昨日、相米慎二の『ラブホテル』と井土紀州の『第一アパート』を一緒にする上映会があり、上映後トークで井土さんは『ラブホテル』を久々に見て、自分がシナリオを書くのに潜在的に大きく影響されていることに気付かされたと感慨深気に語っていた。面白かったのは、もうひとつの影響、つまり「歌謡曲の使い方」だった。『ラブホテル』では「夜へ」(山口百恵)や「赤いアンブレラ」(もんた&ブラザーズ)がメロディが頭にこびり付くぐらい印象的に使われているのだが、確か井土さんの『百年の絶唱』でも和田アキ子が使われていて、そのシーンだけは鮮明に覚えている。曲名は知らないのだが、曲を聴けば思い出す自信すらある。映画の力もあるのだろうが、歌謡曲独特の何やら得体の知れぬ力があるのやも知れない。…などと思いつつ、ひさびさにスチャダラパーのファースト・アルバムを聞いていたら、ライナーの裏に「Dedicated
to TONPEI LEFT」とか書かれているのを発見。おそらく、知ってる人は左とん平の「とん平のヘイ・ユウ・ブルース」のことを思い出す。日本のヒップホップの創世記とかいうと近田春夫とかいとうせいこうとかいう固有名が出てくると思うのだが、その遠く昔1973年に左とん平はぶっとんでいたのである。ラップというにはちょい無理があるが、歌とも語りともつかない口調で捲し立てるとん平のMCには何かスチャダラにも感慨深いものがあったのだろう。って、友人と話をしていたら、スチャダラは大ファンみたいで対談とかもしてるらしい。でも左とん平を言うなら、勝新太郎だ、と友人は言う。どの曲かは忘れたが、そのラリってるとしか思えない歌声はルー・リードを遥かに凌駕する、という…。うーん、日本の歌謡曲、侮りがたし。
新垣一平