March 28, 2023
長さの異なるフィルムの切れ端が編集台の上に並べられる。切れ端にはシーンナンバーの書かれた付箋が貼られ、主人公・サミー(ガブリエル・ラベル)はそれを真剣な眼差しで点検し、慣れた手つきで繋ぎ合わせる。サミーの母・ミッツィ(ミシェル・ウィリアムズ)が繰り返す、「すべての出来事には意味がある(everything happens for a reason)」という言葉は、現実に起こった出来事をフィルム...
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March 27, 2023
見終わった後にしみじみとしてしまった。川瀬陽太演じる伊藤猛と武田暁演じる川島麻由子の再会の場面があまりに感動的だったからだ。伊藤猛は死に別れた妻である麻由子に言う。「ずっと一緒にいられなかった、先に死んじゃってごめんな」と。この「一緒」という言葉が鍵のように思えた。 『天国か、ここ?』は、天国で登場する人物たちの生きていた時の記憶が多く語られる。林由美香(平岡美保)はお爺ちゃんに習ったという将...
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March 26, 2023
少年にとって、映画は両親との思い出と分かちがたく結びついているはずだった。彼を映画館へと誘い、同じスクリーンを見つめていた両親との幸福な一体感とともに、初めて目にした映画の衝撃は描かれるし、少年が自らの手でカメラを回すようになるのも、家族や友人たちとの親密なコミュニティの中においてであった。しかし、フェイブルマンという名を持つ一家はやがて解体へと向かい、彼のもとには映画だけが残される。そのとき彼...
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March 25, 2023
曙光。夜明けに太陽の光が差し込むその一瞬、夜の終わりと朝の始まりが重なる。かつて平安時代の人々は、この光景に見られるような異なる色の布を重ね合わせてその配色を楽しんでいたという。そして現代の日本のファッションブランドmatohu(まとふ)を追ったドキュメンタリーである今作の冒頭では、この「かさね色目」と呼ばれる色づかいから着想を得て生み出されたコレクションのひとつ「かさね」が紹介される。そこで異...
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March 23, 2023
飯塚希(唐田えりか)に朝が来る。少し白味がかっていて冬の冷えた空気を湛えつつも、優しい手触りの画面が広がる。これが本当にむなしくなる朝なのだろうか、と思うくらいだ。しかし、彼女はすぐさま家のカーテンを開けることができない。つっかえたカーテンを引っ張ると、レールの金具が壊れ、カーテンは半開きのまま放置される。自ら朝を迎えるための最も典型的な身振りすらままならないのだ。バイト先のコンビニでは、のっけ...
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劇的な幕切れだった。試合後の大谷翔平のインタビューによると、9回表2死でトラウトとの勝負を迎えることは当初から自身のシナリオに描かれたものだったという。とはいえ、直球の連投から最後に投じたスライダーが捕手のミットに収まり、バットが空を切るまでの数分間は、たとえどのような結末を迎えようとも、まるで二人のためだけに用意されたような時間だったと言ってもいい。思えば限られた状況の中で、自分たちの時間をゲ...
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March 10, 2023
第73回ベルリン国際映画祭が、2月16日から26日まで開催された。公式コンペティション部門のセレクションは華やかさに欠けてはいたものの、受賞結果は、映画産業において危機にある「作家映画」を擁護するものとなった。昨今の映画祭の受賞作品の多くが、女性やマイノリティといった出自や背景に影響を受ける傾向があるのに対し、今年のベルリン映画祭の審査員は作品そのものを判断材料にしていることが明白に見て取れる。...
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