『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』ガブリエーレ・マイネッティ監督インタビュー

自分の中にヒーローを持つということ

『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』は、アニメや漫画、映画──空想世界──の中のヒーローを童心のままに信じ続けてきたギークによるヒーロー映画だ。本国イタリアでは久しく作られてこなかったジャンルではあるが、アニメを通して日本文化に慣れ親しんで育ってきたガブリエーレ・マイネッティにとって、真のヒーローとは「優れた能力」だけでなく、「秀でた勇気の持ち主」のことであると言う。
マイネッティにとって、勇気とは空想する力に支えられたものであるに違いない。故に、彼は辛く厳しい環境下でさえ奔放に空想する力を失わない人々を描くだろう。その意味で、過酷な現実から永井豪のアニメ『鋼鉄ジーグ』の空想世界に逃げ込んだ本作のヒロインが、超人的な力を手に入れた厭世的なゴロツキに生きる意味を与える姿はとりわけ印象的だ。ここではユニークな形であれ、ギークの信念が表されている。ヒーローへの狂信的なまでのある種の信仰が、人に再び夢を信じさせるのである。 私たちが憧れのヒーローが描かれた服を身につけたり、ポスターを貼ったりすること、あるいはフィギュアを持つことは何も無益なポーズなどではない。そのようにして自分のヒーローとどこかで関係を持つことは、私たちの内にある勇敢さやバイタリティを見出すことなのだ。


——原題『Lo chiamavano Jeeg Robot(英題『They Call Me Jeeg Robot』)』は、1970年のイタリア映画『風来坊/花と夕日とライフルと…(原題『Lo chiamavano Trinità…』/英題『They Call Me Trinity』)』(E・B・クラッチャー)からもじったネーミングだそうですね。

ガブリエーレ・マイネッティ(以下GM):ありがとうございます。まったくその通りです。

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ガブリエーレ・マイネッティ(Gabriele Mainetti)

1976年ローマ生まれ。俳優、監督、作曲家、映画プロデューサー。20歳の時シナリオライティングに興味を抱き、監督志望でレオナルド・ベンヴェヌーチ主催のワークショップに参加した後、NYのティッシュ・スクール・オブ・アートで演出、脚本、撮影を学ぶ。2011年、製作会社Goon Filmsを設立。2012年に日本アニメ『タイガーマスク』から着想を得て製作した『Tiger Boy』(2012)は、第86回アカデミー賞短編実写映画賞にノミネートされたほか、国内外の数々の賞を受賞。1975年に日本で放送され、79年にイタリアでも放送された永井豪原作のアニメ『鋼鉄ジーグ』をモチーフにした長編デビュー作『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』は第10回ローマ映画祭でワールドプレミア上映され、2016年ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞で最多7部門受賞した。


『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』Lo chiamavano Jeeg Robot

テロの脅威に晒される現代のローマ郊外。裏街道を歩く孤独なチンピラのエンツォ(クラウディオ・サンタマリア)は、ふとしたきっかけで超人的なパワーを身につけてしまう。当初は私利私欲のためにその力を使っていたエンツォだったが、世話になっていたオヤジを闇取引の最中に殺され、遺された娘アレッシア(イレニア・パストレッリ)の面倒を見る羽目になる。アニメ『鋼鉄ジーグ』のDVDを片時も離さない熱狂的なファンである彼女は、怪力を得たエンツォを、アニメの主人公である司馬宙と同一視して慕う。次第に彼女を守るため正義に目覚め、互いにほのかな愛情が芽生えていくふたりだったが、彼らの前に、悪の組織のリーダー、ジンガロ(ルカ・マリネッリ)が立ち塞がる。

2015年/イタリア/119分/シネマスコープ
監督・音楽・製作:ガブリエーレ・マイネッティ
出演:クラウディオ・サンタマリア、ルカ・マリネッリ、イレニア・パストレッリ、ステファノ・アンブロジ
配給:ザジフィルムズ
公式サイト:http://www.zaziefilms.com/jeegmovie/
5月20日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー