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June 3, 2015

カンヌ国際映画祭2015リポート Vol.05 
槻舘南菜子

[ cinema ]

5月16日
朝起きると連日の睡眠不足と栄養不足でなんだか体調が思わしくない。やばい。だが、見逃すわけにはいかないので8時半のプレス上映でナンニ・モレッティ『Mia Madre』からスタート。
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Film Still © SACHER - FANDANGO





彼自身の私的なエピソードを元にした物語で、女性映画監督の制作現場と病床にある母親を見舞うエピソードが並行して語られる。最近のコメディータッチのモレッティというより、どちらかといえば『息子の部屋』に近い。過剰な演出はなく、弱っていく母親の姿とユーモアを交えつつ撮影に際する困難の二つに板ばさみになる姿をあくまで淡々と描いている秀作。

次は監督週間部門で、ミケル・ゴメス『Mille et une nuit』のエピソード1へ。

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「千夜一夜物語」を原作としているのではなく、その語りの構造のみを参照しているそうだ。監督自身も出演し、映画撮影が嫌になり逃げ出してしまうエピソードから幕をあける。複数のエピソードは今のポルトガルを映すドキュメンタリーであると同時に、そのフレームには様々な非現実的なファンタジーの要素がふんだんに散りばめられている。突然画面に重なる音楽にドキュメンタリーとフィクションが次々と切り替わり混在していく様を見ていてクラクラする。続きを見なければと思うとともに、もう一度見ないとこの作品について書くのは難しい。



その後は上映に居合わせたベルフォール映画祭のディレクターであるリリー、トラフィックを中心に日刊紙「ル・モンド」やカイエ・デュ・シネマでも筆をふるう同世代の批評家マチュー・マシュレ、映画批評サイト「Critikats」の編集委員アルノー・ヘ、ロシアの批評家ボリス・ネレポ、パリの劇場「L'Archipel」のプログラマー、ダミアン・トルショと広島国際映画祭の臺丸さん、坂本安美さんとランチ。その後はあまりの疲労からか目の上が腫れはじめたので、薬局で薬を買い、アパートで休憩する。

アメリカ映画は、何処からこんなに湧いてくるのかと思わずにはいられない数のプレスが来るので、トッド・ヘインズ『Carol』のために、大事をとって2時間以上前には到着。先に並んでいたマチュー・マシュレとアルノー・ヘに合流し、今朝のモレッティについて意見交換をし、交代で休憩しながら並んだが......結局青色パスのジャーナリストは数人しか入れなかった。そして、もちろん他の上映も間に合わない。あぁ、寝てればよかった。

1日にさすがに2本だけでは寂しいので、部屋で休んでから、21:30からの「ある視点」部門、Alice Winocour『Maryland』の上映に。

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Film still © Dharamsala/Darius Films



前作『Augustin』が2012年に批評家週間で上映され話題になった女性監督の作品だ。彼女は、レベッカ・ズロトヴスキやセリーヌ・シアマと同様にフランスの国立映画学校フェミスのシナリオコース出身でもある。新作は、命を狙われている家族を守る警備員をめぐる話で、女性監督としては珍しくかなり激しい暴力的なシーンが特徴的ではあるが、やはりフェミスタッチというかお行儀よく、過剰さのない普通によく演出された作品になっていた。

NOBODYの最新号で取材させてもらったL'ACIDのパーティに寄る。実はパリでカンヌ映画祭前に行われたプレス上映に招待してもらい、今年紹介される9作品中5作品をすでに見せてもらった。フランスの若手監督作品はもちろんのこと、今年もスイス、ポルトガル、アメリカ、レバノンなど複数の国籍の作品を紹介し、ドキュメンタリーからラブストーリー、SF作品までかなりヴァリエーションに富んでいる。残りの作品も出来る限り見たいけれどどうなることやら......。
明日、岩井俊二監督の撮影のためにカンヌを発つ部谷京子さんと広島国際映画祭の成功を誓い合い別れた。その後、楽しみにしていたミケル・ゴメスのパーティーに行く元気はなく、そのまま就寝する。