見逃していた『ハッシュ』を見るために下高井戸のレイトショーまで足を運ぶ。きっとnobodyを始めたからというのが大きな理由だと思うが、二番館で映画を見るとやたらと「古い」という感覚を以前より強く覚えるようになった。もちろん、作品に対して新鮮な反応を示すことができるのはとても重要だろうが、かといって、その作品に対してあまりにも短い期間しか言葉が費やされないことにも異和はある。
でも多かれ少なかれ、雑誌というのは、そうした「古い」という感覚をうながすものだと、映画館内に貼られた公開当時の雑誌の切り抜きを眺めつつ自分で勝手に頷く。確か、当時もこれら雑誌記事を読んで、逆に言えばこれら記事を読んだから、『ハッシュ!』を見に行く足が鈍ったのだと思う。いや、何も雑誌記事の悪口を言っているわけではありません。僕が勝手にそれら雑誌記事を読んで、『ハッシュ!』の「ポップ」なイメージを作り上げ、僕が勝手に見に行かなかっただけです。ただ、映画を見終わった感想を言うと、僕が勝手に作った『ハッシュ!』のイメージはある意味当たっていたという感じ。だけどそれは、橋口の作品に起因するものではなくて、それをとりまく環境に起因するのだろう。つぶさには分からないが、ゲイ・レズを囲む言説と言うのは(とくに映画に関しては)ここ10年くらいで、随分「ポップ」になったのではないだろうか。レズビアン&ゲイ映画祭が吉祥寺からスパイラルに移ったことひとつ見ても、なんとなくそう予想する。
新垣一平