2012年度ラグビー関東対抗戦グループ梅本洋一
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筑波が帝京に勝利し、翌日の早明戦に明治が勝ったので、3校優勝。メンツを見れば、この4校が突出しているのは、誰の目にも分かるだろう。そして帝京には自信、筑波には才能、明治には伝統……そして、早稲田には何があるんだろう?
事実、今年の早稲田には、見るべきものがない。部員の才能の面では、決して他の3校に劣らないのにその3校に敗れたことは、ここまでの今年のチーム作りは失敗だったということだ。監督、コーチは猛省して欲しい。各処で読める監督の言葉にまったく説得力がないのは信じがたい。チームの内外に言葉を発し、その言葉でチームを牽引するのが監督の仕事だ。その監督に満足なヴォキャブラリーがない。これは致命的なことだ。4勝3敗という事実がとてもなく重いものであり、敗れた3ゲームともほど同様の展開で敗れている事実を前にすれば、いったいコーチたちは何をしているのだろうと思わざるを得ない。
後半残り10分から逆転負けを連続するのには、明らかな原因がある。点差から考えると、ほぼ安全圏。この「ほぼ」というのがくせ者なのだ。ワントライ、ワンゴール以上の差があるのだが、2トライ、2ゴールの差はない。かつての早稲田ならほぼ守りきれる点差だろう。そこを守れない原因を、ゲームを見ることで確認すると、ゲーム・メイクのナイーヴさが際立ってくる。
たとえば早明戦のラスト5分。平林レフリーの「認定トライ」の判断はともあれ、その後に、ターン・オーヴァーを繰り返しても、一向にボールを出そうとしない。こういう「ゲーム・キリング」は、FWの力量が大きく開いていれば有効だが、認定トライの後、明治のFWがラッシュをかけている状況では、落ち着いてボールを支配できる余裕はない。しかも密集戦ではペナルティが発生する確率が高く、このゲームの平林レフリーの笛は安定していない。だとすれば、風上にいて、SOをロングキッカーに代えてきたのだが、当然、タッチで良い。22メートル・ラインの向こう側に明治を追い出しておけば、トライはないし、最悪DGの3点。それでも最終的に2点差で勝てる。
今年の早稲田の弱点は、誰が見ても、SHと両センターだろう。SHがボールへの寄りが極めて遅く──もっともクルーシャルが瞬間に「不在」!──、両センターがウィングへのパサーでいるだけ。だとしたら後半の入れ替えは正解だ。もっと捌きの早いSHを入れ、10番と12番にキッカーを入れておく。そして風上。ノーサイドまでの押し詰まった時間、このメンツを見れば、そこからのゲーム・メイクは明瞭きわまりない。早い捌きでキッカーにボールを送り、10番と12番はひたすら明治陣に長いキックを入れる、しかも、タッチでいい。明治のFWはポイントまで下がる。ライン・アウトはロックを中心にコンテストする。後は敵陣でディフェンス。我慢する。選手たちは、それを一生懸命実行すればこのゲームを勝利で終えたろう。おそらく早明戦ばかりではなく、筑波戦も帝京戦もこれで勝利をつかめたはず。