October 31, 2023
ジョージアで開催された柔道女子世界選手権。新進気鋭のイラン代表、レイラ(アリエンヌ・マンディ)が突然同国の政府から棄権を命じられる。彼女と代表監督のマルヤム(ザル・アミール)が抵抗すると、当局の容赦ない攻撃が始まる――。『タタミ』は、試合と政治的圧力との二重の戦いの果てに、抑圧的な体制からの解放を希求する女性たちのもう一つの戦いを浮き彫りにする。そのアクチュアルなテーマもさることながら、サスペン...
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本作は1970年代〜80年代にかけてバスク州エレンテリアで、千人以上もの女性の中絶を手助けした女性支援団体から着想を得て製作されており、作品の中でも中絶の権利を訴える団体が描かれ、主人公ベアもこれに参加するようになる。ベアと団体の仲間は、街中にバスを走らせて中絶の権利を訴えるデモを行ったり、望まぬ妊娠をした少女ミレンと一緒に国境を越え、フランスで中絶手術を受けさせることに成功したりする。全編を通...
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October 29, 2023
あらすじを普通に書こうとすることが、こんなに深掘りというか謎解きみたいに見える映画もそうそうないだろうと思うし、そこはこの映画の良さを語るにあたって別にどうでもいいことだとは思うだが、しかし他に書きようもないので仕方なく少し書くことにする。 なんらかの事故あるいは事件によって、生後まもなく育ての親の元に送られそこで成長したヨン(アリオシャ・シュナイダー)は、(実は実の父である)ルシアン(セオ...
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October 27, 2023
フックで吊るされた豚の腹は切りひらかれて、赤黒い内臓が露わになっている。男たちはレーンに吊るされた豚の死体を、淡々とした流れ作業で次々に処理していく。床にひろがる豚の血を水で洗い流していると、主人公のマテオ(ジャンセン・マグプサオ)は、壁の向こうから聞き馴染みのある声を聞く。それは、父の親友であったベルトおじさん(ロニー・ラザロ)の声である。マテオは、ベルトに一ヶ月前から失踪している父の居場所を...
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October 26, 2023
映画監督のトマ(フランツ・ロゴフスキ)は、思い通りに動いてくれない俳優に対していら立ちを隠せない。まるで子供のように気まぐれで自己中心的な人物として画面に姿を現わすこの主人公は、作品のタイトルになっているPassagesが持つさまざまな意味を一身に引き受けながら、文字通り物語を駆け巡っていく。 第一に、この言葉には、通過や通行、短い滞在、さらには移行や変化などの意味がある。まさに物語のはじめか...
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October 25, 2023
「誰も、何も、いかなる物語のテクニックも、フェダイーンがヨルダンのジュラシュとアジュルーン山中で過ごした六ヶ月が、わけても最初の数週間がどのようなものだったかを語ることはないだろう。数々の出来事を報告書にまとめること、そういうことならした人々がある。季節の空気、空の、土の、樹々の色、それも語れぬわけではないだろう。だが、あの軽やかな酩酊、埃の上をゆく足取り、眼の輝き、フェダイーンどうしの間ばかり...
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October 15, 2023
新橋駅そばにあるTCC試写室への道のりはどこか風変わりだ。ビルの入口は手動の片引き戸で、勝手口のようにさりげない。それでいて、下に降りる階段は広く、ちゃんと車椅子用の昇降機がついている。地下に降りると、白くそっけない廊下が思いがけない長さで続いている。まるで狭くて長い地下街を歩いているような気になる。東京の真ん中に、どうしてこんな空間がぽかんと開いているのか。本当にこんなところで映画をかける場所...
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