息もできない(ヤン・イクチュン) |
クレージー・ハート(スコット・クーパー) |
あの夏の子供たち(ミア・ハンセン=ラブ) |
ナイト&デイ(ジェイムズ・マンゴールド) |
抱擁のかけら(ペドロ・アルモドバル) |
昨年は、日本映画の有料入場者数が全体の6割以上を占めたという。アメリカ以外でこんなに「自国」の映画が見られている国は例外的だろう。いろんなことが内向きになってきている。息苦しい。だから、あえて「日本映画」を一本も入れなかった。
この書物の蓮實重彦の文章は、ほんとうに名人芸の域に達している。事実とフィクションの間を往来しながら、現在と過去を往来しながら、言葉を刻むことの現在を確実に生きている。
10席もないカウンター席で、常に完璧なランチを供してくれる。座るとすぐに出るグリーンサラダ、そして目の前にある野菜のマリネ、しばらくして出てくるその日の料理。タイミングも素晴らしい。惜しむらくはエスプレッソがないこと。
文化村オーチャードホールが大友良英によってまるでライヴハウスのように変貌した。浜田真理子さんの唄う武満徹の歌に、すごく感動した。武満さんもすごいソングライターだったんだ。武満さんのピアノで歌を唄ったことを思い出した。
個性的なプログラムで上映する映画館が次々に閉館し、シネコンばかりになってしまう。映画の上映にも「16号線」的風景が明瞭に見える。そんな中で神保町シアターの健闘はすばらしい。細谷さん、応援してます!
『クリスマス・ストーリー』アルノー・デプレシャン |
『ローラーガールズ・ダイアリー』ドリュー・バリモア |
『ナイト&デイ』ジェイムズ・マンゴールド |
『息もできない』ヤン・イクチュン |
『アウトレイジ』北野武 |
個人的には、『クリスマス・ストーリー』の一人勝ち。これほど豊かな時間を過ごさせてくれる作品は滅多に無い。生涯のベストに入ることと思います。2は、間違いないです。全ての人にお勧めできます。3はオタクなキャメロン・ディアスを最高に可愛く仕立てた、それだけで脱帽。somedayを迎えるまでの(k)nightは不可欠だが、やはりデイに向かう映画は幸福だ。4は可視と不可視の暴力に満ちた画面が常にこちらに緊張を強いる「見辛さ」があるけれど、役者(監督は主演も務める)達が凄く良いし、最悪の事態というのは起こりうるのだという現実世界の謎、理不尽に、真っ正面から向き合った作品。それでも生きていくのだ。5は本当におかしく面白くスカっと笑えた、娯楽作品として。皆自分のことしか考えないし、人はバタバタと死ぬ。笑え、笑うでしょう、これは。役者が楽しそうに演じているので、現場が楽しそうだよな、と思った。
2010年からnobodyに参加させていただきました。初めて関わった号が34号だったことが嬉しいです。
UPLINKさんと共同でシネマリンク、というイベントを始めさせてもらったわけですが、毎回素晴らしい作品とゲストに出会える、いいイベントになっています。特に、『やくたたず』(三宅唱監督)はベストに入れたかったけれど、公開作品ではないので、ということで・・・。はっきり言って、この作品は、事件です!この年最も驚かせていただいた作品。同世代の監督がこんな作品を作ってくれたことが嬉しくてたまらない。
ベスト料理は、中目黒La Luna Rossaの小鳩のロースト。人との出会いのおかげです。
スピッツ『とげまる』 2009年、活動休止中だったイギリスのバンドblurが再集結し、2010年の年明けに彼らのドキュメンタリー映画『No Distance Left To Run』が都内1館のみで上映された。1995年にoasisとの同日発売シングル『カントリー・ハウス』で”不名誉な"全英1位(メンバーが悪夢だと嘆くほどに)を獲得し、「ブリットポップ」の王者になってしまった彼らは、97年にバンド名を冠した「ロック」アルバム『blur』を発表する。ポップとロック、誰かが言い出しただけの枠組みの中にいつの間にか取り込まれ、苛まれていく様は、彼らが優れたバンドであると同時にアイドル(虚像、表象、フィクション)であったことがうかがえる。一方スピッツというバンドの音源を聴く度、いつもポップでありロックである、結局はスピッツであるというアイデンティティをいつも感じる。彼らは、2010年にデビュー20周年を迎えた。
1. | 『ウディ・アレンの夢と犯罪』ウディ・アレン |
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2. | 『ナイト&デイ』ジェームズ・マンゴールド |
3. | 『あの夏の子供たち』ミア・ハンセン=ラブ |
4. | 『マイレージ、マイライフ』ジェイソン・ライトマン |
5. | 『息もできない』ヤン・イクチュン |
『ゴースト・ライター』(ロマン・ポランスキー)、『ホワイト・マテリアル』(クレール・ドゥニ)、『ZERO NOIR』(伊藤丈紘)、『Furusato2009』(富田克也)などなど、数少ない上映機会で見た作品も頭に浮かぶものの、とりあえず一般公開作に限定。金融危機直前のロンドンであんな暗い映画を撮っているウディ・アレンはやっぱすごい。私ごとで恐縮だけれども、田舎から上京後はじめて行った恵比寿ガーデンシネマで見た映画が『さよなら、さよならハリウッド』だったことを、いま思い出した。
酒に弱いが、満員の映画館でビールのPR映画をビール片手に見ることがこんなに楽しいことだったとは知らなかった。太田和彦氏と細谷隆広支配人の乾杯音頭つきで上映。
とにかくチケット代が高かったが、とにかくすごかった。ライヴで聞くと何を歌っているのか全然判らなかったけど。
渋谷シネセゾンに隣接するホールで行われたライヴで、エルメート・パスコアールに初遭遇。74歳になるパスコアールはあまりにも元気だった。
食べログで3.8点という高得点をつねに維持している洋食エリーゼは、何を食べても本当に美味しい。個人的にはメンチとカキフライがのった「メンカキ定食」(1050円)が一番のお気に入り。8つのカキが贅沢に盛られた「カキバター焼定食」(1180円)の美味しさも尋常ではない。2010年7月に新橋店がオープンした。
『あの夏の子供たち』ミア・ハンセン=ラブ |
『ウディ・アレンの夢と犯罪』ウディ・アレン |
『クリスマス・ストーリー』アルノー・デプレシャン |
『バッド・ルーテナント』ヴェルナー・ヘルツォーク |
『ローラーガールズ・ダイアリー』ドリュー・バリモア |
上から4本すべて恵比寿ガーデンシネマで見た作品である事実はまったく偶然ではない。最後の1本はもちろん恵比寿ガーデンシネマで上映されたわけではない。でも自分のなかでは、恵比寿ガーデンシネマで見たような気になっている。
『バッド・ルーテナント』ヴェルナー・ヘルツォーク |
『トイ・ストーリー3』リー・アンクリッチ |
『何も変えてはならない』ペドロ・コスタ |
『クリスマス・ストーリー』アルノー・デプレシャン |
『フィフィ・マルタンガル』ジャック・ロジエ |
公開(上映)順に。昨年は劇場に足を運ぶ機会が極端に少なかったことを反省しつつ、いくつかの豊穣な作品に出会えたことに感謝。そのような出会いを準備してくれたのは、やはり東京日仏学院と下高井戸シネマであった。今後ともお世話になりますよろしくお願いします。
秋山伸+堤あや子によるユニットschtuccoが、東京での活動を終えて(お葬式)、秋山の故郷である新潟に移り住む(お引越)というタイミングで企画された展覧会。会場となった古民家を改築した建物では過去の作品群が展示されたほか、継続して日々デザインワークが繰り広げられた。また会期中の1ヶ月以上に渡って秋山と堤、そしてふたりの生まれたばかりの長男がそこで生活をしている様子も公開された。それは彼らにとって明らかに大きな区切りであったにも関わらず、むしろ淀むことのない日常への信頼を表明することに比重を置いたイベントで、その姿勢に深く感銘を受けた。
実に7年ぶりとなる来日だったそうで、にも関わらず「Jesus, Etc.」では大合唱がわき起こり、ジェフ・トゥイーディーは感動していたように見えた。僕も感動した。「Impossible Germany」でのネルス・クラインのソロ、「Via Chicago」でのグレン・コッチェの爆発ぶりは本当に凄かった。『Heavy Metal Drummer』の演奏に際して、ジェフさんがかつて活動を共にしたジム・オルークへの賛辞を口にすると、会場からは「ユアウェルカム!」と叫ぶ聞き慣れた声が響いた。関係ないけど会場で浦沢直樹を見かけた。
2005年以降に撮影されたという新作約150点が会場の三方の壁に上下2列ずつ隙間なく貼付けられている。タテ位置のみ、額装なし。見渡すといくつか共通する対象は見られる。猫、鳥、信楽焼の狸、常緑性の植物。中平卓馬の眼差しの先にあるもの——陰もなく、くっきりとした輪郭を持った対象——がそこには明瞭に写っている。なぜ、中平はそこを通り過ぎなかったのか。そのことをずっと考えている。関係ないけど会場で飯沢耕太郎を見かけた。
「おおいに悩んだ衣装」だというジーンズにパーカ、コンバースのスニーカーという出で立ちでオーチャードホールのステージに現れた大友良英が最初から異様に楽しそうで、会場の雰囲気も冒頭から和んだものとなったのだが、「どですかでん」と「燃えつきた地図」でいきなり立て続けに泣かされる。その後も飴屋法水のパフォーマンス、田中泯のダンス、熊谷和徳のタップダンスなど入り乱れ、音楽を聴きにきたという気分はあっという間に吹き飛ぶ。その一方で浜田真理子にはひとりで弾き語りをさせるのだから、大友良英は信頼できる音楽家だと思った(もう一方のプログラマーである菊地成孔は浜田真理子とデュエットをするという暴挙に出た)。
とある事情で1年近く休業していた蕎麦屋がついに再開。11月の晴れた土曜日、その再開初日に立ち会うべく(ジャパンカップを諦めて)店へ歩いて向かうと、長蛇の列ができていた。店内、決して広くないうえ、多くの客が蕎麦前を楽しんでいる。こちとら再開を待ち望んでいたので2時間も並びました。待ちくたびれた頃にようやく窓際の席に案内され、しかし酒や肴には目もくれず、もりそばだけもらう。ここの蕎麦の味を表現する言葉を私は持たないので、次の営業日に行ってみてくださいとだけ書いておきます。
『ソルト』フィリップ・ノイス |
『ナイト&デイ』ジェームズ・マンゴールド |
『ゾンビランド』ルービン・フライシャー |
『乱暴と待機』冨永昌敬 |
『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』瀬田なつき |
この5本に共通するのは、そのヒーロー・ヒロインぷりにしびれたということ。
『ソルト』のアンジーの男前っぷりはいうまでもなく、彼女はここで『チェンジリング』のコリンズ夫人の、敵も味方もすべてを拒否するバートルビー的で孤独な戦いをさらに推し進めている。
『ナイト&デイ』のトム・クルーズは現存ハリウッド俳優の中で、最もケイリー・グラント的なヒーローに近い存在だろうが、しかしこの作品の本当のヒーローはキャメロン・ディアスである。謎のスパイにさらわれたか弱い女性が、最終的にスパイをさらってしまう。逆転して繰り返される「With me, without me...」という問いかけの素晴らしさ。
『ゾンビランド』でウディ・ハレルソンのヒーロー振りを久しぶりに見た気がするし、『乱暴と待機』の浅野忠信が服を脱ぎ出す一瞬には、パスカルの賭けのごとく確率論と信念が結びつくのを見る。
最後は『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』の染谷将太の、ハードボイルド探偵とキートン的探偵との見事な融合っぷりに尽きる。
『インビクタス/負けざる者たち』クリント・イーストウッド 早朝の散歩が襲撃されるのか、あるいはスタジアムに飛行機が突っ込むのか。全編に渡って予感が漂う。気持ちよく騙されました |
『ローラーガールズ・ダイアリー』ドリュー・バリモア
とりあえずエレン・ペイジが大好き。コンテスト会場を後にするときだったか、まとめた髪をふりほどきうんざりして立つ姿が去年一番の印象に残る。 |
『ナイト&デイ』ジェームズ・マンゴールド
トム・クルーズとキャメロン・ディアスが、これまで観客がイメージしてきたままに登場し、イメージの融合がはかられること。黄色いドレスに、ショルダーバックとブーツをはいアンバランスナなキャメロンにぐっとくる。 |
『エッセンシャル・キリング』イエジー・スコリモフスキ
前作で音と風だけで表していたヘリコプターが、冒頭から登場し執拗なまで姿を現す。ヘリコプターを使えたことの喜びに溢れているなぁと思う。 |
『世界の最後の日々』ジャン=マリー&アルノー・ラリユー
表れるイメージと実際の行動の圧倒的な乖離。世界が終わろうともセックスにふけるマチュー・アマルリック。心地よいおいてけぼりをくらう。 |
今年夢中で読んだ著者の本を書かれた年代も無視して並べる。3つの〈食〉に関する本と2つの〈都市〉小説。〈食〉の3冊は、実際どうだか知らないけど「旨いものは旨い」と言い切っているからこそ面白い。〈都市〉小説はこれまで手に取らなかったことを本気で後悔した著者の本から。