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December 2, 2022

『In-Mates』飯山由貴
鈴木史

 暗い画面が俄かに明るんでゆく。しかしその明るさは、あくまで仄暗いトンネルを照らすために点在する電灯によってもたらされたもので、延々と続くかに思える長い長いトンネルのなかを照らし出すには心許ない。遥か遠くで、警告のようなアナウンスがこだましているが、声が言葉としての像を結ぶ以前に、そのアナウンスはトンネルのなかの反響として消えてゆき、なにを語ろうとしているのか聞き取ることはできない。同じように、声...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:07 PM

July 21, 2013

フレデリック・パルド展 Frédéric Pardo Oeuvres choisies, 1966-1998
槻舘南菜子

《画家の友人。僕は長い間、絵画と映画の間で迷っていた。フレデリック・パルド、ロマン主義を継承した古典的であり、現実主義の画家。僕の友人であり、僕がもし画家として仕事をしていたら実現したかったであろうことをまさしくそのままに体現してしまう人物。 フレデリックの絵画は本当に偉大だ。彼は主題に彼の友人、愛した女性を選ぶ。それは空想に属する表層的な装飾を背景にあらわれてくるだろう。飾り気のない偉大さ、まさ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:57 PM

January 23, 2008

『人のセックスを笑うな』井口奈己
梅本洋一

 山崎ナオコーラの原作をぼくは読んでいない。だから原作と比較してどーのこーのとは言えない。でも、このフィルムは大好きだ。快晴の田園地帯を2両編成の電車が走り、遠くに山々が霞んで見える風景の中に住む登場人物たちの話だ。19歳の美術学校の生徒「みるめ」と、39歳のその学校のリトグラフの先生「ゆり」の恋物語だ。 「ゆり」が詳細にリトグラフを作るプロセスがいい。「みるめ」が「ゆり」の指導でリトグラフを作...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:15 PM

November 16, 2007

『摩天楼』キング・ヴィダー
田中竜輔

 TSUTAYAをふらふらと散策していると、なんとなくこのタイトルが目につき、手に取ってみて初めてキング・ヴィダーのフィルムであることを知った。今年の2月にDVDがリリースされていたようだ。ヴィダーのフィルムの中でもこの作品は決して頻繁に耳にするタイトルではない。ためしにネットで検索してみると、映画の内容以上に、主演のゲイリー・クーパーとヒロインのパトリシア・ニールが熱烈な不倫関係を結んだというス...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:01 PM

August 11, 2007

原爆は物語を拒絶する ——〈東京日仏学院での対話録〉
舩橋 淳

 8月4日、広島原爆投下の2日前、長崎原爆投下の5日前に、「映画においてヒロシマを表象することの不可能性を超えて」と題される座談会が東京日仏学院で開催された。オペラ「蝶々夫人」のメーキングビデオ、『吉田喜重 オペラ「マダム・バタフライ」と出会う』上映に続き、ミシェル・ポマレッド氏、吉田喜重監督、岡田茉莉子氏、青山真治監督によるトーク。鋭利な知性が集った濃密な時間であった。ここではその内容を紹介する...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:03 PM

July 29, 2007

『囚人のジレンマ』リチャード・パワーズ
結城秀勇

 冒頭に引用されているフランク・キャプラ『素晴らしき哉、人生!』のジェームス・スチュアート=ジョージ・ベイリーと同様に、男ふたり女ふたりの子供たちを持った男にまつわる物語である。この作品の前作『舞踏会に向かう三人の農夫』同様、時系列の異なる3つのパートが絡み合いながら進むという形式を持っているが、この作品が書かれた(80年代末期という)時代を前作よりも濃厚に感じさせる。それは物語上の問題として、実...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:20 PM

July 17, 2007

『ザ・フューチャー・イズ・アンリトゥン』V.A.
結城秀勇

 今年9月に公開予定の映画(邦題『LONDON CALLING/ライフ・オブ・ジョー・ストラマー』)のサントラである。『レッツ・ロック・アゲイン』『VIVA JOE STRUMMER』などストラマーの死後、彼についての何本かの映画が公開されている。正直、またか、と思わないでもないが、この映画に少なくともひとつの見るに値する部分があるとすれば、それはジョー・ストラマーの声をもとに彼の人生を再構成して...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:34 PM

June 25, 2007

トライネイションズ:スプリングボクス対オールブラックス 22-26、PNC:ジャパン対ジュニア・オールブラックス 3-51
梅本洋一

 対イングランド戦、ワラビーズ戦を見て、秘かにスプリングボクスの勝利を期待したのだが、オールブラックスはやはり老練だった。前半こそラッシュしてくるスプリングボクスにタジタジの様相だったが、後半になると徐々にイーヴンに持っていき、力勝負に拘っていたスプリングボクスの疲労を待ち、最後に突き放す。オールブラックスというのは本当に懐の深いチームだ。ゆっくりと受け止めて、最初こそスプリングボクスの気迫溢れる...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:08 AM

June 17, 2007

『sky blue sky』Wilco
鈴木淳哉

 新作のリリースを聞いて嬉しくなるようなバンドが年々少なくなっていく。そんな思いは誰にでも共通していることかもしれないが、私にとってwilcoはそんな数少ないバンドのひとつだ。  このバンドにぞっこん参ったのはジム・オルークによってプロデュースされた前2作を聞いてだった。だからバンド名義のセルフプロデュースである今作を聞いてまず思ったのは、やはり前2作をジム・オルークというフィルター越しに聞いてい...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:45 PM

June 15, 2007

Ashes and snow展(グレゴリー・コルベール)@ノマディック美術館
梅本洋一

 一枚一枚の写真──巨大な和紙の上に印刷している──やそのコンセプト──象など動物や魚と「人間」の文字通りの「触れあい」によって自然との共生をはかる──がPCとして正しいのだが、グレゴリー・コルベールによるこうしたインスタレーションには、余り興味が持てない。ぼくが、この展覧会に赴いたのは、その内容ではなく、坂茂がお台場に「仮構」したノマディック美術館を見るためだ。巨大なコンテナが積まれ、それを構造...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:45 PM

June 11, 2007

怒濤のテストマッチシリーズ(2)
梅本洋一

オーストラリアA対ジャパン 71-10、オールブラックス対フランス 61-10  2ゲームとも一方的なゲーム。厳しく言えばこういうゲームを「テストマッチ」とは呼ばない。かつてからこんなテストマッチを繰り返していたジャパンはともあれ、ベルナール・ラポルトにとっては、どんな理由があろうと「屈辱的な大敗」だ。  まずジャパンから。ずっとスタンドオフ問題を書いてきたが、相手がかなり強くなると、別の問題がク...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:30 AM

May 28, 2007

『イビチャ・オシムのサッカー世界を読み解く』西部謙司
渡辺進也

 先日、フクダ電子アリーナにジェフの試合を見に行った。現在下から三番目の順位をさまようチームにはかつてあったような躍動感もなく、度々中盤でパスミスをし、簡単に点を取られる。バイタルエリアまでボールを運べないし、シュートは打っても枠へと飛ばない。もうどこから手をつけたらいいかわからないくらい最悪の状態。すごく寂しい気持ちでスタジアムを後にしたのだが、帰り道に思ったのは確実にひとつのサイクルが終わった...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:08 PM

May 7, 2007

『越境の時──1960年代と在日』鈴木道彦
梅本洋一

 今から20年以上も前、ぼくは一冊の書物を買った。『異郷の季節』(みすず書房)である。著者は鈴木道彦。収められた10篇余りのエッセーのそれぞれが素晴らしかった。パリ滞在というぼく自身との共通項はもちろんあったのだが、それ以上に、鈴木道彦の過不足ない文章と極めて適切な表現に触れ、いつかこんな文章を書きたいものだと憧れを込めて読んだ。  ぼくもこの著者にパリで一度会ったことがある。鈴木道彦自身がそのこ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:24 AM

April 4, 2007

"TOKYO"マグナムが撮った東京@東京都写真美術館
梅本洋一

 マグナム創立60周年を記念して、東京都写真美術館で「マグナムが撮った東京」展が開催されている。第2次大戦後から現在に至るまでのマグナム所属の写真家たちの東京の映像がここに終結している。それぞれの写真家にはそれぞれのエクリチュールがあり、この時代は「写真家」というメティエが誕生してからすでに百年近い年月が経過しているのが感じられる。そして、写真家たちが一様に東京という、常に変化する街に好奇の眼差し...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:30 AM

March 26, 2007

広瀬始親撮影写真「横浜ノスタルジア──昭和30年頃の街角」
梅本洋一

 旧横浜郵便局をリノヴェーションした横浜都市発展記念館で開催されているこの写真展を見ると、本当に困ってしまった。ぼくは、ノスタルジーはよくない、かつてあったものを懐かしむことは保守的な感性だ、と言い続けてきたし、今もそう思っている。だが、この写真展に展示されている写真を見ていると、もうどうしようもない喪失感に襲われて、それをノスタルジーだと言われてしまうと、納得せざるを得ないのだ。本当に困った。 ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:20 AM

March 14, 2007

神奈川県立近代美術館 鎌倉「畠山直哉展」
梅本洋一

 小町通を大股で歩いて近代美術館に着く。この多様に組み合わされた「白い箱」は坂倉準三の真の傑作であり、撤去されずに残ることになったことはとりあえず嬉しい。だが建物のところどころに古さや歪みが目立つ。同じ建築家の東京日仏学院が何度かのリノヴェイションを繰り返しつつ、しっかり今という時を呼吸しているのとは対照的だ。モダニズムは時を経ても生き残るべきものであり、そのためには資金と知恵が必要なのだ。  本...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:25 PM

March 10, 2007

TNプローブ レクチャー・シリーズ「建築と写真の現在」第1回 多木浩二
結城秀勇

 今夏に行われる予定の同題の展覧会へ向けての連続レクチャーの第1回は多木浩二。写真史のはじまりから現代にかけて、写真と建築の出会いについての概論が語られる。それは「建築写真の歴史」とはまた別のものだ。  ダゲレオタイプが発明された年とされる1839年に、ダゲールはルーブル美術館を一枚の写真に写している。それはあえて彼が建築の写真を撮ろうと試みたというよりも、当時の写真の感光時間の長さから、目に入る...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:06 PM

March 5, 2007

W杯スラローム第9戦 クラニスカ・ゴラ
梅本洋一

 オーストリア国境近くのスロヴェニアのスキーリゾート、クラニスカ・ゴラのスラローム。この1戦は佐々木明にとって本当に重要な1戦だ。今シーズンはまったくふるわず、アメリカからヨーロッパに帰り、アデルバディアの7位、アデルボーデンの14位と少し浮上したと思ったら、1本目の30位にも入らなくなり、世界選手権では失敗し、第1シードからも陥落し、「腑抜けな野郎」に成り下がった佐々木明にとって、この1戦でひと...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:55 AM

February 28, 2007

ニッポンのデザイナー展@ShiodomeItaliaクリエイティブセンター
梅本洋一

「AERA」のムック本と協賛して、「ニッポンのデザイナー展」が開催されている。建築家、プロダクトデザイナー、アートディレクター、インテリアデザイナー、デザインカンパニーなどデザインに関わる「ニッポン人」の多種多様な作品が展示されている。先日見た「柳宗理生活のデザイン展」の通り一遍の展示ではなく、それぞれの展示にも適切な解説が加えられ、ひとつひとつの展示物が興味深い。それに、もしレヴェルという言葉が...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:29 PM

February 14, 2007

柳宗理 生活の中のデザイン展(東京近代美術館)
梅本洋一

 家具や食器など生活必需品で気に入ったものを探すのはすごく大変なことだ。椅子ならば、座れれば良い。ナイフなら切れれば良い。それを基準に据えれば、選択は簡単だ。どこにでもそうしたものは置いてある。でも、面倒なのは、椅子もナイフもなかなか壊れないことだ。ひょっとすると、孫子の代までそれらは引き継がれるかも知れない。だから、自分のしょうもない美観を頼りに、いろいろなカタログを見たり、実際にショップを訪問...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:23 AM

January 24, 2007

「シアタープロダクツの現場」@パルコミュージアム
結城秀勇

設立5周年を迎えたシアタープロダクツの展覧会が、渋谷パルコミュージアムで1月29日まで開催されている。「シアタープロダクツの現場」と題されたこの展示では、事務所やアトリエをこの会期中会場の中に設け、まさにその場で、デザインがなされ、パターンがひかれ、工場とのやりとりがあり、営業、そして打ち合わせが行われる。一枚の布から引きはがされた断片がTシャツになり売買される、そんな方法で、流通の末端にある「買...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:46 PM

December 17, 2006

『スキャナー・ダークリー』 リチャード・リンクレイター
結城秀勇

フィリップ・K・ディック『暗黒のスキャナー』(この映画の公開にあわせて『スキャナー・ダークリー』と改題した新訳も書店に並んでいる)の映画化である。『がんばれ!ベアーズ』を、秀逸にとは言わないまでもそつのない出来にリメイクしたリンクレイターだけに、今回も『暗黒のスキャナー』という小説には何が書かれているのかがよくわかるような出来になっている。つまり原作を読んだ方がはるかに面白い。映画をその原作となっ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:37 PM

December 13, 2006

『硫黄島からの手紙』クリント・イーストウッド
梅本洋一

 イーストウッド自身の説明によればアメリカ側から硫黄島を描いたのが『父親たちの星条旗』、日本側からが『硫黄島からの手紙』ということだ。だが、この2作は、同じ戦争の両面を描いたものではない。『星条旗』が「英雄」たちの後日談を中心に描かれたのに対して、『手紙』が描くのは、硫黄島の戦いではあるけれども、そして守備隊長の栗林中将(渡辺謙)の話でもあるけれども、それらは口実に過ぎず、単に生きることと死ぬこと...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:08 AM

October 27, 2006

「パラレル・ニッポン 現代日本建築展1996-2006」東京都写真美術館
梅本洋一

 写真と建築との関係はとても興味深い。いわゆる建築写真は、周囲の人々をなるべく写さず、建物そのものを写し出す。建築雑誌の掲載されている多くの写真は建築写真だ。この展覧会──ちょっと小振りで残念だったが、ひとつのテーマに2枚ずつの写真が展示されていて、「パラレル・ニッポン」と呼んでいる頑張った展示──に展示されているのも、ほとんどがそうした建築写真だ。確かに建物そのものを理解するためには建築写真は合...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:34 PM

July 3, 2006

イザベル・ユペール×黒沢清 対談@東京日仏学院
結城秀勇

 7月1日より恵比寿写真美術館にて開催の写真展のために来日したイザベル・ユペールと、黒沢清の対談が、27日の夕方に東京日仏学院にて行われた。  このふたりの出会いについては梅本洋一の『映画旅日記』にある。「日本で映画を撮るのは難しいという黒沢清に、イザベルは、「でも映画を撮りたいと思う監督と、映画に出たいと思う女優がいれば映画は一本撮れるものよ。わたしはいつもそうしてきた」と話を結んだ」。  新宿...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:18 AM

June 25, 2006

飯田竜太展
藤原徹平(隈研吾建築都市設計事務所)

小さい頃、夏のキャンプで拾いに行った黒曜石の固まりをずいぶんと大切にしていた。何かが見えるわけでもないのに、何かが見えるような気がしてなのか、ツルツルした黒い半透明な鉱石を光に透かし、そこに浮かぶ斑をよく眺めていた。 例えば「本」という記号を分解すると「木」と「一」になるし、「book」という集まりを解体すれば「b」と「o」と「o」と「k」になるし、「b」をばらせば「l」と「o」のような図に分かれ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:34 PM

February 27, 2006

トリノ・オリンピック観戦記──最終回
梅本洋一

男子回転  個人的にもっとも注目していたのはこの種目だ。世の中では荒川静香のゴールドで盛り上がっているが、フィギュアはどうも好きになれない。体操もフィギュアと同じように好きになれない。技を取り入れた採点種目は、いくらコンピュータによる採点と部分点を加点する方式にしたところで、ぼくの考えるスポーツではない。ゴールに何点入ったかとか、タイムが速かったとは異なるジャッジによる採点──ボクシングもそうだが...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:25 AM

February 16, 2006

サッカー アメリカ対日本 3-2
梅本洋一

 ロスタイムに中澤が決めようともう遅い。ボコボコにやられてしまったゲーム。スタッツが物語る。前半の日本シュートはゼロ。アメリカは20本程度。3-6-1で久保がワントップを張ったがボールが来なければ木偶の坊。加治とアレックスの裏を何本もパスを通される。ゲーム後に小笠原が、相手はひとつになっていたと言ったが、その相手をどうやってかわし、どうやってシュートで終わらせるのかという方法論がまったく欠如してい...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:44 AM

October 7, 2005

Passion and Action「生の芸術 アール・ブリュット」展
影山裕樹

 アドルフ・ヴェルフリ、1864年に生まれ、幼くして家族を失い、幼女暴行未遂により精神病院に収監、彼は同病院内において、ある日突如として絵を描き始める。しかしその壮大な空想上の自叙伝の企ても、病には敵わなかった。休むよう説得する医師の言葉も聞かず、彼は死に瀕し、涙を浮かべながらも、最後までこれを描き上げたいと訴え続ける。そして1930年の冬、自らの『葬送行進曲』を描きながら、ヴェルフリはついにこの...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:43 PM

September 8, 2005

「ブラッサイ——ポンピドゥーセンター・コレクション展」
梅本洋一

 ブラッサイの全貌を見せる展覧会ではない。ポンピドゥーセンターに収蔵されている『夜のパリ』と彼の彫刻、そして落書きを集めたもの。巡回展につきものの物足りなさが残る。もっと見たい。彼の全貌を見たい。「ハーパーズ」のファッション写真まで含めて彼の写真を見たい。  だが、だからといって、ここに展示されている『夜のパリ』がダメだと言っているのではない。よくシュールレアリスムとの関係が語られ、事実、「ミノト...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:38 PM

September 5, 2005

『ランド・オブ・ザ・デッド』ジョージ・A・ロメロ
月永理絵

ジョージ・A・ロメロの20年ぶりの監督作である。本当はゾンビシリーズとしてひとつの年代に一本の映画を撮ろうと思っていたと語るロメロは、68年の『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』でデビューし、78年に『ドーン・オブ・ザ・デッド/ゾンビ』を、85年の『デイ・オブ・ザ・デッド/死霊のえじき』を完成させた。当然のようにゾンビ達の能力や姿は、その時代を象徴するものであり、05年に現われた彼らの新しい能力...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:25 AM

July 5, 2005

「横尾忠則 Y字路から湯の町へ」
藤井陽子

 なんておもしろい絵を描く人なんだろう、横尾忠則って人は!  ところは湯の町・伊東、池田20世紀美術館の開館30周年を記念して企画された展示会だ。横尾の「Y字路」シリーズの最新作である伊東市のY字路を描いたものに、「銭湯」シリーズを加えた60点の展示だ。「Y字路」シリーズは以前、東京都近代美術館で開かれた「森羅万象展」でも見ることができたが、その時よりも集中しておもしろく見れた。「森羅万象展」の時...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:35 AM

June 17, 2005

『髭を剃る男』エマニュエル・カレール
須藤健太郎

 長年口髭をたくわえていたマルク(ヴァンサン・ランドン)はある日口髭を剃ることを思いつく。しかし、妻のアニエス(エマニュエル・ドゥヴォス)をはじめ昔から親しくしている友人たち、職場の同僚など誰ひとりとしてそのことに気が付いてくれない。すねるマルク。次第に彼は、自分の記憶と他人の記憶とにずれがあることに気づきはじめ、実存的な不安に駆られるようになる。「ほかの人々を通じてこそ、ぼくは自分のことが話せる...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:54 AM

June 10, 2005

W杯アジア予選 クウェート対韓国 0-4
小峰健二

 クウェート戦前、韓国は勝ち点7でAグループ2位につけていた。勝ち点4のクウェートに勝つか引き分けでワールドカップ出場権を獲得できる。まさに日本代表と同じ状況。しかし、韓国は先日のウズベキスタン戦でロスタイムに辛くもドローに持ちこむという苦戦を強いられ、韓国本国では不安が渦巻いていた。それもそのはずウズベキスタン戦ではコンビネーションが噛み合わず、チグハグな動きでチームは苛立ちさえ見せていた。PS...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:14 AM

June 3, 2005

『フォーガットン』ジョゼフ・ルーベン
結城秀勇

 息子を事故で失った母親。しかし、周りの人間はその記憶を忘れていき、彼女の記憶が単なる思いこみにすぎないのだと説得する。はじめから子供などいなかった。君は流産のショックで妄想を抱いている。彼女はそんな言葉に耳を貸すことなく、自分がなんらかの陰謀に巻き込まれているのだと確信するに至る。  そこでジュリアン・ムーアの記憶が本当の記憶なのかということは、一切問われない。冒頭の一見ゆらゆらとして不安定そう...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:18 AM

May 21, 2005

「ストーリーテラーズ:アートが紡ぐ物語」
渡辺進也

本誌18号でドミニック・パイーニにインタヴューをしたとき、ある展覧会をすすめられた。「展覧会自体はひどいものだけど、そこに展示されている作品は面白いよ」。それが、森美術館で企画・展示されている「ストーリーテラーズ:アートが紡ぐ物語」である。  平日の夕方過ぎ、六本木ヒルズにはたくさんの人が歩いている。僕は森美術館には行ったことがなくて入り口がすぐにわからずうろうろしてしまう。入り口を発見し、エレヴ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:34 PM

May 17, 2005

『パリところどころ』
須藤健太郎

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この前、特に目的もなく六本木のABCに立ち寄ると、『パリところどころ』のDVDが売っていてびっくりした。『アデュー・フィリピーヌ』とセットで昨年の11月頃に発売されていたらしかった。かなり迷ったあげく、勢いで買ってしまう。すごい見たかった。ヌーヴェルヴァーグに興味を持っていくつも文献を読んでいると、『パリところどころ』というタイトルにいつも出会った。でも、未見だったのだ。 『パリところどころ』は、パリを舞台に6人の監督が撮った10分から20分程度の短編で構成される...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:49 AM

「写真はものの見方をどのように変えてきたか」第1部[誕生]
藤井陽子

この展示物の中でなにより心を惹いた、世界で最初に実用化された写真方式の「銀板写真」のことを話そう。銀板の上に人の姿や街の風景が写されているのだ。これは、第二の視覚と呼ばれるカメラ・オブスクラをつかって、画像を定着させた最古の方法──ダゲレオタイプ──の写真だそうだ。当時「記憶する鏡」と賞賛されたという。この写真を覗き込むと、人物や街の影以外の部分に、覗き込んだ人の顔が写りこむ。1枚の平面の中に、か...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:50 AM

May 14, 2005

「ウナセラ・ディ・トーキョー」
梅本洋一

久しぶりに砧の世田谷美術館に行く。12年ぶりのことだ。前に行ったのは「ラヴ・ユー・トーキョー」展。アラーキーと桑原甲子雄のふたり展だった。12年前が東京ロマンチカ、そして今度はザ・ピーナツの60年代のヒット曲のタイトルをそのままいただいたもの。歌謡曲は必然的にノスタルジックな感じがする。つまり、私も歳を取ったということだ。 平日の午後でとても空いていたので、内井昭蔵設計のこの美術館のディテールをし...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:30 AM

April 20, 2005

『ビッチェズ・ブリュー/タコマ・ナロウズ』ローザス
三橋 輝

舞台の3方を囲む幕から覗ける(ちょうど膝から下の分だけ隙間がつくられている)、いくつものヒールを履いた脚が、DJによって流される脈絡のないバックトラック──ジミ・ヘンドリクス、デスティニーズ・チャイルドなど──のリズムにのってステップを踏んでいる。ここでは、身体の一部しか見られないという目隠しの効果も手伝って、集中して見てしまうその脚の動きはプロのダンサーだからなのだろう、普段目にするものよりもず...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:02 PM

April 4, 2005

『アビエイター』マーティン・スコセッシ
結城秀勇

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ハワード・ヒューズ。世界最大、世界最速という文句のつく、いくつもの偉業を成し遂げた男。その称号を戴くにふさわしい剛胆さを持ちながら、その反面、潔癖性でそこから派生した神経症を患う。タイトル通りひとりの飛行機乗りとしてのリスクを積極的に負いながらも、一方で微細な細菌や汚れを異様に恐れる、その振幅に焦点を合わせたのが、『アビエイター』におけるヒューズ像である。彼の恐怖の根は、冒頭において植え付けられ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:08 AM

April 1, 2005

サッカー:アジア地区最終予選 日本対バーレーン 1-0
梅本洋一

実はゲーム開始前2-0という結果を予想していた。1-0しかもオウンゴールという結果は、クオリフィケーションにありがちな結果だ。ゲームに勝利し勝ち点3をとるという目的が果たされた。とりあえずこれでよいと断言しておこう。引き分けも負けも許されないゲームを勝ったことはチーム力がついた証拠だ。 だが、翌日の新聞には不満が渦巻いている。スコアの面で確かに「辛勝」なのだが、ゲームを見た人ならほぼ全員が共有する...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:15 AM

March 23, 2005

「森山・新宿・荒木」展
鈴木淳哉

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約40年にわたって新宿を縄張りに写真を撮り続けているふたりの初の顔合わせだという。森山/荒木、新宿という場所、40年という時間の流れ、見る人によっては無限の物語をつむぐであろう前情報はどのように処理すべきか……などと考えていたわけではない。ただ、どうしてもキュレーションに興味がいってしまいがちなところを抑えて写真を、見に行った。今回の撮り下ろしをカラー/モノクロで分けたのは、企画側なのか撮影者本...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:39 AM

March 21, 2005

「森山・新宿・荒木」展
藤井陽子

araki_moriyama.jpg
自分を包む外界すべてをアクシデントと捉えた森山大道は「新宿」という場所と出来事を擦過しつづけ、その速度のなかで写真という句読点を打っていった。かつてあったこと、もう終わったこと、新宿という街、そこにいた人たち——彼を擦過していったもの——は、彼の写真のなかで、がちゃがちゃとした曲線や直線、街に溢れる看板や電線や文字、突如現れた底の見えぬ黒影となり、彼の打った...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:49 PM

December 7, 2004

『三人三色』ポン・ジュノ、ユー・リクウァイ、石井聡互

チョンジュ映画祭企画のオムニバス。 『夜迷宮』(ユー・リクウァイ)。ユー・リクウァイの映画を見るたびに、このひとはなんで自分にできないことばかりやるのだろうと思う。ジャ・ジャンクーの映画においては、事物の輪郭と光線を写し取りそこにいくつかの名前を多層的に重ね合わせていく彼のカメラだが、しかしながら彼自身の監督作においては、自然光を排除し事物の輪郭を曖昧にしそれらに付された名前を剥ぎ取っていく映像に...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:40 AM

November 30, 2004

ヴォルフガング・ティルマンス:Freischwimmer展

入り口でチケットを手渡すと、「剥き出しの作品が多いですので、決して手を触れないでください」と係の女性に注意を受ける。言葉の通り、壁一面に貼られた写真のほとんどが、額にも入れられず無造作にピンやクリップで止められている。剥き出しの写真の光沢が、会場のライトに反射し、思わず目を細めてしまう。入り口からすぐのギャラリー1スペースではまだ整然と並べられていた写真が、次のギャラリー2スペースでは、無作為に散...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:48 PM

November 3, 2004

「パンク・ピカソ展」ラリー・クラーク

ロジャー・マリス(1934〜1985)……ベーブ・ルースが持つ1シーズンのホームラン記録を、1961年に更新したアメリカメジャーリーグのベースボールプレイヤー。彼の年間61ホーマーという記録は、1998年のマーク・マグワイヤ、サミー・ソーサ両選手まで破られることがなかった。1961年、マリスはチームメイトであるミッキー・マントルとともにルースの記録に挑戦することとなるが、のちのマグワイヤとソーサの...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:15 AM

November 2, 2004

『2046』ウォン・カーウァイ

金曜日の最終回の上映にしては異様なまでに空いている渋東シネタワー。ウォン・カーワァイ、木村拓哉という固有名もすでにパブリシティの機能を失っているのか? あるいは、ウォン・カーワァイのフィルムは、やはり単館ロードショー留まりのフィルムであって、全国ロードショーには当てはまらないのか? 興業面には多くの疑問があるし、そもそも観客で一杯の映画館などもうないのだろうから、TSUTAYAでレンタルに並ぶ人...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:17 PM

April 24, 2004

「エットレ ソットサスの目がとらえた『カルティエ宝飾デザイン』展」(醍醐寺 霊宝館2004.3.13〜5.2)

薄明かりの中を進み、小さな金剛石(ダイヤモンド)が散りばめられたティアラが、目の前にすっと現れる。それは、5ミリ程度の大きさの無数に光る粒たちが散りばめられたティアラだが、ほとんど重力を感じさせずに浮遊しているように現れる。粒を支えているだろう白銀(プラチナ)金物の端正な細工はこの目に映っているのだが、果たして本当にこの金物は金剛石と接合されているのだろうか。少しずつ大きさと形を変えて鮮やかに光る...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:55 AM

April 13, 2004

『集合住宅物語』植田実

とりあえず僕は、生まれてから3年間を除いては、ずっと集合住宅に住んでいる。4歳の時に引っ越した公団住宅はもっとも初期の2DKで、次の引っ越しでそれが3DKに、その次の引っ越しで3LDKになり、留学していたパリでも当然のごとく7階建てのアパートの最上階の女中部屋をリノヴェーションした部屋に住んだ。つまり人生は集団住宅から集団住宅の移動に費やされている。 植田実の『集合住宅物語』は東京と横浜の戦前から...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:53 AM

March 16, 2004

ドラマ・リーディング 『家』作:ニコラ・マッカートニー 演出:三浦基

世田谷パブリックシアターではここ数年ドラマ・リーディングがたびたび行われている。後に舞台化されるためのプロセスとしてのそれもあるが、今回はドラマ・リーディングのためだけに、海外の劇団と協力してその国の作家を招いている。『家』の作家ニコラ・マッカートニーは、スコットランドのトラヴァース・シアターとの協力のもと、世田谷に招かれた。彼女はかつて自分の劇団を主宰し演出もしていたとのこと。 青年団所属で、か...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:30 AM

『あやめ 鰈 ひかがみ』松浦寿輝

本書には「あやめ」と「鰈」と「ひかがみ」という3つの短編が収められている。それぞれのタイトルを並べただけのそっけないタイトル。短編集をつくるときにそこに収められる短編のタイトルのどれかひとつを選びとって一冊の本のタイトルとするのでもなく、またそれらをまとめあげるかたちで新しく考えだされたタイトルがつけられるでもない。そうしたタイトルのつけかたそれ自体がすでに本書の性質を如実に表しているかのようだ。...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:28 AM

January 17, 2004

中平卓馬展「原点復帰-横浜」 横浜美術館

例えば何か感動を覚えるような景色に出会い、カメラのレンズを覗き込み、シャッターを押す。やがて時をおいて印画紙にプリントされてくるグラフィックは、それが写真機で撮られたものであるということを理解している人にとって、<真実性>という性質を帯びた<特別なもの>であるように(そのグラフィックに自分が感じ得た感動が記録されているかのように)感じられる。選択する写真機やレンズによって、またはフィルムによって、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:22 PM

『運命のつくりかた』アルノー&ジャン=マリー・ラリユー

「映像に映像を重ねる技術は何ていうの?」、マチュー・アマルリック扮する映画監督、ボリスが撮った企業PR映画を見た後で、マリリン(エレーヌ・フィリエール)はさりげなく質問する。「オーバー・ラップ=surimpression」と、ボリスは答える。マリリンが「オーバー・ラップ」に関心を持ったのも当然、二人の社員が恋に落ちるという筋書きを持つおよそ企業PRには似つかわしくないその映画では、ボリスとマリリン...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:21 PM

January 15, 2004

『LIFE GOES ON』高橋恭司

もし明日写真集を作れと言われたら何を考えるだろう。いや、写真を撮れというのではなく、写真集を編集してくれと言われたらの話。はい、と答えて、じゃあどんなものにしたいか尋ねられたら。ぼくはきっと「小津のように作りたいです」と答えるだろう。 『晩秋』の、壺のシーンはシンポジウムでも話題になっていたが、あの京都旅行中の清水寺のシーンの直前、なに山かの稜線が斜めに画面を横切るショットが挿入される。たしかその...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:10 PM

January 13, 2004

『ブルース・オールマイティ』トム・シャドヤック

「群像」12月号での保坂和志×阿部和重の対談の中で、保坂氏は、『シンセミア』は個の視点から世界を描くのではなく、出来事を並べ立てていくことで世界を捉えている、という発言をしている。だが、『シンセミア』の場合、神町という一つの町の仕組みやそこで起こる出来事を書くことに専念しているため、神の視点のような超圧的な存在が登場することはない、と。更に、保坂氏は自身が先日行った創作学校での石川忠司とのトークシ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:08 PM

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