日本とカメルーンを除く多くの出場国がモティヴェーションの欠如に悩むフットボールのコンフェデレーション・カップよりも、ラグビーの6月のテストマッチ・シリーズは11月のワールドカップを占う重要な意味のあるシリーズだ。イングランドは前述したとおり、オールブラックスを15
対13 で退け、そして今日、ワラビーズを25 対14で退けている。接点の強さとウィルキンソンのキックで勝った対オールブラックス戦に比べて、このワラビーズ戦は、トライを2つ取ったことが重要だ。2本のトライは両センターが記録したもので、その意味でも従来の力ずくのイングランドというイメージを払拭して、イングランドは言葉の正しい意味で強くなっている。FWで圧倒するやり方は同じだが、何度か接点での優位を示した後、かならずウィルキンソンのパスを受けたセンターがワラビーズのディフェンスを抜けているのだ。ウィング勝負でなく、センターで勝負するラグビー。これは監督の意図したものではなく何度かゲームを重ねる内に選手たちの間に芽生えてくる戦術であるようだ。近場で勝負をし、ディフェンス網を集めて置いて、その脇で勝負する。大きくボールを展開するフランスの華麗さはないが、この戦法でアタックされると、何度かディフェンスを繰り返している内に、かならず接点近くのディフェンスが甘くなり、そこでスピードと重量のあるセンターをクラッシュではなく、突破役に使っていくと絶対に抜ける。FWの力がかぎりなくイーヴンに近くても、リサイクルを繰り返す内に生まれる綻びに速度を注入できれば、トライがとれる。「ノートライで勝利した対オールブラックス戦に対して南半球のメディアがこぞって攻撃した」(小林深緑郎)ことに対する解答が、ここにある。8月にマルセイユとロンドンで行われる対フランス戦では、その完成型が見られるかもしれない。
一方のワラビーズは故障者続出でやっとメンバーを組んでいるが、新たな展開が何もない。これでは次回ワールドカップの開催国として決勝に残ることはむずかしいだろう。このイングランドのサブメンバーが来月来日しジャパンと対戦するが、私は、何とか100
点差以内と押さえてくれればと期待しているが……。幸い7月の日本は暑い。
(梅本洋一)
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