ラグビーW杯2011──(9)クォーターファイナル(2)梅本洋一
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スプリングボクス対ワラビーズ 9-11
ゲームの時間のほとんどをスプリングボクスが支配し、フェーズを重ね、トライを狙っても、最後の最後でワラビーズが受け止めたり、スプリングボクスのエラーが出たりして、トライを取ることができなかったのが敗因。
キックオフ直後からのスプリングボクスのフルアタックを凌ぎ、ようやくめぐってきたワンチャンスをホーウィルがトライ。17分にはオコンナーがPGを放り込み0-8。見た目と得点は逆。その瞬間を除いては、常にスプリングボクスが攻めている。だが、攻めきれない。これまでのゲームを見ていると、ディフェンスのワラビーズというのはイメージになかった。ラックからフェーズを重ねてのアタックというのがワラビーズの代名詞であり、トライネイションズを見ていても、その印象は変わらなかった。
しかし、ワラビーズは、おそらく対アイルランド戦の敗北から多くを学んだのだろう。ペナルティを与えないようなディシプリンを身に着けること。そして、忍耐強くディフェンスをすること。若いワラビーズの選手たちは、プール戦から見ると大人になっている。まずパニックに陥らない。我慢することを覚えたようだ。ウェールズにせよワラビーズにせよ、若いチームはゲームを重ねることで成長しているのが見える。
大昔、日本選手権が大学のチャンピオンと社会人のチャンピオンの間で成人の日に開催されていたときのこと。早稲田と近鉄の顔合わせだった。早稲田には藤原、植山などのスター選手。近鉄には今里や小笠原などの名選手がいた。国立競技場が超満員になったゲームだ。早稲田の藤原は「たとえFWが劣勢でボールが取れなくても、ぼくらはタックルを続けていれば負けることはない」と言っていたのを思い出す。(結局、そのゲームは20点差ぐらいで近鉄が勝ったと思う。)今日のワラビーズは、そんな言葉が当てはまる。我慢していればゲームは僅差になり、そうなればPG1本でも勝てる。そしてゲームは思い通りになった。
オールブラックス対ロス・プーマス 33-10
ロス・プーマスのキャプテンのフェリペ・コンテポミが敗戦のインタヴューで「60分までは理想的なゲーム運びが出来た」と語っていた。彼の言うとおりだ。オールブラックスに何度もラインブレイクを許しても、プーマスはトライを許さない。そして前半の30分過ぎにこのゲームで初めてトライを奪ったのは、プーマスのカベージョ。まるで、さっきのワラビーズ対スプリングボクス戦のようだ。だが、前のゲームと異なるのは、プーマスの方に超ヴェテランが多いということ。ずっとディフェンスばかりしていると、次第に足が止まる。さらに、前回のエルナンデスのようなキッカーが今回のプーマスにはいない。前回大会なら、押し込まれてもエルナンデスのキック一発で楽に敵陣に行けたのだが、今回は自陣に押し込まれたままだ。
そしてオールブラックスはウィプーを先発させ、彼のキックはほとんど2本のポールの間を抜けていく。トライを取れなくても、オールブラックスは負ける気がしなかったろう。案の定、ラスト20分でオールブラックスは2PG、そして2トライを奪い勝負を決めた。もしロス・プーマスが若いチームであり、フィットネスに優れ、ラスト20分でも足が止まらず、我慢強いディフェンスが続けることができ、前回のエルナンデスのようなキッカーがひとりいれば勝負はもつれたかもしれない。
さてセミファイナルはウェールズ対フランス、ワラビーズ対オールブラックスになった。成長著しいウェールズ、そして先の読めないフランス、我慢を覚えたワラビーズ、最後に本命のオールブラックス。