バルサの連敗梅本洋一
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たとえば「Number」誌ならバルサの特集を何度も組んでいる。昨シーズンのチャンピオンズリーグの決勝で、マンUに圧勝し、文字通り「世界最高のフットボール」を実践してきた。セスクの加入によって3-4-3と4-3-3を使い分けながら、今シーズンもフットボールの新たな実験を続けているバルサ。だが、チャンピオンズリーグ準決勝のファーストレグでのチェルシー戦、そしてその終末のエル・クラシコで、バルサが連敗した。もちろん、いつもの通りポゼッションは70%近くを維持しながらの連敗。チェルシー戦の後、ペップは、「フットボールはゴールネットにボールを運ぶゲームであって、ポゼッションを競うゲームではない」と言っていた。チェルシー戦なら、ポストにシュートが複数回阻まれ、「運がない」と言えばそれまでのゲームだったし、ジョン・テリーを中心にしたチェルシーのディフェンダー陣が、昔の守備を思い出したのかもしれない。だが、エル・クラシコでも、敗戦を反復するバルサを見ていると、どうも何かがおかしい。
レアルは、明らかにバルサにボールを持たせていた。昨シーズンのクラシコ4連戦では、ぺぺをトップ下で起用し、前からプレスをかけ続けることで、勝機を得ようとしたモウリーニョだった。だが、強靱なプレスを90分かけ続けられるフィジカルを持っている選手などいない。だから、このゲームでは、中盤からやや後方に4人のラインを2列作り、がっちり守ってカウンターというオーソドックスな作戦。カウンターはベンゼマとCR7に任せて、後は守備。センターサークルから自陣にボールが運ばれると、メッシ、イニエスタ、チャビに群がるようにディフェンス陣が襲いかかる。バルサは、ダニエウ・アウベスとテジョの両翼にボールを集めようとするが、3センターが押さえられると、両翼にボールが回らなくなる。その意味で、ゲディラ、エジル、ディマリア、そしてシャビ・アロンソの4人は、本当によく頑張ったと思う。戦術を単純明快なものに落とし込んだチームは常に強い。
対するバルサは勝利をたぐり寄せるために必要な創造性が欠けていた。中盤でボールを奪って、ベンゼマかCR7という単純な戦術のレアルに対して、バルサの3センターに必要なのは、レアルの単純さを打ち破れる想像力であるはずだが、ミッドウィークにチェルシー戦を闘ったこのチームには、余白が残っていない。いつものプレー以上の何かができないとき、創造性は発揮されない。おそらく創造性を欠いていたのは選手たちばかりではなくペップも同様だった。この布陣で点を取るには、3センターがアタッカーを兼任しなければならない。両翼にボールが回っても、メッシかイニエスタ、あるおはチャビは、ゴール前に飛び込んでシュートを打たないと点が入らない。確かにこのゲームでは、その3人のうち、チャビにシュートチャンスが多かったが、チャビは3人の中ではいちばんゴールマウスから遠い。そして、ポゼッションが7割を超えるのなら、テュアゴとブスケツのふたりをボランチにする必要などない。ブスケツひとりで十分だった。ペップがこの布陣を考えたのはなぜだろう?
必要なのは、メッシの前にいて、両翼からのボールを受けられるアタッカーだ。ビジャが怪我をしているのなら、セスクだろう。だがペップがセスクを起用したのは後半36分。余りに遅い投入だった。