02.12/14

 

 横浜国大にて青山真治監督の講演。映画美学校高等科の実習制作としてつくられている『AA〜音楽批評家・間章』についてである。1部あたり30分の3部構成としてつくられたそのパイロット版(「12+12=24」と題された間章の24回目の命日に行われたライヴで上映された)の一部が上映された。完成版は1部あたり1時間の5部構成になる予定であるそうだから、ゴダールの『映画史』ならぬ、青山真治の『音楽批評史』ということであろうか。
 この『AA』パイロット版の中で、近藤等則がこう言っていた。「(間章の)文章の字面の上で批判することは幾らでもできるだろうけど、もっと別な何か、たとえば彼が文章を描くスピードだとか、を感じることの方が大きなことだろう」と。事実、この映画の中で自身のポートレイトに続いて流れる間章本人の声は、単語のひとつひとつを理解して文章を頭の中で再構成しようなどという気にはちっともさせず、ひたすら矢継ぎ早に繰り出されていく言葉のスピードだとか、呼吸のリズムだとかが耳を撃つ。その「音」に合わせて流れている映像というのが、いかにも寒そうな新潟の海なのである。海と空の境目となる水面で、そのどちらを撮るでもなくしばし漂ったのちに、カメラは海底へと沈みこむ。身を切る寒さ、水圧、呼吸ができない海中で、ある対象に「命懸け」になるのではない、姿勢としての「イノチガケ」を垣間見た。
 無論、「いまを語るためにはかつてあった全てを知らねばならない」と言ってのける青山真治にも、それを感じた。

結城秀勇

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