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April 30, 2020

『アンカット・ダイヤモンド』ベニー・サフディ、ジョシュ・サフディ

[ cinema ]

 ジョシュとベニーのサフディ兄弟は、今や米インディペンデント映画界で最も注目を集める重要な若手映画作家のひとり(ふたり)だ。ユダヤ教徒の家庭に生まれニューヨークで育ったふたりが、同じくユダヤ系のアダム・サンドラーを主演に迎えた新作『アンカット・ダイヤモンド』は、強烈なインパクトと狂気を孕んだ一作で、1/31にNetflixでリリースされてから日本でも評判が評判を呼んでいる。それもそのはず、2010...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:58 PM

April 28, 2020

『コジョーの埋葬』ブリッツ・バザウレ

[ cinema ]

父のコジョーは7年間同じ夢を見た 夢では海が地を飲み込み炎が燃え盛っていた 父は誰にもこの夢のことを話さなかった それがただの夢ではなかったことも それはむしろ記憶のようなもので 忘れられない記憶のようなものだった  若い女性のモノローグによって誘われるのは、彼女が生まれる前、ある辛い出来事を経験し心に傷を負った父が引っ越して来た、水だけに囲まれた遠い村だ。彼は、水だけが過去を浄化できると信じ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:10 AM

April 26, 2020

『The Green Fog』ガイ・マディン、エヴァン・ジョンソン、ガレン・ジョンソン

[ cinema ]

 「映画のはじめのほうで、ジェームズ ・スチュアートがマデリンのあとをつけて墓地にやってきたとき、彼女をとらえたショットはすべてフォッグ(霧)フィルターをかけて撮影し、ぼんやりと夢のような、謎めいたムードをだすようにした。あかるい太陽がかがやいているところに一面に霧がたちこめているような、淡いグリーンの色調だ」(『映画術 ヒッチコック/トリュフォー』)。ヒッチコックのこのような発言を見るなら、『め...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:49 PM

April 24, 2020

『ルディ・レイ・ムーア』クレイグ・ブリュワー

[ cinema ]

 かなりの評判をこの数ヶ月間聞いてきた『ルディ・レイ・ムーア』をやっと見た。ご多分にもれず号泣。  実在のコメディアン・映画プロデューサーの伝記映画なのはなんとなく知っていたから、もう60歳に手が届こうというエディ・マーフィの起用は、てっきり一瞬の栄華を極めた男のその後の衰退までを描くことを意味しているのかと思っていた。『ハッスル&フロウ』『ブラック・スネーク・モーン』に続くはずの三部作の完結編の...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:49 PM

April 23, 2020

『37セカンズ』HIKARI

[ cinema ]

 スーザン・ソンタグは、『隠喩としての病』の中で病気それ自体よりもそれに付随する隠喩や言葉のあやが一人歩きしているという。彼女がいう病気はとりわけ目に見えないものであるが、障がいもそれに当てはまるのではないだろうか。  まだこのような状況になる前、アップリンクに通い詰めていた時期によく流れていた『37セカンズ』の予告を見てそんなことを考えていた。それだけでなんだか満足していたし、気づけば映画館は閉...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:17 AM

April 15, 2020

第一回「映画までの距離」下高井戸シネマ木下陽香代表に話を聞く

[ 連載 ]

 たった一月前のことでさえも、なんだか記憶が曖昧になっている。あのころはいったいどんなことを考えていたのか、どんな立場をとっていたのか、あのときとなにが変わったのか。日々目まぐるしく変わる情勢(とまったく信用できない情報と)の中で、思い出せなくなったりわからなくなってしまったことがある。  それでもなにか新しい試みを立ち上げたいと思った。それは斬新な提言のためでも、批判の声をまとめあげるためでもな...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:28 PM

April 12, 2020

《キューピッドの石膏像のある静物》ポール・セザンヌ 

[ art ]

 昨年、東京都美術館で開催された「コートールド美術館展」(本展は神戸市立博物館へ巡回する予定だが、4/12現在、開幕は延期されている)にてポール・セザンヌの絵画を10点ほど目にした。なかでも特に見入ってしまったのは《キューピッドの石膏像のある静物》という1895年頃の油彩画である。カンヴァスを縦に二分する画中のキューピッドは、そのモデルとなった石膏像に比べて、脚が細く、顔の割合が小さくなり、プロポ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:00 PM

April 11, 2020

『ザ ・ライダー』クロエ・ジャオ

[ cinema ]

 この映画の主人公ブレイディ・ブラックバーン(ブレイディ・ジャンドロー)が初めて馬に乗り、広野を走り抜ける姿をわれわれが目にする時、すでにこの映画では四十分近くが経過している。確かに白馬が、誰もいない広野を走り抜けるというシーンは美しいし、見ていて心地よい。だが、こうした心地よさにこの映画の本質があるわけではない。  そのシーンの後、ブレイディが馬を調教するシーンがおかれる。それは『ザ・ライダー』...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:17 PM

April 9, 2020

『東京のバスガール』(配信タイトル『若い肌の火照り』)堀禎一

[ cinema ]

 暗い日々が続いていますね、私はネットでピンク映画ばかり見ています。  といっても、そもそもピンク映画に特に関心があったわけでもなく、もっと言うなら苦手だった。が、それでもいくつか観ていくと、ピンク映画という私の概念が揺らいでいくような素晴らしい作品がたくさんあることに気づいたのである。エロがあってもなくても映画は映画であってそれだけでもう最高なのだ!  堀禎一の作品もそんな映画だった。どの作品も...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:31 PM

April 7, 2020

『あとのまつり』瀬田なつき

[ cinema ]

 「忘れねえよ」と呟いたはずの僕らは、それでもいろいろなことを忘れていたのだった。たぶんそれは、災害のせいでも、病のせいでも、ない。  2009年当時のインタビューで瀬田は、当初この作品が「まつりのあと」と名付けられていたのだと語り、でもそれが桑田佳祐の歌と同じタイトルだったから、「まつり」と「あと」を逆転させて「あとのまつり」になったのだと言っている。  もう半年も経てば「まつりのあと」だったは...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:04 AM