「槙文彦展」のために代官山へと向かうのだが、こんな日に限って雨が降っている。寒い。天気がよければ自転車で中目黒駅の近くまででて、トールフリーやパーグラムマーケットなんかを買う気もないのに素見したりして鎗ヶ岡の交差点にでるというのも気持ちが好いかもしれないが、しかたなく東横線に乗り代官山駅で降り代官山アドレスを横目に猿楽通りを下り、ヒルサイドテラスへ。F棟にあるヒルサイドフォーラムでは、建築家槙文彦の近作が展示されている。最初の部屋に展示されている「テレビ朝日新本社」では滑らかな曲面を描く壁が既存の日本庭園に向き合わされている。「島根県立歴史民俗博物館」はガラスのエントランスが北側の庭園と南側の前庭との結界になっている。そんなことを考えつつ最後の部屋の「ヒルサイドテラス」の展示(約30年をかけて作られたその時間軸にそって展示されている)を一通り観終わると、道に面したガラスを通して、現在の街が見える。ヒルサイドテラスの前を東端まで歩いて、代官山交番の前で右に折れると、急な下り坂の右側には鬱蒼と木が茂り、左側には空き地というか野原というかといった空間がひろがる。代官山駅から続く風景をヒルサイドテラスが断ち切っているようにも思える。地図上で見ると渋谷区と目黒区とのちょうど境界線上に立つこの建物は、まだ当分「風景の構築」と向き合い続ける。
結城秀勇