ラグビーW杯2011──(10)セミファイナル(1)梅本洋一
[ sports ]
フランス対ウェールズ 9-8
「負けられない」セミファイナル。連戦の疲労が溜まってくるセミファイナル。こういうゲームはよくある。
まず負けたウェールズについて。17分のキャプテンの一発レッドは、ちょっと可哀相だったが、それでもクォーターファイナルの対アイルランド戦よりは、出来が悪かった。14人になってからは、クラッシュからリサイクルの連続で、細かいパスを連続させて、スペースを見つけていくウェールズのラグビーがまったくできていなかった。フックやスティーヴン・ジョーンズのキックが決まらなかったのが直接の敗因だが、このゲームのフランスなら、一工夫あれば勝てそうな感じだった。14人になって劣勢を強烈に意識したためか、ウェールズの方も、「負けない」ラグビーへ戦術転換してしまったように感じた。レッドカードで「開き直り」、オープンに展開する「セクシー・フットボール」に徹すれば、勝機を見いだせたのではないか。
そして、ファイナルに勝ち残ったフランスについて。このW杯のフランスは、単にラッキーの連続。プール戦で、トンガに負け、2敗しても決勝トーナメントに進むことができた。大一番となったイングランド戦にせよ、ウィルコの絶不調で、優位にゲームを進めることができた。相手が14人になってからエリアマネジメントを中心にゲームを進めるのは、勝利を得るための鉄則だろうが、キックを中心にしっかりとゲームメイクをすることができない。ヤシュヴィリの不調は目を被うばかりだ。ヤシュヴィリからのパスがお辞儀をしていて、余裕のないパラのキックはエリアマネジメントの役割をまったく果たせていない。だから、ゆったりと優位に進められるはずのゲームを接戦にしてしまった。
フレアを封印したことは理解できる。(でも、このW杯でフレンチ・フレアが垣間見られたことがあったろうか?)ウェールズでもっとも重要な選手ふたりが、ひとりは欠場し、他のひとりは退場したのだから、圧倒的に優位なゲームメイクができるはずだ。それができない。リエヴルモンは、もしオールブラックス(否、ワラビーズかもしれないが)に少しでも勝ちたいのなら、ヤシュヴィリ=パラはもう諦めた方がいい。パラを本来のSHに戻し、体調が戻っているのなら、ぜったいにトラン=デュックを使うべきだ。そして、絶好調のヴァンサン・クレールにスペースを与えるために、センター陣の人選を考えた方がいい。フランスが、このまま目を覚まさないのなら、ファイナルはつまらないゲームになるかもしれない。