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February 19, 2025

『自由なファンシィ』筒井武文

[ cinema ]

誰かのことを「地に足がついた人」と評するとき、それは大抵誉め言葉として用いられる。同じく足を使った慣用句で「地に足をつける」の対義語となるのは「浮足立つ」だが、地に足がついた人でも浮足立つことはあるわけで、たとえば恋愛が成就して天にも昇る気持ちになれば誰もが浮足立つはずだ。そして、浮足立って、地に足がつかなくなることで味わえる感情や見えてくるものもあるはずで、地に足がついてないこともそう悪いことば...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:00 PM

『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』バーセル・アドラー、ユヴァル・アブラハーム、ハムダーン・バラール、ラヘル・ショール

[ cinema ]

「ガザはアメリカが所有する」  アメリカの大統領に再就任したドナルド・トランプによる上記の発言は記憶に新しい。2023年10月から続くイスラエル軍による虐殺行為で、ガザ地区の死者は4万人を超えているとされている。また、イスラエル軍とハマスとの間で停戦合意がなされているにもかかわらず、イスラエル軍はパレスチナ自治区のヨルダン川西岸で軍事作戦を展開し、入植者と共にパレスチナ人への迫害を続けている。イス...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:38 PM

February 17, 2025

《母との記録「働く手」》小田 香

[ art , cinema ]

 ベランダに小田香の母が佇んでいる。雷鳴が轟く。いや、正確にはこのとき、まだ雷鳴とは了解されない。外は白く飛んでいて、天気がわからないから。なにか戦闘機や爆撃機の音のようにも聞こえる。その音は遠い地で起こる戦争を否応なしに惹起する。微かに聞こえていた機械音が消され、沈黙が訪れると曇天を示すショットが矢継ぎ早に挿入される。ようやく先の音が雷鳴であったことが事後的に了解される。しかし、雷鳴はあっても雷...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:22 PM

February 11, 2025

『冬の庭』松井宏、エレオノール・マムディアン

[ cinema ]

 誰もが小屋を建てる。といってもそこまで大層なものではない。格子状に組んだ細枝を支柱に、手頃なサイズの枝を積み重ねる。近くに生えた木の幹や枝を利用してバランスをとる。あるいは幼い少年がそうするように、一本の枝を屋根に、ひと組みの枝を門に見立てたりと想像力を使って。たいした構造も持たないこの構築物は、時折崩れ落ちたりしながらもその上に積み重ね続けられるので、人が自らのパーソナルスペースを外界から遮断...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:07 PM

February 1, 2025

『ブラックバード、ブラックベリー、私は私。』エレネ・ナヴェリアニ

[ cinema ]

 主人公エテロ(エカ・チャヴレイシュヴィリ)の裸体がたびたびキャメラに映し出される。それは、映画序盤で突発的に関係を持つムルマン(テミコ・チチナゼ)とのセックスの際だったり、シャワーを浴びるシーンだったりするが、キャメラはエテロの肌に寄ることはなく、距離を保って引きの位置から彼女を撮影するので、肌の細部というよりは、その体のラインを目にすることになる。エテロは村の女性たちから「尻がたらいみたい」と...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:19 AM