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July 16, 2024
新しい元号についてのくだくだしい説明がラジオから流れる。天皇という存在の生き死にに関係なく進められる事務的な改号の空疎さがその声から伝わってくるし、本来より前倒しにされた仮想的な死によるはずのその手続きは、来るべき事態を先取りした機敏な対応というよりも、むしろ愚鈍なほどなにかが決定的に手遅れだという感じがする。その感じは、それを伝えるラジオのかたちが、終わりを告げる平成にも、やってくる令和にもま...
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July 15, 2024
祖母の住むマンションの一室に足を踏み入れる12歳のビー(ケイリー・フレミング)を真正面からとらえていたカメラは、カットが変わると律儀にも彼女の左側に回り込み、その怒り肩でわずかに猫背な、子どもと大人の境目にいる身体を映し出している。彼女の怒り肩に、ある不思議さを伴った親近感を持ってスクリーンを眺めていると、今度はビーの背後にまたぞろ律儀にカメラは回り込んでいる。本作がすでに4本目の長編監督作とな...
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イングランドの守備は歯痒い。ワントップのハリー・ケインはこの試合守備が緩慢で、そのせいで後続の選手たちがどのタイミングでプレスに行くべきか迷っていた。ハイプレスにとって重要なのは、ファーストディフェンダーがプレスの方向性を決めることだ。中央に誘導するのか、サイドに追い込むのか、それならどちらのサイドなのか。最初のプレスの仕方で、後続にメッセージを発する。スペインのワントップ、モラタは今までそんな...
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July 12, 2024
『フェラーリ』鑑賞後におぼえた違和感を率直に記せば、「画面上の人物たちがいったい人間であったのかどうか確信が持てない」、「この映画の世界の人物たちが実在性を持って存在していたのかどうか自信が持てない」というものであった。私が感じたこの違和感は一体どこからきているのだろうか。以下では、この違和感をむしろポジティヴなものとして捉え、本作に対して肯定的な評価を与えたいのだが、その一つの手がかりは、...
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July 11, 2024
怪我したメンフィス・デパイに代わり、同じセンターフォワードではなく、中盤のフェールマンを入れたオランダの采配がまずよかった。前の3人と上がり目のボランチがポジションチェンジを繰り返しながら、ライン間を狙い続ける523のイングランドに対して、オランダはその交代からゾーンではなく、人を捕まえにいく守備の意識が強くなった。ドイツ対スコットランドのときにも書いたように、ゾーン守備の弊害は誰が誰にマーク...
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July 10, 2024
フランスはスペインにリードされると分が悪い。コロ・ムアニ、カンテ、チョアメニで、スペインの心臓ロドリとファビアン・ルイスを抑えるという相手に合わせた守備を用意してきたものの、それも前から奪いにいくものではなく、相手の攻撃を停滞させるためのものである。すなわち相手とイーブンな殴り合いをする限りにおいては有効だが、そもそも自分たちであえて攻撃を停滞させてボールを持ち続けようとするリード後のスペイン...
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July 7, 2024
本作終盤に置かれたインタビューの、白人至上主義カルトのメンバーは「旧約聖書に書かれた"ユダヤ人"の文字を"白人"に置き換えていると考えるとわかりやすい」というフレーズは、おそらくこの作品の制作当時よりも2024年のいま見る我々にこそ、身の毛もよだつような恐怖を与えるし、なんなら「わかりづらい」。イスラエル政府の所業に反対する"ユダヤ人"が"反ユダヤ的"という烙印を押されるこの現在においては。 ...
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スロバキア戦終了間際でのベリンガムのオーバーヘッドも、感動というより、彼らはまだこんな苦しい条件下で戦い続けなくてはならないのかと不憫になってしまった。それほどイングランドは良くなかった。いくら個々の質がずば抜けていようと、考えなしに並べられると何も機能せず、プレミアリーグファンでないと見ていられない90分を過ごすことになる。 しかし、ここにきて不動のサウスゲートがまさかのスイス対策を用意して...
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July 6, 2024
フランスは5試合で3得点に留まっている。それぞれの試合を振り返ればシュート数で相手をいつも上回っているので、必ずしもチャンスをつくれていないわけではないのだが、ただそのチャンスの質が低い。シュート数に対して枠内に飛んだシュート数が異常に少ない、つまりかなり難易度の高い状況でシュートを打たされていることになる。 原因はふたつ。センター・フォワードでオリヴェエ・ジルーをフル出場させられないこと。...
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前半ドイツの問題はスペインの左インサイドハーフ、ファビアン・ルイスを自由にさせてしまうことだった。ワントップのハヴァーツと右ウィングのザネが前に出て、スペインの2センターバックに着く。トップ下ギュンドアンはアンカーのロドリ、左ウィングのムシアラは右サイドバックのカルバハルをマーク。余ったスペインの左サイドバック、ククレジャに対しては右サイドバックのキミッヒが出てくるから、ドイツはかなり前からスペ...
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冒頭、白色の建築物に囲まれた石畳に立ち、カメラに背を向け遠くを見つめている新島小夜子(柴咲コウ)。彼女を見下ろすように構えられていたカメラがクレーンによって徐々に人間のアイ・レベルまで下がってきたとき、フレーム内にピタッと小夜子を捉える。このように『蛇の道』は、滑らかなカメラワークとフレーム内に捉えられた人物の所在を以て始まる。ただしこの物語は、カメラと人物(あるいは事物)とのある一定の距離を保...
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July 5, 2024
血のように真っ赤なネイル、カード台の前で腕組みをして佇む女性、その女性が半裸の状態で寝たきりの老人を介護する。固定のカメラは冒頭からラスベガスで生活するフィルダウス(ティンカ・メンケス)を映し出し、それに続いて、外壁が赤と緑の平家、地面から多方向に伸びる植物、磔にされたキリストを逆さにして運ぶカーニバルの人々といった、彼女の生活を囲う風景が美しい画面構成で捉えられる。映画全体を通して主観を排した...
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July 1, 2024
ただの「肉の指」に過ぎないものを「鉄の爪」だと言い張り、あたかも本当に「鉄の爪」であるかのように振る舞う。それこそが言わば、プロレスの矜持そのものなのかもしれず、だからこそ元祖「アイアンクロー」フリッツ・フォン・エリック(ホルト・マッキャラニー)は、何度も何度も息子たち「フォン・エリック・ファミリー」に「proud」という言葉を投げかけるのだろう。 しかし、兄弟の中で最年長であるケビン(ザック...
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