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June 23, 2022

『花芯の誘い』小沼勝 『色暦女浮世絵師』曽根中生 <後編>

[ cinema ]

 『色暦女浮世絵師』は、絵師の雪英(福島むつお)の妻おせき(小川節子)が、富裕な商人伊勢屋の息子清太郎(前野霜一郎)に辱められ、おせき夫婦はそれを忘れて生きようとするもののその傷は折に触れ夫婦の間に浮上してふたりは苦しむ、浮世絵の版元にもっと露骨で淫猥な絵を、と求められながらそれを果たせず体調を崩してゆく雪英を助けて、おせきが男女交合の体位や構図のアイディアを出し、下絵を描き、色をつけるうちに彼女...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:17 PM

『花芯の誘い』小沼勝 『色暦女浮世絵師』曽根中生 <中編>

[ cinema ]

 2012年に出た小沼勝自伝「わが人生 わが日活ロマンポルノ」の自作回顧のなかで今作を語った部分によれば、小沼監督は現場では新人女優の演出に集中することになるだろう、という意識で、プロデューサー伊地智啓とともに小沢啓一宅を訪問してシナリオ改変の了解をとりつけたという。その改変がどういうものか、どの時点で行われていったのかはわからぬままとりあえず「~わが日活ロマンポルノ」の記述を見ると、もともとの脚...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:13 PM

『花芯の誘い』小沼勝 『色暦女浮世絵師』曽根中生 <前編>

[ cinema ]

 池袋のピンク映画館、シネロマン池袋で小沼勝と曽根中生のデビュー作、『花芯の誘い』と『色暦女浮世絵師』を観たのでそのことを記す。  シネロマン池袋ではいまだに毎週替わり三本立てで番組が組まれている。その番組はだいたいエクセス(新日本映像)+ロマンポルノ、新東宝、オーピー(大蔵映画)という映画会社区分のローテーションが一週間ずつ巡っていく流れ。エクセス+ロマンポルノ週ではエクセス作品2本を一週間やり...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:03 PM

June 21, 2022

『冬薔薇』阪本順治

[ cinema ]

  ©2022「冬薔薇(ふゆそうび)」FILM PARTNERS    船の中心にぽっかり空いた、四角い、巨大な空洞に黒々とした砂利が注ぎ込まれる。砂利は対岸まで運ばれ、クレーン式のバケツによって掻き出される。作業が終わると、船は元の港に舞い戻り、からっぽとなった空洞に再び、大量の砂利が注がれる。  『キネマ旬報』掲載の、短くも充実した監督インタビューによると(註1)、中心に巨大な空洞を持つこの船...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:17 PM

June 16, 2022

『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』サム・ライミ

[ cinema ]

 初めてサム・ライミの映画を見たのは1986年あたり、小学校5年生、11歳ぐらいの頃か。高知市立第四小学校の校門真ん前のおうちのA藤くんとこに数人集まって、A藤くんのお兄ちゃんが持っているもんのすご怖いビデオを観る会、として。特に安藤くんと仲が良かったわけではなかったのにあれは何だったのか。  ......という状況で観た『死霊のはらわた』(81年 日本公開85年)。いや、エグいし、怖いし.......全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:40 AM

June 15, 2022

『夜を走る』佐向大

[ cinema ]

 鉄屑工場に勤める秋本と谷口の生きるその場所の、さらにその外側に、いろいろなことが起きている場所があるように思われる。スマートフォンで見る海の向こうで起きた銃撃事件のニュース、車のラジオから流れるどこかわからない国の天気情報。それらは彼らとは関係のない遠い世界のことのようだ。さらに空間の捉え方においても特徴がある。秋本の姿を矮小化するように現れる巨大な工場、工場の中にある山となった鉄屑、鉄屑を...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:36 AM

June 13, 2022

『日本の痴漢』渡辺護

[ cinema ]

 石井隆監督の死を知りがっくりくる。  訃報を知る少し前にも原作、脚本作である『赤い縄 果てるまで』(監督すずきじゅんいち 脚本石井隆 87年)を見直して感銘を受けたばかりだった。  『赤い縄~』は何度か観てるしDVDも持っている(ピンク四天王直撃世代なので佐野和宏映画の主演女優としての岸加奈子さんへの崇敬やみがたく、その初期代表作をソフト所有する誘惑に抗えなかった)のだが、数日前にシネロマン池袋...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:26 PM

June 7, 2022

『トップガン マーヴェリック』ジョセフ・コシンスキー

[ cinema ]

   映画が生還した。冒頭、カリフォルニアの砂漠に赴任しているマーヴェリック(トム・クルーズ)は、マッハ10を記録するため、超音高速機に乗ってテスト飛行を行う。"グース"と、前作『トップガン』で失った盟友の名前を口にする直前、画面の右下に薄くまたがる右翼とともに、広い、大きな空が写し出される。私たちが経験したことのない速さと高さのなかで、見たことのない色の重なりをそなえた空が、一瞬、画面いっぱい...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:12 AM