「『現代の眼』の中平です」。当時中平卓馬と森山大道は新宿の喫茶店「アカシア」で初めて出会ったという。次号の特集が決まりつつあった8月下旬、吉祥寺の古本屋「りぶる・りぶる」で1冊300円(ただし中平卓馬の写真が掲載されているのは500円)、バウスシアターで『火まつり』を見ようと自転車を走らせた夜だ(その夜は特に快調で、西荻窪−吉祥寺の5分の壁を突破しそうな勢いだった)。線路下に延々と続く駐車場(それが最短ルートだ)には車も人間も少なく、ただ延々と続く頭上の蛍光灯に照らされるコンクリートに触れるのは、ただタイヤの黒さと太さだけ。悪くないな、68年の号を数冊購入。
『現代の眼』は左翼総合雑誌、60年代から70年代前半にかけての「政治の季節」をリードした、と言われている。中平卓馬は編集者、寺山修司は『ああ荒野』を連載し、他にも小田実が羽仁五郎が執筆し、東松照明なんかもこの雑誌にコミットしていたとか。ただ版元の現代評論者社長・木島力也は大物総会屋との関係が暴かれ70年に逮捕された。この雑誌に金を出していたのは右翼だったってことか。それでも廃刊は83年である。
この雑誌を読んで鼻で笑うつもりは毛頭ないが、やっぱりうんざりすることはうんざりする。ここに載っている文章はどれもこれも「正しい」、でもだからスペクタクルだと思う。まあ現在本屋に並んでる大抵の雑誌も一緒ってことなんけど。『ぴあ』をバイブルだと言うのと同じで、『現代の眼』をバイブルだと言うのは悲しいなと思う。
松井宏