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June 21, 2024

ユーロ2024──デンマーク対イングランド(1−1)
梅本健司

[ sports ]

 ビルドアップのときに後ろから325をつくるデンマークは、最終ラインが無駄に広がらないのがいい。以前にも書いたが、ショートパスを繋ぐチームにとって重要なのは、サイドで幅を取る選手が相手のウィングを二歩超えたあたりの位置をとり、半身で相手ゴール方向を向いていること。かつその選手にボールが通った際に、しっかりとバックパスのコースが確保されていることだ。ウィングの選手がそのような状態を保つためには、最終ラインをペナルティボックス幅くらいに広げる必要があり、その程度の幅だと大体3人が収まりがいい。ドイツのようにセンターバック2枚、サイドバック2枚の4バックを採用する場合、最終ラインを3枚にするためにはいくつかのポジションチェンジを必要とするのだが、はなから3バックのチームにはその必要がない。もちろん3バックを採用しても、選手たちの判断だけで最終ラインが適切な幅に広がれるわけではないのでヒュルマンド監督の指導あってのものだ。一方のサイドが詰まったらボールを下げ、逆に展開、これを繰り返していき、ボールでU字を描きながら前進していくデンマークは素晴らしい。
 よく見ればデンマークはタレントもいる。最終ラインには技術の高いクリステンセン、アンデルセン。華やかな足元はないが堅実なホイビュアとヒュルマンド。前線には上背があってボールを収められるホイルンド。そして違いをつくれるエリクセン。とはいえドイツのようにひとりで状況を打開できる個の質はない。だからこそ、よりシンプルに攻めるべきなのだが、志の高さからなのか割と細かく崩そうとする。見る側からすればそこもまた魅力的に映るものの、勝つためにはもっと大雑把なクロスでホイルンドを高さを生かすべきだろう。そのほうが危険な場所でボールを奪われるリスクも少ない。
 
 一方今大会随一の戦力を揃えているイングランドは、相変わらず選手のスーパープレー以外見るものがない。