February 27, 2020
魚座の「う」の字も出てこないが、とりあえず魚たちは死んでゆく。してみれば、魚座とは死せる魚たちの星を背負って生まれた子供たちの謂なのか、しかしその魚たちを殺すのもまた子供たち自身なのだ。弱い者はさらに弱い者を殺す。彼らは無垢ではない。ただ、魚を水から掬い上げるように、口に爆竹を詰めるように殺す大人たちから殺されないために必死なだけだ。 まともな大人たちなんて誰ひとりいない。大人たちは、縄跳びを...
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February 20, 2020
生き残った者たちは日常を生きていかなければならない。主人公ハル(モトーラ世理奈)が旅先で出会う人々はそれぞれの苦しみに向き合いながら、一人の少女に寄り添い、食事をともにし、いくつかの言葉を交わす。その言葉と言葉のあいだに深い沈黙が埋め込まれているかのような息づかいのリズムに諏訪敦彦の演出の特徴をみることもできるが、この『風の電話』という一本のフィルムが圧倒的な豊かさでわたしたちに提示するものは、絶...
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February 15, 2020
ヒトラーユーゲントの小さな軍服を身に纏った少年ジョジョ(ローマン・グリフィン・デイビス)は、空想上の友人であるチョビ髭面のアドルフ(タイカ・ワイティティ)から正しい「ヒトラー」のイントネーションを叩き込まれている。過剰なまでの連呼合戦によってアニマル浜口ばりの気合いを注入された彼は、「ハイルヒトラー!ハイルヒトラー!」と快活に喚き散らしつつ、ドイツ版「I Want To Hold Your Ha...
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ロッテルダム国際映画祭は、1966年からオランダのアート系映画館Wolfeのプログラムを手がけ、同映画館で若い世代の作家を紹介していたユベール・バルをディレクターとして、1972年に創設された。1970年代半ば、フィリップ・ガレルは、ロッテルダム国際映画祭でその後「彼の世代」の作家となるシャンタル・アケルマン、ヴェルナー・シュローター(*)に出会った。当時のガレルは、フランスですらほとんどの作...
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休日の午後、スクリーンに映し出された16mmモノクロフィルムで撮影されたナマケモノの姿に、子供たちは「目がぱっちりしててかわいいね」「ツメがかわいいね」などと口々に言っていた。たしかにかわいい。しかし、そんな子供たちも作品に飽きて部屋を出て行った頃、あんなに意外とぱっちりしていたはずのナマケモノの目は、いつのまにか目蓋の下に隠れ、目の周りの黒いクマにすっかり埋もれてしまっている。そしてその頃には...
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February 9, 2020
リチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー)がワトソン・ブライアント(サム・ロックウェル)に出会うあの冒頭のシーンの、妙な気持ち悪さはなんなんだろうか。備品補充係としての勤務の初日から、仕事に必要なペンもテープもしっかりそろっていて、さらにはゴミ箱の中身からワトソンの好物だと推測されたスニッカーズさえしれっとキャビネット内に補充済み、という普通の意味での気持ち悪さもあるのだが、それはまあ...
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February 8, 2020
昨今の国際映画祭では、韓国や中国などのアジア諸国と比較しても日本映画、とりわけ若手監督の存在感は著しく希薄だ。そんな中、ロッテルダム国際映画祭ブライトフューチャー部門に、小田香監督『セノーテ』とともに遠藤麻衣子監督『TOKYO TELEPATH 2020』がノミネートした(本作は第12回恵比寿映像祭にて上映予定)。すでに初長編『KUICHISAN』でイフラヴァ国際ドキュメンタリー映画祭にてグランプ...
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