オールド・トラッフォードを埋める満員の観客。2003チャンピオンズ・リーグも準決勝を迎えた。結果は4-3でホームのマンUの勝利。もちろんサンチャゴ・ベルナベウで1-3で敗戦しているマンUは、このステージで散った。
レアルの勝因は何か? ホーム&アウェイの2試合を観戦した限り、もちろん今日のゲームでのロナウドのハットトリックもあるだろう。1点目と3点目のシュートは見事の一語につきる。だがファン・ニステルローイのシュートもバーに嫌われたものがあった。だからこの結果は決してフォワードの差ではない。中盤の差だ。特に下がり目の中盤の差だ。まずフォーメーションの解説をしておこう。共に4-5-1。もっと正確に書くと、共に左右のサイドバックを置く4人のディフェンスラインの差はほとんどない。ブラウン、オシェアの2人は、このゲームに限っては、ロベカル、サルガドに劣っていないように見えたし、シルヴェルトル、ファーディナンドのセンターバックは、イエロ、エルゲラのふたりよりも健闘していたように思える。問題はディフェンスラインの前だ。中央にヴェロン、そして左右にバットとキーンを並べたマンUよりも、マクマナマン、グティ、マケレレをほぼ一線に並べ、ルースボールを拾いまくり、大きく展開し、フィーゴ、ジダンに繋いでゆくレアルの展開力がずっと勝っていた。ロナウドへのボールの供給源になるフィーゴ、ジダンへとディアゴナルにボールが繋がっていくレアルに対し、マンUではキーン、バットから有効なボールが前線に供給されることはほとんどなかった。4-3-2-1というフォーメーションのレアルに対して、マンUは、4-1-2-2-1であり、2列目のギグス、スールシャールへとパスが出てくるのはバット、キーンを飛び越してヴェロンからのみだ。スコールズの出場停止が痛い。後ろから2列目の3人が攻守の切り替えのカギになっていたレアル。マンUは素直に4-4-2で、最初からベッカムを入れ、スールシャール、ファン・ニステルローイの2トップにした方が流れがよかったのではないか? フォーメーションについて考えると、レアルのそれは、底があつく、ごく自然に前へとパスが収斂されていく、ピラミッド型であるのに対して、マンUのそれはとらえ所がない。レアルは、ときにフィーゴ、ジダンがロナウドと並び3トップを形成したり、サルガドかロベカルが攻撃参加して常に不定型なアタックを展開していた。ベッカムの2点が入ったのは、すでにこの準々決勝の勝敗の趨勢が決まった後のことだ。レアルは、ロナウドなど主要なメンバーをベンチに下げ、ゲームはエキジビション・マッチに変容していた。ベッカムの登場は歌舞伎の顔見世興行を越えない。
セリエA勢はレアルに勝てるのか? 伝統のカデナチオという時代遅れの戦法しか残されていないように思うが。
(梅本洋一)
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