January 23, 2020
『アトミック・ブロンド』のシャーリーズ・セロンを見たときに思ったのは、冷戦時代の二重三重スパイの話で彼女は西側の人間か東側の人間かわからない、というのがストーリーのキモではあるものの、いや単純にいまシャーリーズ・セロンが地理的に西か東かどっち側にいるシーンなのかよくわかんなくね?ってことだった。そんで彼女はその境界線付近をゴロゴロゴロゴロ転がっていたのだった。 『ロング・ショット』のセロンにも...
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January 21, 2020
2019年11月22日、アルノーよりメールが届く「ジャンが今晩、亡くなった。彼は最後の瞬間まで、素晴らしく、快活で、輝いていたよ。ジャンはエピキュリアンなローマの王子様のようだった。彼は人生と映画を結びつけた。そして日本を、日本映画をとても愛していた。彼は僕の師匠だった......。僕は彼の生徒であったこと、彼の友人であったことをこの上なく誇りに持っている」。そしてそれから数日後、雨が降りしきる...
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January 19, 2020
「物語を語るのは、人々だけではない」 山形国際ドキュメンタリー映画祭2019で出会った、『自画像:47KMのスフィンクス』『自画像:47kmの窓』というふたつの作品に心を奪われた。「47KM」と呼ばれる山間の小さな村で、年老いた人々が人生の出来事を語り、その合間に村人たちの生活が差し挟まれていく。ある青年は倒れかけた木に登り、ある少女は村とそこに住む老人たちの絵を描き、子供たちは笑い遊ぶ。同じ村で...
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SEEDAによるアルバム「花と雨」をタイトルに据えた本作は、自身をめぐる過去の境遇や事実を原案にした映画ではあるものの、ひとえにラッパーとしての苦悩や葛藤を赤裸々に綴っているだけのものではない。たしかにそれらは同名の曲「花と雨」の中で刻まれるリリックしかり、早逝した姉との記憶やそこに生じる悔恨の念として受け止めることができるだろう。ただし、そうしたいかなる状況が待ち受けたとして、彼がけっして手放...
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January 10, 2020
先行上映を見に行ったら、上映前に監督からもキャスト一同からもビデオメッセージで「ネタバレしないで」と言われ、はたしてなにを書いたものかと。しかもこれ、なにか一個言っちゃいけないことがあるというより、中盤以降ほとんど全部そうじゃねーか。書きようがない。ということで、未見の方は読まないでください。 映画が始まってすぐに『ヘレディタリー/継承』を思い浮かべてしまったのは、冒頭の地面すれすれにある窓へ...
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January 9, 2020
これもまた、挫折と表裏一体のヒロイズムを謳ってきた監督ジェームズ・マンゴールドらしい映画だ。マンゴールドは自身のフィルモグラフィーのノンジャンルさ多彩さを誇るかもしれず、それはそのとおりだが、評するうえでの怠慢や単純化ではなくやはりそこには作り手としての一貫したもの、翳りがある、反転を重ねた現代的な英雄像を描く意志を感じる。 明らかに各出演作ごとの変身を楽しんでいるクリスチャン・ベイルは本作で...
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January 1, 2020
おたがいの長所を語る一組の夫婦のモノローグと、そのモノローグに呼応するようにして過去を振り返るフラッシュバックが続いたあと、時制は別々のソファに座った夫婦を離婚調停員がなだめている場面へと転換する。妻は夫に視線を合わせることもなく、激昂したのちに席を立ってしまうが、その場面からチャーリー(アダム・ドライバー)とニコール(スカーレット・ヨハンソン)の薬指にはめられた指輪をずっと眺めていた。それはこ...
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