ラグビーW杯2011──(4) オールブラックス対フランス 37-17梅本洋一
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プール戦最高の注目。このプールで2位になった方が上に行くと楽などと言われていたが、キックオフからフランスが攻め込む。だが、オールブラックスの整備されたディフェンスとフランスの「ここ一番」の球出しが遅れ得点できない。直後にオールブラックスのカウンターが決まる。20分で19-0。「2位になった方が楽」という気分がフランスに広がり、大差になるかも知れないと思われた。こういうゲームをイーヴンに持って行くメンタリティが発揮されるのは、フランスに限ってめったにないことだ。いつものことだが、トライユのタックルが「お嬢さん」。ナンバー8のピカモールもディフェンスはまだまだ。我慢するゲームを制するには経験値が必要だ。
そして後半。トライユをエマンスに代える。劣勢だった第1列の面子を代える。特にスザルゼウスキをセルヴァットに代えたのが成功。スクラムが安定する。このゲームのSOの先発はパラだった──決して悪くないし、相手がオールブラックスではなければ十分やれただろう──が、この小兵では、オールブラックスの第3列の餌食だ。ようやく60分過ぎにトラン=デュックを入れる。ボールが動き出し、パスが活き始める。実はトラン=デュックをぼくはかなり買っている。ダン・カーターやウィルコとは比較できないけれど、ラインを動かす才能はものすごくあると思う。出来るだけボールを長く持って入れ違いにパスを放るスキルがあって、こんなSOがジャパンにいればすごくいいと思う。ヴェトナム系のイケメンだけど、いつも強気のプレーにも好感が持てる。
でも、彼を投入したのは、ほぼゲームが決まってからだったし、モティヴェーションを入れ直すのは遅すぎる。ピカモールをアリノルドキに代え、3列のディフェンス力が上がり、応用問題が解けるようなる。このゲームに限ってのフランスの問題は両センターだ。左ウィングのクレールは、この大会で絶好調だし、彼にスペースを創るために両センターでラインブレイクが欲しいのだが、まったくそのチャンスがなかった。アウトサイドのルージュリも周知の通りウィング歴が長い。そもそも存在しないスペースを創造して、ウィングを活かすのは不得手だ。マルティは怪我なのだろうか? ハードタックラーで、しかもラインブレイクが出来るセンターがひとりいれば、両ウィング+ルージュリでオールブラックスのラインが破れる可能性もあったろう。つまり、ジョジオン・タイプのセンターがひとり欲しい。
マルク・リエヴルモンのレブルーは、まだまだ未完成だ。彼のチームが、劣勢の時間に我慢する姿を披露でき、ばらけたシークエンスからフレアを見せられるゲームを2回続けられれば、この大会にも脈があるような気がするが……。対トンガ戦が、その1回目になることを期待しよう。