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April 29, 2023

『私、オルガ・ヘプナロヴァー』トマーシュ・バインレプ &ペトル・カズダ

[ cinema ]

 映画中盤、オルガが犯行前夜に声明文を書くシーンが挿入され、ヴォイスオーバーによってその内容が読み上げられる。路面電車を待つ群衆にトラックで突っ込み、結果的に8名を死亡させることになる凄惨な事件を起こした動機は、社会への復讐、さらには自らを痛めつけてきた人々への死刑の宣告であると。具体的には父をはじめとした人々から幾度となく暴行を受けたことやどんな職場でも侮辱を受け、嘲笑されたこと、また私的な問題...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:53 PM

『AIR/エア』ベン・アフレック

[ cinema ]

 この映画の最終盤で、ソニー・ヴァッカロ(マット・デイモン)はマイケル・ジョーダンが表紙を飾るスポーツ・イラストレイテッド誌をレジに出して、顔馴染みの店員にこう聞く。「彼はどうだい?」。対して店員は、いいに決まってる、おれなら彼をドラフトしてたね、「みんな知ってたさ=everybody knew」、と答える。  このひと言が、この映画のほとんどすべてを説明している。直接的には、物語の中盤で「だって...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:35 PM

April 27, 2023

『聖地には蜘蛛が巣を張る』アリ・アッバシ

[ cinema ]

 編み上げた巣に獲物をからめ捕るようにして被害女性を部屋に引きずり込み16人を殺したサイード・ハナイは、その手口から"Spider Killer"と呼ばれたらしい。アリ・アッバシ監督『聖地には蜘蛛が巣を張る』は、2000年から2001年にかけて起きたこの連続殺人事件を主軸にしている。しかしこの正視に耐えない惨事自体のおぞましさには、さほど驚かない。今から130年以上前にイギリスで起きていた娼婦殺害...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:35 AM

April 24, 2023

『上飯田の話』たかはしそうた

[ cinema ]

 冒頭から聴こえてくる電子音につられるまま、上飯田の話たちに耳を傾ける。語弊を承知で申せば、そのサウンドの安っぽさに妙な高揚感さえ覚えてしまうのだが、劇中の人々にとってみれば、そんな軽快なリズムとは裏腹に、単純明快なできごとが繰り広げられるわけでもない。生命保険のセールスマンと乾物屋の店主による一向に噛み合わないやりとり(「いなめない話」)、弟夫婦の結婚式に出席しようとしない兄への説得(「あきらめ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:37 PM