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May 6, 2021

『ラストアフターヌーン』渡邊琢磨
隈元博樹

 防波堤に浮かぶ小型船の手前に、のどかな二人組の姿が映り込んでいる。全体のトーンから察するに、時刻は午後の昼下がりだろうか。しかし、アンダース・エドストロームが撮影したこのジャケットが、アルバムのサウンドを表象する「ラストアフターヌーン」であることに、いささかのためらいを覚えてしまう。それは収録されている「Last Afternoon」を聴いたからであり、さらにはリリースに合わせて渡邊琢磨が制作し...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:22 PM

June 1, 2019

『ECTO』渡邊琢磨
隈元博樹

 客席とスクリーンのあいだに現れた13名の弦楽奏者と、彼らを指揮する渡邊琢磨の姿が捉えられたとき、トーキーシステムの確立前に行われていた劇場型の上映形態をふと夢想する。世界初のトーキー映画が1927年公開の『ジャズ・シンガー』とするならば、それ以前に上映されていた映画はサイレントであり、当時の人々はこのような映画体験を求めて劇場へと足を運んでいたのだろうかと。ただし、客席とのあいだから奏でられるト...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:31 PM

May 14, 2011

『HOSO NOVA』細野晴臣
梅本洋一

 この間、ぼくの家の側でタクシーを待っている高橋幸広を見かけた。そうだ、もうすぐ『HOSO NOVA』の発売だ、とそのとき思った。YMOのつながり。そういえば最近、細野さん、ラジオに出まくり。キャンペーンも飄々とこなしている。細野さんらしい。渋谷を通りかかったので、駅前のTSUTAYAで探したら、もう売り切れ。しょうがないので、タワレコへ。もう最後の2枚ぐらいだった。ジャケットのモノクロの写真もい...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:03 PM

May 6, 2011

イタリア映画祭2011レポート 2011年5月3日 
隈元博樹

Il quinto giorno  午後からのロベルタ・トッレ『キスを叶えて』。ここまでタイトルに「キス」がついてしまえばもはやお手上げである。このフィルムは今年のサンダンス映画祭コンペ部門出品作であり、行方不明になった聖母像の頭部をシチリア・リプリーノに住む美容師見習いの少女が自分の見た夢によってその居場所を発見したことに端を発し、その「奇跡」に便乗して彼女の母親が金稼ぎに奮闘するというあらすじ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:34 AM

October 21, 2010

長岡輝子追悼
梅本洋一

 池部良についての文章を書いたとき、『早春』での彼と長岡輝子との会話について書いた。そして、今日、新聞の死亡欄に長岡輝子死去の記事を見つける。享年102歳。老衰によるとあった。  一昨年のことだったか、草思社から出ている『長岡輝子四姉妹──美しい年の重ね方』(鈴木美代子著)という本を読んだ。突然、長岡輝子に感心を持ち始めたわけではない。10年近く前からだろうか、亡くなった安堂信也氏から、長岡輝子さ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:29 AM

June 1, 2010

『_』group_inou
田中竜輔

 タイトルの『_』は正確な表記ではない。ジャケットのデザインを見ればわかるように、その「棒」はどうやら地に突き刺さって斜めに傾いている。さながら「/(スラッシュ)」のようだが、しかしそうではない。これはあくまで『_(アンダーバー)』であるという。『_』とは彼らの名義である「group」と「inou」を繋ぐ、いわば自己言及的な記号である。しかしこの記号がそもそもどのような関係を示すものなのか(たとえ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:27 PM

February 22, 2010

『リミッツ・オブ・コントロール』ジム・ジャームッシュ
結城秀勇

 吉祥寺バウスシアターで行われている「爆音ナイト傑作選2009」にて。  爆音上映ということで当然期待していたのは、BORISのサウンドトラックでもあるのだが、冒頭イザック・ド・バンコレとアレックス・デスカスとジャン=フランソワ・ステヴナンの3人の対話で、予期していなかった音の位相のありように気づく。アレックス・デスカスの言葉を英語に翻訳して反復するステヴナン。そこでセンターから聞こえてくる彼らの...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:57 AM

January 22, 2010

『アワーミュージック』相対性理論+渋谷慶一郎
田中竜輔

 ピアノ、エレクトリック・ギター/ベース、ドラムス、そして様々な電子音。普段はまったく忘れてしまっていることだが、そもそもの音の大きさが異なる楽器たちがごく「自然」にひとつの楽曲を奏でているということは、本当はものすごく「不自然」なことで、音の増幅を制御する技術が存在しなければ、それら楽器の数を量的に調節するか、もしくは物理的に距離を取るしか、本来その音楽を実現する術はないはずだ。遠く離れた場所か...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:01 AM

December 18, 2009

『ビッチマグネット』舞城王太郎
田中竜輔

 かつて芥川賞候補作『好き好き大好き超愛してる』は、その題名だけで選考委員の東京都知事を大いにうんざりさせたそうだが、ところで都知事は何に「うんざり」したのだろう? 『好き好き大好き超愛してる』という奇抜なフレーズの響きにだろうか。 そうかもしれない、だが、たぶんそうではない。おそらく氏が「うんざり」したのはこのフレーズの構造、つまり<「好き」+「好き」+(「大」+「好き」)+(「超」+「愛してる...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:17 PM

December 10, 2009

『パンドラの匣』冨永昌敬
安田和高

1945年~1946年。といえば、体制が大きく変化し、日本社会が少なからず混乱していた時期であろう。ところが『パンドラの匣』は、1945年~1946年にかけての物語でありながら、そのような混乱とはほとんど無縁である。まるで戦禍を逃れるかのように、混乱した社会を避け、結核を患った主人公は山奥の療養所へと“疎開”していく。そこでは戦後のドタバタなど、どこ吹く風。時間はゆったりと流れていく。そう。これは...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:27 PM

October 18, 2009

『RAIN』堂本剛
黒岩幹子

堂本剛という人が作る音楽には、単なるアイドルの余暇活動として切り捨てられないものを感じる。そのナルシスティックな言動やファッション、「自分探し」の一貫として書かれたような歌詞、あるいは「剛紫」(前作のアーティスト名義)といったネーミングセンスなど、凡人の私には受け入れがたい部分を持った人ではあるのだが、彼の音楽には何か考えさせられるものがある。近田春夫は以前、彼が前シングル曲の「空~美しい我の空」...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:36 AM

September 29, 2009

『空気人形』是枝裕和
結城秀勇

「私は空気人形」と彼女は言うけれど、ペ・ドゥナの美しさは存在感の希薄さや空虚感を連想させるようなものではない。それよりはむしろ、ダッチワイフとしての彼女が動き出して初めて触れる、物干し竿から垂れる水滴のような美しさだと思う。表面張力で凝結して、周りの風景をきらきらと反射して、わずかな風にふるふると震える。登校途中の女の子から「いってきまーす」という挨拶を学び、富司純子の「ご苦労様」という挨拶に腰...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:59 PM

August 27, 2009

Aimee Mann JAPAN 2009 @ SHIBUYA-AX
宮一紀

 4年ぶりとなるエイミー・マン単独来日ツアーの東京公演が8月25日に行われた。前回のツアーは恵比寿リキッドでのバンド編成だったそうだが、今回は3人による変則的なアコースティック。ほとんどがスタンディングのフロアで、7,500円というやや強気な価格設定。何となく開始前からイベントのオーガナイズに対して不信感が募る。とはいえ当日はけっこうコアなエイミー・ファンが集まって、イントロでは即座に大きな歓声が...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:02 AM

June 5, 2009

直枝政広ライヴ@爆音映画祭’09
結城秀勇

 爆音映画祭にて6/3、直枝政広セレクションによる『アイム・ノット・ゼア』の上映に先駆けて直枝自身によるワンマンライヴが行われる。彼の著書『宇宙の柳、たましいの下着』の中には、キャプテン・ビーフハート、フランキー・ミラー、アレックス・チルトンなどについて書かれた「あらくれ者にまつわるいろいろ」という章があったが、ギターを引っ下げたったひとりステージ中央に出てきた直枝の姿はそうしたコンテクストでの「...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:41 PM

May 30, 2009

ウィリアム・メレル・ヴォーリズ 恵みの居場所をつくる
梅本洋一

 ウィリアム・メレル・ヴォーリズが日本の建築史に果たした役割は大きい。山の上ホテルや明治学院礼拝堂など見たことも入ったこともある彼の建築がぼくにもずいぶんある。近江八幡と彼との関係は、それなりに知っていたが、メンソレータムの近江兄弟社がヴォーリズと深い関係がある──というか、ヴォーリズ建築事務所がその主体の一部だったこと──は知らなかった。  YMCAや教会建築、そして関西学院や神戸女学院などの学...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:04 AM

May 4, 2009

『FAN』にせんねんもんだい
山崎雄太

 音の断片が新たに重ねられる度に、いままでその音が鳴っていなかったことが不思議になるのだが、その体験が35分間も続く。にせんねんもんだい約1年振りの新譜『FAN』は、表題曲一曲が収録されたものである。CDをかけると、ギター高田さんの短いギターフレーズがひたすら繰り返される。およそ3分間もの間繰り返されるモチーフに変化はなく、金属的なギターの音が響く・・・。「FAN」は、ホントにもうすごいのだけれど...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:00 PM

May 3, 2009

忌野清志郎追悼
山崎雄太

 昨夜、忌野清志郎が死んだ。58歳。  武道館で復活ライブを敢行したのは去年の2月だった。超満員の武道館、観客の平均年齢はいままでに行ったどのライブより高かったが、若いお客さんもちらほら見かけられた。安くはないチケット、「死ぬまでに一度は見たい」と嘯き買って……そういえば武道館にライブに行ったのも初めてだった。お客さんはみなニコニコしながら、しかし時折仔細らしい顔をして連れに耳打ちしたり、気忙しい...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:34 AM

April 8, 2009

『ESCORT』group_inou
鈴木淳哉

group_inouが艶めいている。だけど思い返せば「怪しい(妖しいではない)お色気」とでも言うべき魅力は今作で突然でできたわけではなく、以前からcpのリリックとimaiのトラックの音色の組み合わせによって十全に味わうことができたわけだけれど、このアルバム冒頭の「E・S・C・O・R・T〜」の「T〜」のヌメっとした感じでもってそのなんといいますか、、、ぶるっときました。 この、決して身体に良くはない...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:49 PM

February 23, 2009

『チェンジリング』クリント・イーストウッド
田中竜輔

 ダニー・ボイルの圧勝に終わった第81回アカデミー賞の結果がはたして妥当なものかどうかは、『スラムドッグ$ミリオネア』だけでなく『MILK』や『フロスト×ニクソン』、そしてケイト・ウィンスレットが主演女優賞を獲得した『愛を読むひと』といった作品をまだ目にしていない私には判断できないけれども、アンジェリーナ・ジョリーの生涯最高の配役のひとつに違いないクリスティン・コリンズ婦人ならば、はたしてどの作品...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:19 PM

February 16, 2009

“Let’s Stay Together”Live @ the 51st Grammy Awards
黒岩幹子

 8日に行われたグラミー賞授賞式のライヴ・パフォーマンスを動画サイトであれこれチェックして、T.I.+JAY-Z+リル・ウェイン+カニエ・ウエスト+M.I.Aの競演やらロバート・プラントの後ろで湿った音をかき鳴らすTボーン・バーネットの存在感やらを堪能していると、アル・グリーン先生が何故かジャスティン・ティンバーレークと“Let’s Stay Together”をデュエットしている動画を発見。  ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:03 AM

December 16, 2008

『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』ジョージ・A・ロメロ
結城秀勇

 この映画を見て、巷ではそれなりに評判の高い『クローバーフィールド/HAKAISHA』(マット・リーヴス)を、なぜちっとも面白いと思えないのかがよくわかった。冒頭(というか作品全体の構造)の形式の差異はひとまず脇に置いておくとすると、『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』の序盤におけるカメラを持つ男の視点と、『クローバーフィールド』の終盤までのカメラを持つ男の視線は、確かによく似ていると思う。でもここで...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:24 AM

October 21, 2008

「BRUTUS」2008年 11/1号 山特集──ワンダーフォーゲル主義
梅本洋一

 久しぶりに「ブルータス」を買った。ロゴはいつもと同じだったが、表紙の色調がいつもとまったく異なっていたからだ。おそらく剣岳が描かれていると思われるブルーとグレイとグリーンの版画だ。とても懐かしい気がした。いつものHUGO BOSSだのBurberryだのの広告ページを一挙にめくり目次に目を凝らす。「山特集──ワンダーフォーゲル主義」と題された特集で、半分はジョン・ミューア・トレイルの話、そして後...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:55 AM

October 17, 2008

『SOUNDTRACK FOR D-BROS』阿部海太郎
宮一紀

 阿部海太郎の2枚目のアルバム『SOUNDTRACK FOR D-BROS』がシアタームジカから発売されている。渋谷PARCOなどに直営店を持つシアタープロダクツのショー音楽や、溝口健二の無声映画『東京行進曲』上映の際の伴奏、最近では第9回東京フィルメックス・コンペ部門への出品も決まったばかりの映画『PASSION』の音楽(★1まったく新しく見事な解釈によるガーシュウィン)を担当するなど、実に多岐...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:57 AM

October 12, 2008

『La frontière de l'aube』フィリップ・ガレル
槻舘南菜子

 公開初日にして観客は四人。たぶん暇つぶしの爺さん(わざわざ挨拶までしてきて、「昼間からこんな映画見てるのか、おまえ暇なんだろ?」と言われた)、若者(途中で離脱)、妙齢……ではない女性と、私。  シンプルなオープニングのタイトルを締めくくる「キャロリーヌに捧ぐ」という言葉には、見覚えがある。そう、『白と黒の恋人たち』も同じように・・彼女に捧げられていた。さらに、映画監督であるフランソワと、かつての...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:28 AM

October 8, 2008

パリ・ドアノー/ロベール・ドアノー写真展@日本橋三越ギャラリー
梅本洋一

 ワインやチーズなどを買い求めるおじさんおばさんでごった返すフランス・フェアー開催中の日本橋三越でロベール・ドアノー展を見る。  この著名な写真家について解説する必要などないだろう。アンリ・カルティエ=ブレッソンと並んでパリの特権的な瞬間を写し続けた写真家だ。かなり狭い会場に膨大な写真が展示されている。ここもおじさんおばさんで満杯。いくら伊勢丹が親会社になっても、三越のブランドイメージはそんなに変...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:49 PM

August 1, 2008

『レディ アサシン』オリヴィエ・アサイヤス
結城秀勇

『クリーン』の冒頭を飾る工業地帯の夜景に打ちのめされて以来、アサイヤスの映画を見直してそこに映り込むインダストリアルな美しさを持ったものたちを再発見するたびに、愛としか言いようのない感情に心打たれる。たとえば『感傷的な運命』における、陶器という工業製品がそれを作った人間の手に柔らかに包まれる時。あるいは『夏時間』の、すべての身の回りのものがアノニマスな他と交換可能なものへ取り換わっていく中、主を...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:12 AM

June 27, 2008

にせんねんもんだい in “nhhmbase presents13”@SHIBUYA-O nest 6/21
山崎雄太

 にせんねんもんだいで踊れない(“にせんねんもんだい”は、上手にギターの高田さん、下手にベースの在川さん、真ん中にドラムの姫野さんという、女性だけのスリーピースという編成)。  高田さんの、短いモチーフを慎重に重ねていく姿は、聞こえてくる電気的な音とは裏腹に非常に肉感的な、職人的な「作業」を感じさせる。それは建具師が丁寧に金箔を並べていくような張りつめた「作業」であり、にせんねんもんだいが演奏を始...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:42 PM

April 10, 2008

GAL presents 「PR vol.2」2008.4.6 @代官山UNIT
渡邉進也

 トクマルシューゴ&ザ・マジックバンド、toeといった面々が演奏を終え、フロアを溢れる群衆をかきわけ、group_inouのパフォーマンスを見通すことができる位置を確保した僕に、横からニヤニヤした声で田中君が話しかけるのである。どこどこでのライヴのgroup_inouのパフォーマンスが凄かったとか、今日のcpさんはやたら気合が入ってるだとか、imaiさんの機材がいつもより増えているだとか。CDで聴...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:32 PM

March 25, 2008

『FAN』group_inou
田中竜輔

「うかうかしてらんない おちおち寝てらんない」、group_inouの1stフルアルバムのテーマは幾度も繰り返されるこのフレーズだ。とりあえず焦ってみるということ、彼らの行動規範がそのまま音楽になっている。彼らのライヴを何度目かに目にしたとき、音楽は馴れ合いのための「方法」なんかじゃなく、ときには敵を生み出すような「行動」であるべきなんだと、あまり音楽そのものとは関係ないことを考えた覚えがあった...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:51 AM

February 20, 2008

『都市住宅クロニクルⅠ』『都市住宅クロニクルⅡ』植田実
梅本洋一

 かつて長期間に渡って伝説の雑誌「都市住宅」の編集に携わっていた建築批評家・植田実の多くの文章が2冊のクロニクルにまとめられた。1966年から2006年の間に書かれた彼の文集である。『都市住宅クロニクル』といっても、彼が編集していた「都市住宅」に書かれたものは少ない。彼自身が語る通り、編集している雑誌に自らの文章を添える余裕はなかなかない。だから、この『クロニクル』には、「平凡パンチ」から「マダム...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:48 AM

February 6, 2008

ジム・オルーク アコースティック・ライブ@横浜国立大学 2/2
宮一紀

 かつて『ユリイカ』誌上のインタヴューで「ソロはもうやらない」と語ったジム・オルークだが、どういう風の吹き回しか(後に語ってくれるのだが)、この日はアコースティック・ギターを抱えておよそ一時間半のパフォーマンスを披露してくれた。  オルークは、静寂の中にそっと弦の揺れを響かせると、何度も同じフレーズを反復させながら、彼自身の言葉を借りれば「自問」するように、少しずつ音楽を前進させていく。幾度も重ね...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:42 AM

January 26, 2008

『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』ティム・バートン
梅本洋一

 ティム・バートンがこのブロードウェイ・ミュージカルの傑作に興味を持ったのは、本当に自然なことだと思う。初期の『バットマン・リターンズ』の時代から、彼は地下という空間や、その空間の持つ外界から隔絶されたほの暗い世界に異様なまでの興味を抱いていたからだ。バートンの世界というのは、ファンタジーでもドリームでもなく、そうした「心温まる」ものや「バラ色の未来」のようなものとは正反対の、どうしようもなく救い...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:29 PM

January 13, 2008

ラグビー大学選手権決勝 早稲田対慶應 26-6
梅本洋一

 慶應は早稲田を徹底的に研究してきた。ゴール前のモールに対しては低い姿勢で人数をかけ、ライン攻撃には低いタックルで応戦。そして、早稲田もボールを散らすのではなく、慶應が研究してきたフェーズを正面からついていく。だから、点差は開かない。前半風上の慶應はSOからのキックで早稲田FWを背走させ、エリアマネジメントをしっかり行い、自陣のスクラムとモールを避ける作戦。だが、早稲田は、それを避けずに常に真っ向...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:46 AM

December 26, 2007

『宇宙の柳、たましいの下着』直枝政広
結城秀勇

 この本を手にしてから早一ヶ月、完読してから三週間以上が経とうとしているが、いまだこの本は家の本棚に並ぶことはなく、読みながら行った引っ越しの際に片づけ損ねた本やCDのはいった段ボール箱の上に置いてある。本棚にしまったと思ったらまた引きずり出してしまうので、めんどくさくなってそのままだ。それがこの本に対する不当な処遇ではないのだということを言い訳してみる。  どこかへ出かける準備をするたびについつ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:03 PM

December 4, 2007

『タロットカード殺人事件』ウディ・アレン
結城秀勇

 珍しくスカーレット・ヨハンソンに好感を持った。いつもいつも彼女が演じるセクシーで謎めいた女性にはあまり説得力がないように感じてしょうがない。たとえば、ウディ・アレンとはじめてコンビを組んだ前作『マッチポイント』でもファムファタルめいた女を演じていたけれど、映画の終盤になってわかるのは、彼女がつまらん女だということだった。ところがこの『タロットカード殺人事件』におけるヨハンソンは、はじめっから開け...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:56 PM

November 30, 2007

MICHELIN GUIDE東京 2008
梅本洋一

 すぐ売り切れになった『ミシュラン東京2008』を英語版だけれども、ようやく購入した。内容を一読(一見?)して、とても驚いた。ぼくは、ミシュランのすべてのヴァージョンを見ているわけではないが、とりあえず手元にあるMichelin Franceなどと、この『ミシュラン東京』が大きく異なっているからだ。まずレストラン部門では、『東京』では、掲載されているすべてに☆が付いていることだ。第2にそれぞれのレ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:02 PM

November 15, 2007

下吹越武人 恵比寿の集合住宅
梅本洋一

 日曜日の曇天の下、恵比寿に出かけた。キムカツの前を通り、Osteria La Gemma──もと学芸大学にあったイタリア料理店だ──の前を過ぎ、右に曲がって坂を上がっていくと、メタリックに光っている五角形の9階建で銀色の建物が見えてくる。下吹越武人の恵比寿の集合住宅だ。その6階と7階を見せてくれた。  五角形の中央にエレヴェーターと小さなロビーがあって、五角形のそれぞれの辺に沿って、ワンルームタ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:42 PM

September 20, 2007

『ROCK DREAM』Boris with Merzbow
田中竜輔

 昨年11月、新大久保EARTHDOMで行なわれたBorisとMerzbowの共演がまるまる収録された2枚組ライヴアルバム。偶然その場に居合わせただけとはいえ、こういったメモリアルな作品がリリースされることは単純に嬉しい。しかしそんな個人的な感覚はともあれ、この作品の真価は、ライヴとライヴ・アルバムというものがまったく別の領域に属したものなのだという事実を、改めて認識させてくれるということにこそあ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:35 AM

August 15, 2007

GAL presents PR vol.1@代官山UNIT 8/10
鈴木淳哉

 アクトは出演順に、にせんねんもんだい、口ロロ、サイプレス上野とロベルト吉野、バッファロードーター、DEDEMOUSE、group_inouの6組。  バッファロードーター(以下BD)だけ世代が少し上だが、他の演者はみな私と同年代。と、思われる。いきなり年齢の話というのも野暮だが、バンドとしての演奏力はやはりBDが突出していて、いきなりベースのスラップからずっとタイトなバンド演奏を持続。それが単に...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:12 PM

August 8, 2007

『SOUTH』安田南
梅本洋一

1974年の2月に南青山にあったジャズクラブ、ロブロイでのライブ版の復刻。安田南のこのレコードや続いて出た『Sunny』を愛聴版にしていたぼくは、かなり前からCDリリースを待っていた。大里俊晴から「出たらしいですよ」と聞いてタワレコに走った。  歳をとったせいか70年代のことをとてもよく思い出す。大学に入ってからこのライブが録音されたロブロイ──安倍譲治がやっていたジャズクラブ──や六本木のミ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:25 AM

July 17, 2007

『ザ・フューチャー・イズ・アンリトゥン』V.A.
結城秀勇

 今年9月に公開予定の映画(邦題『LONDON CALLING/ライフ・オブ・ジョー・ストラマー』)のサントラである。『レッツ・ロック・アゲイン』『VIVA JOE STRUMMER』などストラマーの死後、彼についての何本かの映画が公開されている。正直、またか、と思わないでもないが、この映画に少なくともひとつの見るに値する部分があるとすれば、それはジョー・ストラマーの声をもとに彼の人生を再構成して...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:34 PM

June 17, 2007

『6, Rue des Filles du Calvaire,Paris』阿部海太郎
藤原徹平(隈研吾建築都市設計事務所)

 こと対象は建築物に関わらず、何かものを創りだすという作業の課程のふとした瞬間に、深い森の中を手探りでさまよっているような、あるいはどこか狭い閉じられた場所をぐるぐると巡っていくような、もしくは流体の中をふらふらとたゆたっているような、ある種「移動」の感覚を伴う瞬間がしばしばあるように思う。それは、「今」、「ここに」、「無い」、もの生み出す上で身体的にその現実感を獲得するためには大変重要な感覚で、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:04 PM

『sky blue sky』Wilco
鈴木淳哉

 新作のリリースを聞いて嬉しくなるようなバンドが年々少なくなっていく。そんな思いは誰にでも共通していることかもしれないが、私にとってwilcoはそんな数少ないバンドのひとつだ。  このバンドにぞっこん参ったのはジム・オルークによってプロデュースされた前2作を聞いてだった。だからバンド名義のセルフプロデュースである今作を聞いてまず思ったのは、やはり前2作をジム・オルークというフィルター越しに聞いてい...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:45 PM

June 13, 2007

『Denim』竹内まりや
茂木恵介

 人生をデニムのようだと、竹内まりやは喩えている。それがこのアルバムのタイトルであり、アルバムのラストを飾る「人生の扉」においてもその比喩を用いている。確かにデニムは穿きこんでいけば、色褪せ、穿き始めた頃とは違う色合いや風合いを示すようになるが、同時にそれを穿く者の時間も同様に通過したことを忘れてはならない。キューカーの『マイ・フェア・レディ』のイライザとヒギンズ博士の関係を思い出して欲しい。訛り...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:28 PM

June 7, 2007

『監督・ばんざい』北野武
梅本洋一

 創作活動のある時期に自己言及性へと向かう映画作家たちがいる。フェリーニの『81/2』、トリュフォー『アメリカの夜』、ゴダール『パッション』、ヴェンダース『ことの次第』……。ちょっと思い出すだけでも何本も挙がる。  そして北野武も『監督・ばんざい』を撮った。多くのジャンルのジャルゴンを並べては放置する作業、それらは、このフィルムで常に登場する青い衣裳を着た「監督人形」のように、それぞれのジャンルを...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:41 AM

March 13, 2007

『ダウト』ウェイン・ビーチ
須藤健太郎

 なんてやっかいな映画なんだろう。いわゆる「どんでん返しもの」とでも言うのか、オチを知ってしまうと見る楽しみが半減してしまう、しかし、ある程度ストーリーを説明しないことには、この面白さも伝えられない。ネタばれ覚悟で書くしかないのか、それともこのジレンマに悩み続けるべきなのか。「誰も見破れない!」というキャッチ。まるで『ユージュアル・サスペクツ』のそれだが、そうおそらく、二転三転するストーリー展開、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:08 AM

March 5, 2007

『不完全なふたり』諏訪敦彦
梅本洋一

 このフィルムがフランス人の俳優たちとパリで撮影されたためだろうか。普段なら諏訪敦彦のフィルムにほとんど顔を見せない「映画的な記憶」がいろいろな場所に垣間見える。  このフィルムが別離の聞きを迎えた夫婦の短い時間の出来事とその顛末を追うという意味において、まず全体としてこのフィルムが準拠するのは、ロベルト・ロッセリーニの『イタリア旅行』である。リスボンで仕事をする建築家夫婦(ブリュノ・ドデスキーニ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:58 AM

February 25, 2007

『So Lucky』ノエル・アクショテ
茂木恵介

 聴いたことのあるメロディー。当然だ。カヴァーなんだから。聴く度に、それを歌っている歌手が違う。ある時は、むさ苦しい集団が。またある時は、フリフリの衣装を身に纏った悲しき熱帯魚達が。それよりも、乳癌を克服したアブサンの妖精を演じた紫の下着が良く似合う女性の方が有名だろう。そんな彼女の楽曲をギターのみで、シンプルにコードとメロディーを爪弾いているのがノエル・アクショテの新譜だ。時折聴こえる、指が弦を...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:26 PM

February 9, 2007

『エレクション』ジョニー・トー
梅本洋一

 この人のフィルムの評価が異様に低いのはどうしてだろう。まだ封切られて3週間目だというのに、テアトル新宿は、昼間1回しか上映がなく、しかも明日(9日)まで。いわゆる「香港ノワール」ファンしかこのフィルムを見に来る人はいないのだろうか。確かに、終映後、テアトル新宿の地下から1階への階段を上がっていると、隣に老夫婦がいて、ダンナの方が、「何かなんだかぜんぜん分からなかった。こんな映画見せるんじゃない!...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:34 AM

November 23, 2006

Boris with Merzbow Live (11/18、新大久保Earthdom)
田中竜輔

「どでかい音」、それが重要だ。もちろん大きい音だけあればいいというわけではない。だが、「どでかい音」にしか出来ないことがあるということを、それがどれほどに圧倒的な事柄であるということを、知るべきだ。BorisとMerzbowとのコラボレーションによるライヴを見た実直な感想のひとつとして、ただそれだけのことをとりあえず記そうと思う。  乾いたクリーントーンによって奏でられるギターの野太い旋律、それに...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:48 PM

October 31, 2006

『ジャズ・ソングズ』ディック・ミネ
梅本洋一

 なぜか分からぬ──否、本当は、いろいろ理由はあるのだが、それについて書き始めると、どうしようもない長さになる──が、ディック・ミネの「ジャズ」が聴きたくなった。『鴛鴦歌合戦』に出演していたディック・ミネなら知っている人もいるだろう。ほとんどが1930年代に録音された音源で構成されたこのCDを、ようやく通販で手に入れ、さっそく聴いてみる。偶然77歳になる母が家にいたので、一緒に聴いた。リアルタイム...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:56 PM

September 16, 2006

THEATRE MUSICAの「映画館」
結城秀勇

 THEATREPRODUCTSの音楽部門であるTHEATRE MUSICAが行う、無声映画に生演奏をつけるというイヴェント。先日の溝口健二のイヴェントで上映された『東京行進曲』を見逃していたので行ってみる。プログラムは、ニューヨークの地下鉄が開通した7日後に撮影されたという『Interior New York Subway, 14th Street to Times Square』(G.W."B...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:52 PM

February 24, 2006

『マイ・アーキテクト』ナサニエル・カーン
梅本洋一

 ルイス・カーンの私生児として生まれたナサニエルが、父の姿を追うドキュメンタリー。だが、このフィルムはいかにも中途半端なものとして終わっている。一度にふたつのことを実現しようとして、そのどちらにも失敗してしまったからだ。ふたつのこととは、まずルイス・カーンの建築、そしてナサニエル自らの出自。このふたつのことは実のところほとんど関係がない。カーンの建築の凄さと彼が愛した3人の女性の物語には関係がない...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:10 PM

December 16, 2005

さあトリノだ、アキラ!
梅本洋一

 W杯スラローム第2戦。マドンナ・ディ・カンピリオ。久しぶりのナイタースラローム。第1戦で4位に入った佐々木明。スタート順は1本目が14番。トップ10に入れないのは、先シーズンの不調故のことだ。小雪が舞う1本目。悪くない滑りだが、フルアタックではない。ところどころに小さなミスもある。1本目13番。  彼の見せ場はいつも2本目だ。ヴェンゲンで2本目にトップタイムを出し、一気にトップ・スラローマーの仲...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:52 AM

October 3, 2005

『残像』クオン・ヴー
藤井陽子

 気鋭のトランペッター、クオン・ヴーがNYに拠点を移したのは1994年のこと。それ以後ニッティング・ファクトリー周辺のミュージシャンたちとセッションを重ねていくなかで『Bound』『Pure』『Come Play With Me』といった彼のリーダーアルバムが生み出されたが、それをラジオで聞いていたのが、パット・メセニーだったという。パット・メセニーは電話帳を開いてクオン・ヴーの名前を見つけだし、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:40 PM

September 9, 2005

「建築家 清家清 展 《私の家》から50年」
梅本洋一

 丹下健三についての思考がやや結論めいたものに導かれつつあるとき、見たくなるのは清家清だ。モニュメントではなく、普通の風景の小さな革新。ちょうど折良く汐留ミュージアムで「清家清展」が開催中だ。ぼくが初めて清家清という固有名を知ったのは、ネスカフェ・ゴールドブレンドのCMだった。「建築家 清家清──ちがいが分かる男のゴールドブレンド」というのがコピーだった。「ちがいが分かる」シリーズの最初の方だった...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:23 AM

September 2, 2005

トータス Live (@Metamorphose 2005 8/28 修善寺サイクルスポーツセンター) 
田中竜輔

 ヴィヴラフォンとマリンバ、ロックバンドのステージでは滅多にお目にかからない二つの楽器が、静かに、そして力強くメロディを紡ぎ始める。そう、『Crest』だ。何度もCDで聴いていたはずのこの曲が午前零時を少し回った修善寺の山奥に共鳴を始めた瞬間、今までに経験したことがない空気の震えを感じた。この場所にいられることを心から幸せに感じた。この音楽が無限のヴォリュームになって全世界に響き渡ればいい、そんな...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:14 AM

July 25, 2005

『アート・オブ・インプロヴィゼーション〜キース・ジャレット・ザ・ドキュメンタリー』
影山裕樹

 このDVDはキース・ジャレット本人やECMのマンフレート・アイヒャー等のインタヴューを中心にしてマイルス・バンド在籍時のライヴ映像やソロ、スタンダード・トリオ等のコンサートの映像が納められた、現在までのキースの仕事を網羅的に扱ったドキュメンタリーである。昨年も素晴らしい来日コンサートツアーを果たし、今まさに私たちのような若いリスナーにもとても身近な存在であり続けているキースであるが、彼本人の音楽...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:22 PM

June 14, 2005

ブランドン・ロス LIVE
藤井陽子

「人びとが無理やり世界にそぐわせなければならなくなったとき、彼らは今までになかった新しいものが見えなくなっている。そのような場所からわれわれが出て来るとき、それは創造的で、独創的で、奇怪なんだ。でも僕たちはそのとき何かを見つけるチャンスを得ているんだ。何かエキサイティングなもの、何か新しいものをね」──ブランドン・ロス  6月9日、LIQUIDROOMにてブランドン・ロス“コスチューム”バンドの...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:40 PM

April 25, 2005

『フルタイムライフ』柴崎友香
神徳雄介

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新しい春だ。この季節になるといつも不思議に思うことがある。山手線の車内で、昼間のオフィス街で、週末の夜の盛り場で、いろんなところでスーツを着た会社員と思しき人の一群を目にする。その中にまじっている新入社員をどうしてか、容易に見分けることができる。真新しい、着慣れないスーツのせいばかりではない。彼らのまとっている空気が、他の人のそれよりもなんとなくこわばっている。不安や緊張や焦り、そしてそういうこと以上に、新しい毎日の中でできるだけしゃんとして前を見ていようとする気概が...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:00 AM

April 4, 2005

『THE INTERNATIONAL TUSSLER SOCIETY』インターナショナル・タスラー・ソサエティ
月永理絵

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まずインターナショナル・タスラー・ソサエティとは何者か、という説明から始めよう。彼らは1989年に結成されたノルウェーの3人組バンド、モーターサイコのメンバーによるサイド・プロジェクトの名前であり、発表されたアルバムのタイトルでもある。インターナショナル・タスラー・ソサエティの発足のきっかけは、あるアメリカ映画、それもウェスタン映画のサントラ制作をてがけたことによるという。そのときサントラ盤として...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:49 AM

March 18, 2005

『アジア最終予選』大住良之
梅本洋一

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かつて「サッカーマガジン」の編集長を務めたこの著者の書物を本欄でも1冊紹介したことがある。また「日経新聞」のWeb版での大住のコラムも毎回楽しみに講読している。来週の対イラン戦を控えてタイムリーな1冊が出版された。だが、この書物は、今回のアジア予選の展望ではない。ドーハ、ジョホールバルと、アジア予選でもなければ絶対にどこにあるか分からないだろう地名をクライマックスに、93年、97年の代表を追い、そ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:44 AM

March 12, 2005

『フランシス・ザ・ミュート』マーズ・ヴォルタ
鈴木淳哉

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食い詰めた悪党が一発逆転をかけた銀行強盗の後、メキシコへの脱出をはかり、まんまと成功したり仲間割れしたり、といったすべての映画の上映時間を足すと、だいたい私の生きた人生と同じ位の長さになるというほどのことはないだろうが、とにかく、使い古された擦り切れ寸前のドラマではあろう。劇的な人生の話。または…全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:45 AM

March 11, 2005

『フェスティバル・エクスプレス』ボブ・スミ−トン
藤井陽子

3月9日水曜日、渋谷シネセゾンのレイトショーは盛況だった。スクリーンの中でジャニス・ジョプリンが、ザ・バンドが、バディ・ガイが、グレイトフル・デッドが曲をやるたびに、映画館のあちこちから拍手がこぼれてきた。感動的な夜だった。 1970年、当時最高のロック・ミュージシャンたちを乗せた列車がカナダのトロントを出発し、西へ西へと旅をしながら各地でフェスティバルを繰りひろげた。『フェスティバル・エクスプレ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:21 AM

February 21, 2005

アク−スモニウム・サウンド・プロジェクションによるライブ公演
16チャンネル・スピーカー・オーケストラ(2月18日@エスパス・イマージュ)

アク−スマティック音楽がもたらす感覚は、映画の創生期に多くの観客が体験した感覚—海の映像を見た後スクリーンが濡れていないか確認し、迫りくる列車から逃げだそうとした—に近いのかもしれない。 照明が落とされ、聴衆の周りだけでなくその直中にも設置された16のスピーカーから発信されたジョナタン・プランジェによる演奏、F・ベル「Vibration compos_es」は、音がそこに出現する空間と時間の濃度、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:17 PM

November 28, 2004

ラグビー テストマッチ
ウェールズ対ジャパン

パリに住むラグビー好きの友人とメールをときどき交換している。パリでは放映のないウェールズ対ジャパン戦をDVDにして送ろうか、と申し出ると、健康に悪いのでいらないとのこと。スコットランド戦惨敗、ルーマニア戦敗北……。最後の1戦ぐらい「善戦」するかと淡い期待を抱いたが、友人の言うとおり、健康に悪いゲームになった。 98-0。トライ数14-0。つまりウェールズは奪ったトライをすべてコンヴァージョンした。...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:36 PM

November 27, 2004

チャンピオンズ・リーグ
PSVアイントホーヘン対アーセナル

アーセナルの不調はこれがどん底なのだろうか。アウェイのこのゲーム、開始早々にコーナーからドンピシャのヘッドを決められ後手に回る。ようやく前半にアンリーリュングベリーアンリとヒールパスが繋がりアーセナルらしい得点で同点に追いついたが、後半になるとまずローレン、そしてヴィーラと2名目のイエローで次々に退場。やっと引き分けた。 多くの論者が言うように対マンU戦を0-2で失ってからまったく元気がない。トッ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:54 AM

November 26, 2004

「涙が止まらない放課後」モーニング娘。

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モーニング娘。はいつだってその騒がしさが魅力だった。彼女たちはこれまでずっと、過剰なまでに大げさな身振りで、白々しいほど賑やかな声音で、道徳の教科書に書かれてあるようなありきたりな言葉のみで構成された紋切り型の真実を歌ってきた。それは全然静謐なんかではなくて、嘘っぽくて安っぽくてだからこそリアルな騒音まみれの真実だ。九十年代の終わりごろに流行した「LOVEマシーン」には、カラオケのぺらぺらの伴奏で魂を叫ぶしかない多くの大衆の声にならない声が貼りついていた。だからこそ「LOVEマシーン」は広い...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:57 PM

菊地成孔クインテット・ライブダブfeut.カヒミ・カリィ@代官山UNIT

ジャズという音楽が生まれたとき、それがジャズ以外の何ものでもないとその存在自体が証明するために必要な、だが決して必要であると召喚されて始めて姿を現すものではなく自然とその体に纏っているものがある。それはおそらく対極するものとして二種類あり、そのどちらもが正しいのだろうがジャズという音楽に神が存在するとしたら彼が力を貸すのは間違いなくいかがわしさをたっぷりと湛えた黒い極の上に立つものに対してであろう...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:37 PM

August 29, 2004

『Baby Blue』メアリー・ルー・ロード

1日8時間の路上演奏を日課とするらしいメアリー・ルー・ロードは、その活動の形態やカレッジ・ラジオでのDJ経験があるという経歴からか、他人の曲をカヴァーを非常に積極的に行なう。彼女のファンサイトには100曲以上のカヴァーのレパートリーがずらっと載っている。メジャー・デビュー・アルバムである『got no shadow』から6年ぶりとなるこのセカンド・フルアルバムの表題曲もバッドフィンガーのカヴァーだ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:41 AM

『丹下左膳餘話 百萬両の壷』山中貞雄

江戸は広いから、という言葉が何度も呟かれるが、実際に映される江戸の街はあまりにも狭く、百萬両の壷を探して人々は同じ場所をぐるぐると回ってばかりいる。そしてその狭さゆえに、人々は部屋の中にへばりつき簡単には動き出さない。床にどさりと寝転んだ丹下左膳が腰を挙げると、その動きは売って変わって俊敏で美しい。映画は彼の俊敏さと不動の姿勢とを繰り返すことで成り立っている。それは彼の引きつったような口元が開かれ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:37 AM

May 31, 2004

『花とおなじ』渚にて

贅沢であるとは一体どんな状態のことをいうのだろう?渚にての音楽を聴くとそんな想いにとらわれてしまう。リマスタリングまでは徹底してアナログ録音にこだわり、最小限の人数で時間をかけてレコーディングするという方法、それ自体が贅沢であるという見方もできる。だけれど、そうやって制作されたものだから贅沢な音楽になるというわけではあるまい。たとえば、彼らの盟友でもあるマヘル・シャラル・ハシュ・バズがその編成を大...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:11 AM

May 29, 2004

チャンピオンズリーグ決勝 モナコ対ポルト

このゲームは前半23分のリュドヴィク・ジュリ(モナコのキャプテン)の怪我による退場、そして71分のデコの得点ですべてが決まった。3-0という得点差は、決してチーム力の差ではない。もしジュリが怪我をせず、ポルトのアーリークロスがモナコ・ディフェンダーの足に当たり、デコの前に零れなければ、ゲームの趨勢は分からなかった。 ジュリの退場までは、モリエンテス、ジュリの2トップが機能し、ジュリは何度かポルト・...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:08 AM

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