WBA対アーセナル 2-2梅本洋一
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この2週間でカーリングカップ、チャンピオンズリーグ、FAカップという3つのタイトルを一気に失ったアーセナル……。なんだろうね。こんな書き出しは、毎年の恒例になっている感じ。思い出してみれば、アメリカ軍がイラクに侵攻した日の前日には確かヴァレンシアに敗れている。春先になるとアップアップのアーセナル。
始まりは、この週にヨーロッパで行われるどんなゲームでもそうであるように「東北大震災」への1分間の黙祷から。イングランドの小さな街の観客も、ケセンヌマ、ミヤコ、カマイシなどという港町を知っているだろうか?
そしてゲームは? 3連敗、しかも重要な局面での3連敗は、ヴェンゲルが、「これからわれわれは有利だ。なぜなら、他のビッグクラブはまだチャンピオンズリーグが残っているが、われわれはプレミアに集中できるから」と言うのだが、どう考えてもショックは小さくないだろう。モティヴェーションを保つのが難しいだろう。ヴェンゲルの言は、負け惜しみにすぎない。それに、セスク、ジュルー、ファビアンスキー……野戦病院のように怪我人の巣窟だ。GKがアルムニアしかいなくなり、なんと42歳のレーマンを現役復帰させてベンチに入れている。
これでは、ホジソンをリヴァプールから迎えてやる気満々のイングランド・スタイルで攻めてくるWBAに受けに回るのも自然だ。皆、首を振りながらパスの出先を探している。パスを出してもパススピードが遅い。ガンナーズもこれじゃ三流のチームだ。案の定2点を先制される。こんな状況ではプレミアシップを狙うと言っても無理だろう。毎年繰り返される春先の息切れ。このチームには根本的な欠陥があるとしか思えない。結果的にはなんとか粘って2-2のドローで終わったが、快感をまったく欠いたゲームだった。
根本的な欠陥とは、誰の目にも明らかなように、悪いなりに勝ちきることができないことだ。自分たちのスタイルを貫けないとき、まずまちがいなく負けてしまうことだ。たとえばマンUみたいな粘り強さはない。かつて0-3からミランに逆転勝ちしたリヴァプールのようなど根性もない。曰く老練でハートの強いキャプテンがいない。曰くヴェンゲルは育成型でここ一番の勝負に弱い。どれも本当だろう。でも、おそらく一番の問題は、選手にとっても、ぼくらにとっても、そしてヴェンゲルにとっても、アーセナルのフットボールがマンネリズムに陥っていること。別のスタイルを模索する必要がありそうだ。