02.10/15

 

 渋谷でレイトショー『ゴダールのマリア』を見て、自転車で家路につく。ゴダールを見終わった後は、いつも自分の周囲の映像と音が異様に研ぎすまされて見え聞こえてくる。まさにいつもの風景がひん曲がってしまったようで、ゴダールの映画の余韻ではなく、このひん曲がった世界に少し酔いつつ呆然とするのである。その酔いのせいか、自転車がパンクしていることに、しばらくしてからやっと気が付く。というかもうペコペコ。チューブがイカレてはまずいので、押して歩くことにするが、追い討ちをかけるように突然の雷雨。何故か鞄に入っていた小さな折り畳み傘をさしつつ、雨の中をとぼとぼ歩く。ああ、東京は広い。いつまでたっても家に着かない。
 レイトショー前に空き時間に本屋さんで立ち読みをしていた『10+1』で都築響一氏が「東京はスクーターサイズだ」みたいなことを言ってたのを思い出す。「東京は小さな町の集合体だ」とかなんとかも。スクーターを買う金銭の余裕がない嫉妬からではないが、僕は東京/自転車の組み合わせが好きだ。確かに小さな町から町へと移動する道具としては東京に自転車はちょっと小さい。だけど、そんな町と町のすき間と言うか、町が変わる節みたいなものを感じるのには自転車がちょうど良いのだ。例えばマンハッタンとかだったら、歩くくらいのスピードで町の景色が変わるそんな節を楽しめるだろうけど、東京で同じ感覚で町の景色の変化を実感しようとしたら自転車になるはずだ。都心をチャリで動き回るようになった最近そんなふうに感じる。ガガガ、季節外れの雷が近くで鳴る。雨に濡れるとわが家が遠い。明日さっそく修理に行こう…。

新垣一平

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