「なでしこ」W杯優勝!梅本洋一
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「なでしこジャパン」のW杯優勝は誇るべきものであり、佐々木監督も含めて選手たちは持てる力を十分に発揮したと思う。ひさしぶりに午前3時45分からのライヴ中継を見た。結果は周知の通り、2-2(PK3-1)。勝ちは勝ちだ。だが、ゲームを見ていた人なら誰でもが理解できる通り、この勝ちは、いくつものラッキーが重なった結果であって、澤や佐々木監督が言うとおり「サッカーの神様」が微笑んでくれた結果だ。「バルサのようなパス回し」や「なでしこのサッカー」の代名詞だった華麗なパス回しが、決勝戦は影を潜め、ポストやクロスバー、相手のシュートミス等々でやっとPK戦までもつれ込んだ結果だ。コングラチュレーション!と言ってから、このゲームから、このチームや選手の欠点を指摘しておこう。
前半の立ち上がりを見た限りでは、まるでこのゲームは1960年代後半に釜本や杉山を擁した「全日本」が、トットナムやアーセナルと「親善試合」を行った感じにそっくりだった。大柄の選手たちがボールを持って、ぐんぐんゴールに迫り、キーパーのセイヴやミスでようやく攻撃が止まる。シュートが入れば前半で0-3もあり得た。なでしこジャパンはポゼッションからスペースを探っていくやり方だが、そもそもポゼッションできないゲームになると、「とりあえず我慢」しか戦法がなくなる。そんなときには、ボランチからロングフィードでカウンターとか、サイドバックの攻め上がりとかのオプションもない。応用問題を解けないのだ。「我慢」というマキノ雅弘映画の高倉健みたいな、いかにも日本人好みのゲームになり、延長後半の、宮間から澤へのセットピース。歓喜の瞬間! 余りフットボール好きではない人たちにとって、たまらないゲームになった。
だが、ぼくは、なでしこジャパンにもっと強くなって欲しい。こんな薄氷の勝利ではなく、がっぷり四つから勝利して欲しい。そのためにどうすればいいのか? いくつかの技術的な欠点を解消しなくてはならない。身体的な小ささを解消しろとは言わない。ラグビーじゃないわけで、体の小ささはゴール前を除いてそんなに不利ではない。それよりも技術的な欠陥の解消だ。まずトラップ。特に前戦に張るFWは、どんなボールでも足下にしっかり収めるスキルを磨いて欲しい。身体的なハンディを背負ったチームが活路を見出すのはスピード。判断のスピードとパススピード。はやいパスを足下にスッと止めるスキルは必須だ。「なでしこ」でそのスキルを持っているのは、澤と宮間だけ。永里、安藤には、特訓が必要だろう。前戦で数秒間キープできて両サイドに散らせるかどうかに、このチームの命運がかかっている。次にロングフィードの正確さを身に着けること。ここでサイドチェンジ!と思っても、フィードの正確さが足りない。スティーヴン・ジェラードとは言わないが、20メートル程度のフィードならセンチメートル単位で蹴るスキルだ。このふたつのスキルが身につけば、もっとパススピードが上がり、中盤でつまっても展開できるようになる。そして、もうひとつ、判断の速度をあと20%上げること。女子チームとしては、「戦術」を持っている「なでしこ」だが、これらのことを実現すれば真のチャンピオンチームとして、ロンドン五輪も金メダルの可能性が大きい。頑張ってね。