ユーロ2012──(4)セミファナイル スペイン対ポルトガル 0-0(PK4-2)梅本洋一
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ワントップにネグレドを起用したデル・ボスケ。この奇策は功を奏することなくネグレドはピッチを去る。彼が力不足かどうかは問題ではない。問題なのは、彼の力量を確かめる術を与えられないまま彼がピッチを去ったことだ。フォワードにパスが出ないとき、フォワードは空しくピッチに立っているだけだ。そのくらいパウロ・ベントの戦術が効果的だったということだ。アタックは、CR7とアウメイダに任せ、他の8人は、徹底したプレスをかけつづけ、スペインのパスを寸断する。普段なら余裕を扱いているブスケツとシャビ・アロンソまで、ポルトガルの中盤のプレッシャーに苛まれることになった。チャビもボールを失い、シルバはキレがなく、イニエスタは、まあまあの調子は維持しているが、チャビから効果的なパスがあまり来ない。
パウロ・ベントは、スペイン対イタリア戦の教訓をしっかりふまえている。適切なポジショニングでプレスにいけば、スペインの中盤も押さえることができるということだ。プレスをかけられたスペインの中盤は、もう後方にしかパスコースがない。だからスペインはポゼッションしているのだが、流動的な中盤が創造できない。だからまず60分に運動量が少なかったシルバ、アウト、そしてヘスス・ナバス、イン。これで、右ワイドのアタックが活性化する。ついで64分にネグレド、アウト、セスク、イン。それで中盤の厚みが一気にます。ゼロ・トップというのは、トップに誰もいないということでもあるけれども、中盤がより厚くなるということでもある。中盤がひとり増え、ポルトガルの走力が落ちてきた辺りで、確かにスペインのボールが回り始める。だが、ボールが回り始めることと、得点できることとはイコールではない。このことは、今回のゼロ・トップのスペインが証明している。スペインが大量点を取ったのは、対アイルランド戦で、このときは明瞭なワントップにフェルナンド・トーレスが入っていた。これはデル・ボスケに聞かなければ分からないことだが、なぜネグレドを起用し、トーレスをベンチに置いたのか、ということだ。シルバの調子が悪いなら、そこにセスクでも構わない。セスクなら、ボランチからトップまでどこでもできる。できないのはGKとセンターバックぐらいだろう。
そしてポルトガルは、スペインのアタックをできるだけ遅らせることには成功したが、カシージャスを破ってスペインのゴールネットを揺らす戦術は、CR7の一発に期待するだけ。そしてCR7は枠を外し続けた。だから、PK戦でセスクのボールが吸い込まれるのも、自然な成り行きかも知れない。延長戦になると、どうしてもリスクを冒して、人数をかけてのアタックに両チームとも消極的にある。スペインの判定勝ち。だが、今回のスペインに、新たな発見はないようだ。今シーズンのバルサを見ても、停滞感は否めなかった。つまり、そろそろ、中盤でシュート・パスを交換しながらアタックするスタイルそのものにも、問題が露呈してきている。ごく普通の4-4-2で、スペインは勝てないなのだろう。