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November 28, 2022

FIFAワールドカップ2022 日本対コスタリカ 0−1
梅本健司

[ sports ]

 コスタリカは少しサウジアラビアと似たような状況で、最終ラインを低く設定していないのに、前線から激しくボールを狩りに来るわけでもない、引くのかプレッシャーをかけるのか、中途半端な陣形である。だから、日本が後ろからパスを繋いでゲームを作ることは容易だったし、難しい相手というわけではなかった。ローテーションをして主力を温存したことが槍玉に挙がっているが、このコスタリカ相手ならば、森保が選んだメンバーでも十分だっただろう。だが、知られているように日本は中国のですら、5バックを崩すのに苦労するチームである。とくに練度の低い、ハイラインの5バックなら、裏抜けを狙って駆け引きをすれば、4バックよりも乱れやすく、隙ができる。しかし、サウジアラビアに手こずったアルゼンチン同様に、日本は足元でボールを求める機会が多くなった。どころか、日本の前線の5枚は、まるで自らマークをされに行っているように、相手のバックラインに寄りすぎてしまった。とくにウィングが高い位置を取りすぎて、味方の守備陣との距離が長くなり、逆に相手の守備陣には近くなりすぎていた。サイドに張る選手が取るべき適切な位置とは、相手の最終ラインとその一つ前のラインの中間である。相手からしたらどちらがマークをするべきか迷うからだ。加えて、仮に相手の最終ラインの選手が捕まえに来たら、背後が空くし、前の選手が捕まえに来たら、前方が空き、相手はそのスペースをカバーするために陣形を動かさざるを得ない。日本の攻撃は常に相手がそのままの形で守れるようなものでしかなかったというわけだ。
 4バックであろうが同じことだが、5バックに対してはより左右にボールを振ることが求められる。ロングボールで一気にサイドチェンジをするのではなく、前に書いたように、Uの字に、つまり後ろを経由して振り直す。その方が、リスクが低く、横だけではなく、縦にも相手を揺さぶることができる。前線と最終ラインが遠すぎてはいけない理由がここにもあり、適切な距離を保たなければ、バックパスの選択肢が消え、逆サイドに振り直せなくなる。このU型の振り直しが異常に早いのがスペインなので是非そこに注目して見てほしい。
 日本が今回チャンスを作りきれなかった要因は、いかに点を奪うのかというプランの具体が欠けていたからであり、それは4年前から放置されてきた問題である。何を作ればいいのか教えられず、キッチンに立たされたようなものだ。日本もコスタリカの選手たちも、責任を負えるほどの明確な仕事が与えられていない。ミスが起こらず、11人がコンディションの良い日なんてない。気持ちが入らない日だってあるだろう。だが、このような困難な状況でピッチに立たされた選手たちにではなく、最低限のことも考えてこなかった指揮官にこそ批判が向けられるべきだろう。漠然としたなかで人はそんなに頑張れない。こんなお互いの思考が見えない試合は、プレミアリーグの下位チーム同士であっても多くない。90分がただ長いと感じた、見るに耐えない試合であった。