街を歩いていると、スターバックスやシアトルカフェなど、ロゴや色彩は違うにせよチェーン展開するカフェが新しくできているのに気がつく。新しくできたビルには必ずと言っていいほど、コーヒー店が入っている。店を覗くとスーツ姿からセーラー服にたくさんのコーヒーカップルズ。
今日も、いつのまにやらカフェができたビルの前で立ち止まり、ここには、以前何があったのだろうと考えた。毎日通っているのにすっかり思い出せない。帰りに、やっと気づいたのだが、実は、そこには以前何もなかった。いや、ビルの分厚い壁があった。コーヒーショップは、それまであった壁を壊し、オープンカフェという形態をとっていた。そして、壁が透明ガラスになっている。そう、だからコーヒーショップはやたら目に付く。一面ガラス張りだったり、店の前にテーブルが置かれていたり、とてもよく見えるのだ。昼間は中が見えるし、夜は明かりがついてなおさらよくのぞける。渋谷の目立つ場所にも、ででーんといつも人で溢れのが見えるスターバックスがある。オフィス街や、デパートなどの重くて堅そうな壁ははがされ、コーヒーショップが埋め込まれる。店が奥まで見える。街もビルも軽く明るくなっていく。
私もこのごろ、格好つけてコーヒーを飲んでみたりしている。顔をしかめながら。実はそれは大人の味ではなく流行の苦さなのか。ならば、ガラス張りの向こうが暗く重く沈むカフェを見つけてぞっとする前に、砂糖もミルクもたっぷり入れて匂い甘いコーヒーを飲もうか。
瀬田なつき