ラグビーW杯2011──(1) ジャパン対フランス 梅本洋一
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イングランド対アルゼンチンの13-9やスプリングボクス対ウェールズの17-16という非常に僅差のゲームがあった。前者は完全に「力比べ」であり、後者はウェールズがピーキングをこのゲームに持ってきたのに対してスプリングボクスはまだまだ発展途上という感じ。オールブラックスが対トンガ戦の前半に見せたようなパフォーマンスはどのチームも見せてくれない。
そして、JKが勝負を賭けた対フランス戦は、周知の通り、21-47という結果。一時は4点差に追い上げたとはいえ、トライ数2-6を考えれば、順当な力の差と言えるだろう。圧倒的な惨敗ではなく、「順当な点差」ということは、「敗因」を考えることができるということだ。0-60とか15-70ではない。もちろん57分から66分までは、21-25で4点差だったのだから、次にどちらに点が入るかで、結果が違ったとも言えるが、全体を通してみれば、ダブルスコア以上の点差、6トライ取られるという事実は、力の差を明瞭に示しているように見える。ジャパンの上げた2トライのうちひとつはトラン=デュックの足にボールが当たり、跳ね返りがすっぽりアーリッジに収まる幸運なものだっがので、相手を崩した上げたトライは1つだ。
では「敗因」である「力の差」はどこにあるのか? 明らかな優劣はスクラム。表面的に見れば畠山がボコボコにやられた感じだが、セットするのもフランスの方が早く、そして姿勢も低いのを目の当たりにすると、ジャパンのスクラム・コーチがいったい何を指導したのかとも思える。先手必勝で素早くセットし、より低く構えるという準備をしなかったら、イーヴンにも組めないだろう。解説の薫田は、堀江の左肩の下に3番に入られている、と言っていた。すると、全部、畠山に加重が移ってしまうわけだ。後ろの5人が重かったという言葉を読んだが、フランス式のスクラムは戦前から分かっていたのではないか。
次の問題はディフェンスだ。後半開始直後のフランスのアタックをトライラインで2回防いだので、ディフェンスは頑張ったと言う人も多いだろうが、問題は6トライ取られたこと。真剣勝負のテストマッチで6トライ取られれば負ける。勝つためには7トライ取らねばならないからだ。簡単なことだ。どう考えてもフランスから7トライは取れない。そう考えると、ジャパンが取った21点は最高の結果ではないか。アーリッジのキックが全部は言っていればあと5点は上積みできたはずで、全26点。ラッキーなワントライがあったにせよ、アタックは満点だ。拮抗した勝負にもつれ込むためには、何としても相手を3トライ以下に抑えねばならないわけだ。前半ですでに3トライ奪われているのが大いに問題。組織で守るディフェンスはもっと重要だ。
さらにジャパンが後半の一時期拮抗したゲームを展開できたのは、リエヴルモンが、トラン=デュックからスクレラにSOを代え、そのスクレラが怪我をして、さらにパラに代えざるを得なくなったからだ。これはリエヴルモンの大失敗。トイ面のアーリッジにトライを奪われたのは、1本目は偶然で、2本目は、いくつかのミスが重なったからで、決してトラン=デュックのせいではない。ゲームが拮抗してからチキンハートのスクレラを出せば、スクレラにミスが生まれる。案の定、スクレラの怪我の後、強気でなるパラを入れてからフランスはジャパンを突き放す。70分のリオネル・ナレのトライで勝負あった。
それにしてもJKのジャパンはアップセットとは無縁のチームだ。このチームよりも弱いところには勝ち、強いチームには負け、同等の力のチームには勝ったり負けたりする。