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October 25, 2011

ラグビーW杯2011──(12) 決勝 オールブラックス対フランス 8-7
梅本洋一

[ sports ]

 大方の予想を裏切ってフランスの「善戦」──「やっぱりフランスは分からない」──。
 キックオフからフェイズを重ねて攻め込むフランス。だが、黒い壁はほとんど崩れない。確かにボールは回すが、スペースを生み出すことができない。オールブラックスに隙がないのはもちろん、その上、グレアム・ヘンリーは、このチームを相当鍛え込んでいる。だが、スペースのない場所の「ドアを開ける」のが「フレンチ・フレア」のはず。ティエリー・デュソトワールのこのチームが、このW杯の間、「フレア」を発揮したことは残念ながら一度もなかった。このフランスは極めて凡庸なチームだった。「フランスを取りもどす」とチーム再建に挑んだマルク・リエヴルモンは、ここまで信じがたい数の選手たちを試し、落ち着いた先はアヴァンチュールから遠い、とても常識的な場所だった。
 新たな才能をさんざん試した挙げ句、結局、ヴェテランに頼るチームに落ち着く。そして、それは、最終的には、一応は多くのフランス人を納得させる結果を得ることに繋がった。特に、デュソトワール、ボネール、アリノルドキの第3列は、オールブラックス自慢の第3列に全く引けを取らないばかりか、彼らを上回るターンオーヴァーを勝ち取った。そしてパペ、ナレの両ロックもほとんど運動量を落とさず、勇猛にボールに向かっていった。スクラムを押されることのなかったフロントローと共に、FW8人は賞賛されて然るべきである。
 ブレイクダウンで健闘し、これだけのボールを獲得したのにも関わらず、ウィプーがPGを外しまくったのに、フランスは勝てなかった。理由はどこにあるのだろうか?
 今、ぼくが賞賛した人々以外に原因がある。パラが、マッコーの膝蹴りでKOされて退場してから、トラン=デュックがSOに入ると、ラインが動き出したのを感じた人も多いだろう。この日は怪我で見せ場を作ることができなかったが、クレールを除くフランスのバックラインで、創造性を感じさせたのは、やはりトラン=デュックひとり。かつてのセラのようなセンターがひとりでもいたら、両ウィングの快走がもっと見られたのではないか。奪った唯一のトライがデュソトワールによるものだったことは、このチームを象徴していないか? ヤシュヴィリのスローテンポではなく、パラの早い捌きから、トラン=デュックが仕掛け、センターがスペースを創ってウィングがトライという場面を見なくなって久しい気がする。
 繰り返すが、ウィプーがこれほどキックを外しても、最終的に勝利をたぐり寄せたオールブラックスは誉められるべきだが、ダグなど若い選手はプレッシャーがかかるとまだ力を発揮できないようだ。