ラグビーW杯2011──(11)セミファイナル(2)梅本洋一
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オールブラックス対ワラビーズ 20-6
スプリングボクスのように力業だが単発で突破を試みるなら、ワラビーズも「我慢」できたのだが、オールブラックスのように組織的にアタックを組み立てられると「我慢」できない。ウィプーのキックが不調で、この点差に収まったが、誰の目にも明らかなように、オールブラックスの圧勝。もしダン・カーターがいて、SHがウィプーでなければ、もっと圧倒的な点差になったかも知れない。
ワラビーズの敗因は「我慢」できなかったことばかりではない。SHのゲニアは、まずまずだったが、SOのクエイド・クーパーは、このW杯でまったく輝きを見せなかったこともある。プール戦でも、決勝トーナメントに入ってからも、一向に改善の兆しが見えなかった。キックオフをタッチに出すミス、ノックオン、タックルミス……。スタッツを見たわかではないが、彼が、ワラビーズのアタックを演出したことなどまったく記憶にない。ロビー・ディーンズが、クエイド・クーパーと「心中」しようと考えた理由を問いただしてみたい。ディフェンスは、ともあれ、ことアタックに関して10番が動脈硬化を起こしては、ボールがスムーズに運ばれることはない。
対するオールブラックスの勝因。まず心配されたダン・カーターの代役の代役アーロン・クルーデンが合格点以上の活躍をしたこと。少なくとも代役のスレイドよりはずっと良かった。そして忠実なFWとディフェンスにアタックにフルに稼働したバックスリー!特に右ウィングのコーリー・ジェインとFBのイズラエル・ダグの動きは賞賛に値する。つまり、ダン・カーターの怪我で、唯一の弱点と思われたSOが弱点ではなくなり、選抜にいろいろ苦労したバックスリーの人選も決勝トーナメントに入って固定した。開幕戦の対トンガ戦をまだ思い出せるが、その頃のオールブラックスに比べると今の方がずっと強くなっている。換言すれば欠点が消されて、若手が伸びている。盤石だ。
さて、決勝の対フランス戦。どうなるのだろう。これまでの両チームのゲームから普通に考えれば、オールブラックスが30点差を付けての勝利。あるいはそれ以上の点差になるかも知れない。しかし、多くの人たちがすでに語っているように、本当にフランスは分からない。1999年のW杯準決勝では、今回と同じように圧倒的にオールブラックス優位の予想の中で、フランスのSOラメゾンのキックが炸裂し、フランスが快勝したし、前回のクォーターファイナルでも大方の予想を裏切って、たった1度だけラインブレイクしたミシャラクが快走し、ジョジオンのトライで、フランスがオールブラックスを奈落の底に突き落とした。だが、今大会では、そんなことが起きないような気がする。