム内容はバルサが圧倒する。スタッツでも見てもポゼッションで68%、55-45でも明瞭な差が見られるのがフットボールのゲームというものだ。アーセナルでボールに触るのはGK、CB、SBまでで、ディアビ、ウィルシャーのふたりが頑張ってなんとか前戦に繋げようとするが、セスクやファン・ペルシにボールが届くことはほとんどない。ほぼハーフコート・ゲーム。バルサ陣にアーセナルのボールが入った瞬間、多くのディフェンダーに取り囲まれ、ボールが再びアーセナル陣に入っていくだけ。もちろん、このままスコアレスで90分推移すれば、それでアーセナルが勝ち上がるわけだが、そんなことはない。前半終了間際にメッシが決め、スコアレスの緊張感は消えてしまった。それでも、この日のアーセナルにはいくらかのツキがあって、ブスケツのOGがあり、一時は1-1。でも直後にファン・ペルシが2枚目のイエローを貰って万事休す。最終的なスコアは3-1。
つまり、「いつも通り」ではバルサの方が強い。こういうゲームにベンゲルはすごく弱いね。先取点を取られるゲームはあっても、ポゼッションではアーセナルという場合なら、「いつも通り」で逆転することはある。でも、どうやってバルサ陣にボールを進めていくのか、という方法論がまったくない。最初から「特別な夜」なんて無理な話だ。