11-12チャンピオンリーグ決勝トーナメント ACミラン対アーセナル 4-0 梅本洋一
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しばらくアーセナルについて書かなかった。ゲームを見なかったわけではない。全ゲームをしっかりフォローしているが、どうもしっくり来ない。プレミアでは勝ったり負けたり。勝負弱いのは今日に始まったことではないが、簡単に敗れる原因になっているディフェンス・ラインの脆さは、ヴェンゲルが監督に就任してから初めてことだろう。なにしろ最初の頃は、フェイマス・バック・フォーが堅守を誇っていたのだから。昨シーズンのディフェンス・ラインも多くの批判に晒されたが、原因はヴェルマーレンの怪我で片付けられていた。だが、今、ヴェルマーレンは復帰し、つい2ゲーム前まではメルテザッカーもどっしり構えていた。
この対ミラン戦、アーセナルはまったく良いところなく完敗だ。今から4シーズン前、やはりサンシーロで同じ顔合わせでの対戦があり、そのときは、アーセナルが0-2で完勝した。当時のミランのミッドフィールドの面子はガットゥーゾ、ピルロ、アンブロジーニ。今と比べても遜色ない。アーセナルは、フラミニ、セスク、フレブ。今はソング、ラムジー、アルテタ。今の問題はこの辺だ。アルテタとラムジーが「球拾い」になって、ボールを散らすわけだが、昔に比べて、ここは決定的に遅い。ラムジーもアルテタも、ボールを預けられるとルックアップしてから、ボールをこねくり回す。かつてのアーセナルなら、「ポケットビリヤード」のようにワンタッチ、ツータッチでボールが回ったが、ルックアップしながらパスコースを探せば、どんなチームのディフェンダーでもきっちりポジショニングするだろう。同じようにポゼッション・フットボールでもバルサのチャビ、イニエスタ、セスク、メッシとはぜんぜんちがう。アーセナルは、ミッドフィールドでボールが遅延し、結局パスコースがないまま、バックパスして組み立て直す。これでは、ロングボールを使ってミッドフィールドをパスし、そのままファン・ペルシにぶつけた方が効果的だろう。
つまり、アーセナルのミッドフィールドは実に凡庸になってしまった。多くの原因はアルテタとラムジー。もちろんどちらの選手も足下がしっかりしていて、ルックアップからパスという基本を押さえているのだが、グングンパスを回しならクリエイティヴな中盤を作っていくには、ルックアップするのではなく、ヴァイタル・エリアに走り込んでくる選手にワンタッチでパスするべきだ。いつだったが、アーセナルのゲームを解説した永井洋一が、アーセナルのアタックが輝くときには、ワンタッチの縦パスがグンと入ると言っていたが、その通りだ。両翼の選手も、ダイアゴナルにヴァイタル・エリアに走り込んでこない限り、アーセナルの停滞は続いていくだろう。
このチームがチャンピオンズリーグのベスト8に進む可能性はもうない。喫緊の目標はプレミアで4位まで入り、来年の出場権を得ること。だが、ステップ・バイ・ステップで階段を上がるよりも、何か劇的な変化がチームに欲しいことは確かだ。