2.11
ノルディック複合後半クロスカントリー
まず昨日の日記の訂正。
高橋大斗は前半のジャンプで6位。健司は13位だった。陳謝。
昨日の予想が当たる。健司は昨日から順位を2つ上げて、11位
でフィニッシュ。日本選手最高位。まだスプリントと団体戦が残っているが、今日の成績は健司の現在のベスト。ワールドカップの順位
をずっと上回っている成績だ。かつての王者が年齢と共に次第に成績を落とし、自然に消えていく姿。そう言う姿は清々しい。
大斗はずっと順位を下げた。ジャンプで貯金し、クロスカントリーで逃げ切るというパターンはもう通
用しない。ジャンプもクロスカントリーも秀でていなければ勝負にならない。アルベールヴィル時代から複合も進歩しているのだ。
それにしてもアメリカという地にクロスカントリーは似合わない。林を抜け、木の間のコースを辿り、小さな高低差がうねるように続くヨーロッパのコースは、SkyPerfect
TVで見ていても実にフォトジェニックだし、小さな坂の上に固定されたキャメラとマイクには、まだその地点に到達しない男たちの荒い息が聞こえてくる。アメリカという地は大きすぎるためか、この競技の中継にテレビ・クルーが慣れていないためか判断できないが、あまりにロングショットが多すぎるように思う。
ジャンプ・ノーマルヒル
4年前の「フナキ〜」という不抜けた原田の声を覚えている人も多いだろう。
TVは、ナガノの再現だ! 感動だ! と騒ぎ立てるが、今シーズンのワールドカップを見ているのだろうか? 昨年の暮れから今年の初めにかけて行われたヨーロッパ・ジャンプ週間。スヴェン・ハンナバルトが4連勝し、完全優勝した大会だ。4連戦を4連勝したジャンパーはかつて存在しなかった。3連勝なら、71-72年の笠谷幸生──3連勝した後、オリンピックを控えた彼は札幌に戻り、「なんてことをするの?」とホテルのおばさんに言われたという逸話が残っている──と96-97シーズンの船木和喜がいる。船木の4連勝に待ったをかけたのがハンナバルトだった。今シーズンはすべてのジャンパーがハンナバルトに挑み、敗れた。
この4年間でジャンプも大きく変わった。鋭い踏切から、空中姿勢を維持し、そのまま静かに着地する姿こそ、ワールドカップの上位
にいる者に共通してみられる姿勢だ。
「カミソリ、葛西」も「飛形点の船木」も「原田の高さ」も必要ない。日本チームの関係者はスキー板の長さが身長の148%に押さえられたルール変更をチームの不振の原因に上げ、技術なら今でも日本チームがナンバー・ワンというが、本気だろうか。長身のマルティン・シュミットがワールドカップを連勝していた頃なら、それも納得できるが、今シーズン、ゴールドゼッケンを着けて最後に飛ぶアダム・マリッシュ、そして今日のノーマルヒルを制したシモン・アマンの身長を見よ。すでにジャンプもまた長身時代から別
の時代に移っている。 4年前なら今日の原田や船木でもメダルは可能だったろう。しかし、今、メダルに届こうとすれば、単に飛距離がそれぞれ7〜8メートル足りない。これは実力のちがいだ。力を伸ばすためのトレーニングの方法がまちがっているのではないか。典型的な失敗例は、今日、転倒した葛西だ。解説席に座る長野時代のヘッドコーチ小野学も言っていたが、過度の前傾は飛距離を落とし、着地を不安定にするだけだ。そして船木の筋肉マンのような上半身とマリッシュやアマンの痩身を比べるといいだろう。ガッツよりも、身体能力よりも踏切と方向性だ。僕にはバイツ・ヘッドコーチがどうも信じられない。
だが、このノーマルヒル、勝負としてはとても面白かった。マリッシュ、ハンナバルト、アマンが僅差で競ってくれたからだ。そして興味深いのは、3人とも同種のテクニックで飛んでくることだ。F1カーが空力特性の計算からどれも同じような形状になってきている──かつてのティレルなどF1での変なクルマが走っていた──のに似て、伝統的な勘や技術の問題ではなく、ジャンプもまた空間力学の時代に入ってきたのかもしれない。だが3人の選手がそれぞれ力学的に98メートル飛べたとしても、それ以上のレヴェルが勝敗を分けることになる。スポーツの醍醐味は、人知を越えた場所に勝敗が遅延されたときに始まる。
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