September 27, 2023
シアトルが雨の多い街であることは有名だが、それにしてもここまでボタボタと重たい雨が降り続くとは。そのせいでバーナデット(ケイト・ブランシェット)の家はいたるところで雨漏りしている......、のかと思いきや、よく見れば別にシアトルの雨でなくとも容易く雨漏りしそうなボロボロのこの家は、壁紙が無惨に剥がれ落ちておどろおどろしいシミをつくっていたり、絨毯の下をブラックベリーの蔦が張っていたりもする。後...
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September 20, 2023
『アル中女の肖像』をはじめとしたウルリケ・オッティンガーによるベルリン三部作は、監督が戦禍の暗い傷跡を未だ残す70年代のベルリンの街並みに魅了され、ベルリンを散策することを作品にするというアイデアから生まれたそうだ。彼女(タベア・ブルーメンシャイン)がただ酒を飲み続ける様子が映される本作において、彼女が次第に酩酊し、意識が混濁し、足取りもおぼつかなくなっていくその姿が、荒廃した街の雰囲気と調和し...
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ファーストシーンは、男の緊迫した表情とトーンを抑えた声から始まる。画面奥、窓外のぼやけた灯りによる逆光の中、男は拳銃を片手にブツの取引をめぐって脅し文句を並べる。その直後、照明が明転し切り返しで映された受刑者たち=生徒と教師であるシルヴィ(アヌーク・グランベール)が、男=ミシェル(ロシュディ・ゼム)の演技に対する賛辞のコメントを発する瞬間、それが刑務所内の演劇教室で実演されたダイアローグの練習だ...
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渾身の力を込めて放ったパンチが空を切る。と同時に、雷に撃たれたような衝撃が意識を揺さぶり、目を覚ますと天井が見える。対戦相手を捉えたはずの拳が、意識の外から到来する一撃として自身の身体を貫く。カウンターパンチを受けたボクサーが膝から崩れ落ちる寸前に思い描くのは、そんな出鱈目なイメージかもしれない。 難病を患う初老の元ボクサー・佐藤浩市と理不尽な判定負けで日本タイトルを逃し、闘う気力を失った若き...
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September 19, 2023
波止場の近くの「どこにもつながっていないような」小路、そこにある一軒の家からこの映画は始まるのだが、エスターの父(ラズロ・サボ)が営む仕立て屋の作業場が本当に素晴らしい。幼いエスターを作業台の上に乗せ、型紙を写し取った布を裁断させる。裁断した布を仮縫いしてエスターに着せる。心臓がある側が左なのだと教えられたエスターは、自分の左手首に小さなハートマークを描く。しかし、薄暗くも心地よい空間に思えたそ...
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