方々からその評判を耳にしていたギヨーム・ブラックの作品が、遂に日本で公開された。2013年フランス映画祭でも大きな話題を呼んだこのふたつの作品は、ある町の冬と夏のひとときを切り取ったとてもシンプルなものだが、物憂げな冬の表情、そしてヴァカンスの季節の始まりと終わりの一瞬の煌きを捉えた、豊かな時間を擁するものとなっている。今回、ジャック・ロジエやエリック・ロメールといった名を引き合いに出されながら注目を集めているこのフランスの新鋭監督に、両作に出演する俳優ヴァンサン・マケーニュのこと、ヴァカンスと映画のこと、等々、本作の魅力を掘り下げるべく、いくつかの質問を投げかけてみた。
――『遭難者』と『女っ気なし』は主演のヴァンサン・マケーニュの演技がとにかく素晴らしいですね。お二人はもともと友人だったと聞いたのですが、ギヨーム監督は彼とどのようにして出会ったのでしょう?
ギヨーム・ブラックヴァンサンと出会ったのは、今から10年程前のことです。私がFEMIS(フランス国立映画学校)の学生だった頃で、彼も同じようにコンセルヴァトワール(フランス国立高等演劇学校)の学生でした。ある時、舞台をやっている友人のひとりがパリ郊外の劇場に行く際に、私の車に他の友達も何人か乗せてほしいと頼んできたのですが、その中にヴァンサンがいたんです。その時の彼は車の中で興奮気味に大きな声でしゃべり続けていたので、途中で車から降ろそうかと思ったくらいネガティヴな印象しか持たなかったです。でもその何年かあと、私が知り合いの映画監督の短篇映画に助監督として参加していたら、その映画にヴァンサンが出演していて、久しぶりに彼と再会をしました。そこでは何故かとても気が合って、2、3日後には、当時彼が演出をしていた舞台「レクイエム」を見にも行きました。それから急に仲良くなって頻繁に会うようになったのですが、当時はふたりとも女性との関係がうまく築けないという難点があって、そういった男同士で一気に仲が良くなったような印象があります。
1977年生まれ。配給や製作の研修生として映画にかかわった後、FEMIS(フランス国立映画学校)に入学。専攻は監督科ではなく製作科だが、在学中に短篇を監督している。2008年、僅かな資金、少人数で映画を撮るため、友人と製作会社「アネ・ゼロ」(Année Zéro)を設立。この会社で『遭難者』(09)、『女っ気なし』(11)を製作。またブラック自身、仲間の短篇をアネ・ゼロで製作している。最新作「Tonnerre」(13)は第66回ロカルノ国際映画祭コンペティション部門に出品された。
© Année Zéro - Kazak Productions
2009年/25分/1.85/カラー
監督:ギヨーム・ブラック
出演:ジュリアン・リュカ、アデライード・ルルー、ヴァンサン・マケーニュ
配給:エタンチェ
© Année Zéro - Nonon Films - Emmanuelle Michaka
2011年/58分/1.85/カラー
監督:ギヨーム・ブラック
出演:ヴァンサン・マケーニュ、ロール・カラミー、コンスタンス・ルソー
配給:エタンチェ
ユーロスペースほか全国順次公開中
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