« previous | メイン | next »

August 29, 2011

マンチェスター・ユナイティド対アーセナル 8-2
梅本洋一

[ cinema , sports ]

 対ウディネーゼ戦の勝利の後、マンU戦は引き分け狙いで、とぼくは書いた。ところが上記の結果だ。サミュエル・ベケットの『ゴドーを待ちながら』の冒頭ではないが、Rien à faire! どうしようもない。こうしたゲームは堅く落ち着いて入り、ゲームを「殺す」方向へ進めていくのが鉄則だ。だが、当日の先発メンバーを見ると、誰でもが理解できるそうした方向性は「絵に描いた餅」であることが即座に納得される。まずディフェンスラインではヴェルマーレンが怪我をし、サニャが病気になり、さらにギブスの怪我は長引き、センターにやっと復帰したコシエルニとジュルー、両サイドにジェンキンソンとトラオレを置かざるを得ない。さらに、ソング、フリンポンの出場停止で、プレミア初出場のコクランのワンボランチ、その前にラムジー、ロシツキ、アルシャヴィン、ウォルコットを並べ、ファン・ペルシのワントップ。確かにこの布陣でウディネーゼ戦の後半はそれなりにうまくいったが、ソングとコクランでは経験値がちがう。対するマンUも若いが、ナニ、クレヴァリー、アンデルソン、ヤングの速度のある4人が中盤を構成し、ヴェテランの域に達したルーニーと絶好調のウォルベックの2トップ。コクランひとりではボールの奪取はできないし、ラムジーの「遅さ」もあって、ゲーム開始早々からマンUにボコボコにされている!
 中盤でマンUが自由自在にボールを操れば、アーセナルのディフェンスラインはもうアップアップの状態。我慢して「ゲームを殺す」どころか、前半21分のウォルベックのゴールまで0-0が続いたのもラッキー以外の何ものでもない。代表の合宿の時、ときどき地元の大学チームと練習マッチが組まれ、7-0とか8-0のゲームになるときがあるが、まるでそんな状態のゲームだ。アーセナルは、マンUにとって、スパーリングパートナーでしかない。とても同じリーグのゲームという様相を呈していない。マンUが気持ちよくフットボールをするための「噛ませ犬」がアーセナルだ。宮市までリザーヴリーグで怪我をしていまい、満足なメンバーも組めない。ヴェンゲル治世の15年でもっとも危機的な状況が今だろう。「セスクやナスリの放出でお金はある。まずストライカーを捜している。そして中盤とディフェンスにひとりずつ」とヴェンゲルは言う。今日は29日。マーケットはあと2日しか開いていない。それに、運良くヴェンゲル好みの選手が獲得できたとしても、彼らがチームに馴染むまでにやっぱり時間はかかる。さらに、今日の若いマンUが気持ちよく走り、若者たちが疲れると、後半になってパク・チソンやライアン・ギグスといった「名前を張れる」選手たちが満を持して登場するのを見ていると、3名程度の補強で、このふたつのチームの間に空いた天文学的な差はそう簡単に埋まらないようにも見える。
 しばくの間、並のチームに成り下がったアーセナルは、どんな相手にも敬意をもって戦うしかないだろう。