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December 14, 2024

『私の想う国』パトリシオ・グスマン監督インタビュー

積み重なる「歴史=ストーリー」の核

2019年、チリで「社会の爆発」と呼ばれるチリ史上最大規模の社会運動が起こった。新自由主義の実験場とされたチリで降り積もってきた人々の怒りがついに暴発した。『チリの闘い』を代表作として50年以上チリ社会を記録し続けてきたパトリシオ・グスマンはこの出来事に突き動かされ、最新作『私の想う国』を制作する。 今作の日本公開にあわせて、パリ在住のグスマン監督にオンラインでインタビューを行った。監督の体調を考...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:43 PM

September 20, 2024

『満月、世界』塚田万理奈監督インタヴュー「本物の人間たちに、書かれた物語が少しずつ負けていって、現実に近づいていったらいい」

 年齢の離れたふたりの女性の関係性の変化を描いて幕を閉じた前作『空(カラ)の味』(2016)から8年。監督の塚田万理奈は、成長する子供たちを10年がかりで16mmフィルムにおさめる長編第2作『刻』を今も撮影中だ。そのプロジェクトの折り返し地点として公開されるのが、「満月」(みつき)と「世界」という2本の短編をおさめた本作『満月、世界』(2023)だ。 『空(カラ)の味』では、子供の視点から年長の女...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:00 PM

September 13, 2024

【後編】『石がある』太田達成監督、出演・加納土インタビュー「夜と昼の間で」

 大きな水門にぶつかることで、ふたりはそれ以上先に進めなくなる。そのときはじめて、「どこに向かっているのか」がふたりの間で問題になる。行きはよいよい帰りはこわい。日が傾き近づいてくる夜と、ふたりのそれから。(前編はこちら) ーー枝一本からなにかが生まれたという話と、直後の場面で小川さんが約束の場所に行かずに川を去ろうとする場面はどこか対照的なような気がします。あのとき彼女はiPhoneを取り出しま...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:05 PM

September 6, 2024

【前編】『石がある』太田達成監督、出演・加納土インタビュー「川と岸の間で」

 「なにもない」旅先で、見知らぬ誰かに出会う。ただの石、ただの枝と呼ぶほかないものが、それでもそれだけが持つ特徴によって、無数の石や枝の中でも特別なものになる。でもだからといって、この出会いが恋や愛と呼ばれなければいけないわけじゃない。無名なものと有名なもの、川と岸、ありふれたものとスペシャルなもの、それらの境目を『石がある』は漂い続ける。  順撮りでふたりの川辺の行程をたどるように撮影されたとい...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:08 PM

June 8, 2024

『左手に気をつけろ』『だれかが歌ってる』井口奈己監督インタビュー ──出会うとか、すれ違うとか、別れるとかに意味がないってことこそ奇跡──

まだ映画のことなどよく知らない、自由に映画を撮れるはずのこどもたちであっても、じっさいに制作の場に立てば、人としてちゃんとしなければいけない、ということを『こどもが映画をつくるとき』は教えてくれた。人の話を聞かなくてはいけないし、無断で撮影をしてはいけないし、そのためにタイミングを見計らって色んな人に丁寧なお願いをしなくてはいけない。映画は仲間や仲の良い人たちだけで好き勝手につくれるものではなく...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:07 PM

May 27, 2024

第77回カンヌ国際映画祭報告(4)ファブリス・アラーニョ インタビュー《後編》
槻舘南菜子

インタビュー《前編》はこちら ーージャン=リュック・ゴダールは、常に新しいテクノロジーに関心を持ってきました。たとえば、彼に強い影響を受けたフィリップ・ガレル監督は、フィルムでしか映画を撮りません。ゴダールは、自分の映画を変化させ続けること、そして、結果として映画の定義そのものを変化させました。彼のテクノロジーへの関心についてどう思いますか。 私はあなたからの影響もあるのではないかと思っています。...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:02 PM

第77回カンヌ国際映画祭報告(3)ダフネ・ヘレタキス インタビュー
槻舘南菜子

カンヌ国際映画祭には、四つの短編部門が存在する。公式部門には、コンペティションと学生映画(Le Cinef)部門 、そして、併行部門である監督週間短編部門(ノンコンペティティブ)と批評家週間短編部門(コンペティション+特別上映)である。とりわけ公式部門と批評家週間部門のコンペティションにノミネートすることは、ヨーロッパを出自にするか否かに関わらず、初長編を製作するに当たっての大きな飛躍となる。なか...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:39 PM

May 20, 2024

第77回カンヌ国際映画祭報告(2)ファブリス・アラーニョ インタビュー《前編》
槻舘南菜子

ファブリス・アラーニョは、長年ジャン=リュック・ゴダールの右腕としてサポートを続け、終着点となる作品『Scnéarios』は、生前のゴダールによる詳細な指示のもと、彼の手によって完成した。自身も映画作家であり、ゴダール作品をインスタレーションという形で、別の「生」を与えることを使命としている彼の言葉を聞いた。 ーーあなたは20年来、ジャン=リュック・ゴダールと共犯関係にあり、アシスタントを務めてき...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:22 PM

May 18, 2024

第77回カンヌ国際映画祭報告(1)ミトラ・ファラハニ インタビュー

「芸術」という言葉に身を委ねて

槻舘南菜子

ジャン=リュック・ゴダールが残した最後の作品となる『Scnénarios』が、公式部門カンヌクラシックにて上映された。 『イメージの本』の危機を救い、『A Vendredi Robinson』で我々の知らないゴダールの姿を捉え、そして、彼の終着点まで寄り添った、ミトラ・ファラハニに話を聞いた。 ――監督やプロデューサーになる前に、あなたはまず第一に画家でしたね。映画制作であり、製作(特に監督)を始...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:00 AM

May 13, 2024

『悪は存在しない』大美賀均インタビュー「森を迂回して」

早急に建設されようとしているグランピング施設を巡る、地元住民と東京から来た芸能事務所の二人組との討論は、『悪は存在しない』においてもっとも魅力的な場面のひとつである。不透明な計画の粗を地元住民たちは各々の言葉、語り方で的確に詰めていく。そんな場面を見ながら、ではこの映画の監督である濱口竜介は謎多き『悪は存在しない』というプロジェクトをスタッフ、キャストにどのように説明したのだろうか、と気になった。...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:59 PM

April 27, 2024

『ラジオ下神⽩ーあのとき あのまちの⾳楽から いまここへ』小森はるか監督インタビュー「贈る歌⇄受け取る歌」

 2011年の東京電力福島第一原子力発電所事故によって、浪江・双葉・大熊・富岡町から避難してきた方々が暮らす下神白団地。そこに住む人々に、かつて暮らしたまちの思い出を語ってもらい、当時聞いた曲とともにラジオ番組風のCDにして配布するのが「ラジオ下神白」というプロジェクトだ。  その活動風景を記録したのが映画『ラジオ下神⽩ーあのとき あのまちの⾳楽から いまここへ』である。ではあるのだが、この映画に...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:59 AM

March 1, 2024

『すべての夜を思いだす』清原惟監督インタビュー「夜道をひとりで(どこかの誰かと)歩く」

 3人の女性が、徒歩で、バスで、自転車で、多摩ニュータウンを移動する、たった一日のお話。その日は誰かの誕生日で、誰かの命日でもある。長い間会っていなかった友達に会いに行こうする日であり、いなくなった人を見つける日でもある。その日がありふれた毎日のようで実はいつもとは少しだけ違う日であるように、彼女たちもまた平凡なようでいてどこか不思議なものたちと出会う。鳥の声、蛙の声、電車の音、震えるラベンダー、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:04 PM

February 14, 2024

『ゴースト・トロピック』 『Here』バス・ドゥヴォス監督インタビュー「Refinding normal, refinding everyday」

 現在絶賛公開中の、『ゴースト・トロピック』 『Here』。公開にあわせて来日したバス・ドゥヴォス監督に話をうかがった。  前日に日本に着いたばかりだというドゥヴォス監督。ブリュッセルという都市のダイバーシティ、16mmフィルムで切り取られる夜の闇、目の前にあるのに小さすぎて気づかない苔、名前をつけること、といった話を矢継ぎ早に聞いているうちに、いつのまにか窓の外はすっかり陽が暮れていた。そして、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:56 PM

February 5, 2024

『熱のあとに』山本英監督インタビュー

「生きること、愛することが地続きにあるように」

『小さな声で囁いて』の山本英による新作『熱のあとに』が公開されている。本作は実際の事件を元にしたオリジナル作品であり、橋本愛演じる主人公の沙苗を中心とした「愛」を巡るフィルムだ。彼女の抱く愛とは、けっして一概に理解できるものではないかもしれない。しかし、私たちが生きる現在を振り返った今、自然に芽生え、また素直に訴えかけられてくるものとして見る者を鋭く惹きつけることになるだろう。脚本のプロセスを始め...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:14 AM

December 9, 2023

『王国(あるいはその家について)』草野なつか監督インタビュー 「あの日のことであり、これからのことでもある」

12/9よりポレポレ東中野にて劇場公開される『王国(あるいはその家について)』。奇しくも最新作短編「夢の涯てまで」(映画『広島を上演する』中の一編)が同日より公開となる草野なつかだが、彼女の決して多くはないフィルモグラフィの中でも最も重要とも言える本作は、完成から5年越しの公開となる。  俳優の身体の変化を主題とした本作では、「役を獲得する過程」を「声を獲得する過程」であると捉え、同場面の別テイク...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:10 AM

June 23, 2023

「真夜中のキッス」唐田えりか×佐向大監督インタビュー「変わらない夜のその先へ」

佐向大監督作品に、唐田えりかが出演するーー。想像もつかないプロジェクトのようでもあるし、すごくアリな気もする。6月23日(金)より公開の映画小品集|三篇『無情の世界』の一編「真夜中のキッス」を観るや、いささかの不安は杞憂に、期待は確たる信頼に変わった。間抜けな人間たちをむき身のまま飾り気なく映しとる佐向監督と、スクリーンの中で浮遊するように存在する唐田えりか。「真夜中のキッス」という佳品によって生...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:57 AM

February 21, 2023

《ロッテルダム国際映画祭報告》『とおぼえ』川添彩監督インタビュー

パンデミックを経て、三年ぶりにロッテルダム国際映画祭が1月25日から2月5日まで現地開催された。今年、大規模な組織改革によって多くのプログラマーが映画祭を去ったが、ディレクターの交代によってスタッフが一新するのはどの映画祭でも当たり前のことだろう。映画の現在を追い続けるために、数年ごとにアーティスティックディレクターが変わり、映画祭は生き物のように変化していく。しかしながら、創立以来、強い実験性と...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:57 PM

December 27, 2022

『柳川』チャン・リュル監督インタビュー

2014年に製作された『慶州 ヒョンとユニ』(日本公開は2019年)を除き、チャン・リュルのフィルムは国内の映画祭や一部の上映機会を通じた紹介に留まっていた。だが、短編から長編、あるいはドキュメンタリーに至るまで、2000年代初頭からコンスタントに新作を発表している映画作家であり、中国朝鮮族3世というバイカルチュラルな出自のもと、中国や韓国、また最近では日本を舞台に、各々のロケーションをタイトルに...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:49 PM

May 30, 2022

第75回カンヌ国際映画祭報告(5)リトアニアの新しい才能、ヴィタウタス・カトゥクス監督インタビュー
槻舘南菜子

ヴィタウタス・カトゥクス(Vytautas Katkus)は撮影監督としてキャリアを重ねた後、2019年カンヌ国際映画祭批評家週間短編部門に初監督作品『Community Gardens』がノミネートされた。ソビエト時代に形成された農村共同体に生きる人々は、ノスタルジーの漂う現代とは異なった時間、空間を生きている。そこに帰京してきた主人公が覚える、彼と家族、共同体との強い違和感。とりわけ、父親や地...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:11 PM

May 25, 2022

『夜を走る』佐向大×足立智充インタビュー「レボリューションする身体」

絶賛公開中の佐向大監督最新作『夜を走る』。職場の同僚ふたりがひとりの女性と出会うことで、平穏な日常生活から転落していく。そんな発端から、やがて映画は予測もつかない展開を見せていくのだが、その中で文字通りの変貌を繰り返す主人公の秋本。見たことがないほど異様なようでもあり、しかし我々自身にどこかよく似たところもあるような、秋本という人物はどのように造型されたのか。彼を演じた足立智充と佐向大監督に話...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:22 PM

May 20, 2022

第75回カンヌ国際映画祭報告(2)スペインの新星、エレナ・ロペス・リエラ監督インタビュー
槻舘南菜子

2015年、カンヌ国際映画祭監督週間にノミネートされた短編『Pueblo』から七年を経て、エレナ・ロペス・リエラ監督、初長編『El Agua (The Water) 』が同部門でとうとうお披露目される。思春期の少女は、自然との強い関係性のもと謎と欲望を抱えながら、社会の重圧に立ち向かい、自由と独立を求め、若い「女性」へと変貌していく。これまでに監督した短編『Los que desean (The ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:15 PM

February 28, 2022

『宝島』ギヨーム・ブラック監督インタビュー

やさしくて幸せな場所を描きたかったのです フランスはもとより、世界中で高く評価されているギヨーム・ブラック監督の『宝島』が、動画配信サービス「JAIHO」にて配信される。この作品はブラック監督3本目の長編作品であり、パリ郊外のレジャー施設が舞台となっている。ヴァカンスを楽しむ人々やそこで働く人々の何気ないやりとりや会話がのびのびと映し出され、老若男女問わずさまざまな人たちが集まるその空間で、思い思...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:56 PM

February 1, 2022

『三度目の、正直』野原位×川村りらインタビュー

映画がこの時代をえがくために必要なことを探して 野原位による長編デビュー作『三度目の、正直』は全編を通して驚きに満ちている。この登場人物はこういう人なのかと思ったら、次の瞬間にはその人がまったく別の人物に見えるほど印象が変わっていたり、最後まで謎に包まれた人物がいたり、毎シーン新しく映画と出会い直せるようだ。そうした魅力はどのようにして生まれたのか。制作過程、登場人物の造形や彼/彼女らにセリフを言...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:15 AM

January 29, 2022

「タル・ベーラ伝説前夜」タル・ベーラインタビュー

タル・ベーラの主人公は、しばしば受動的な観察者であり、そのカメラは遠く距離を保ったまま、目の前で起こるあり様に対して悲嘆に暮れる傍観者であり続ける。大量の泥や雨とともに荒廃した町を長回しでゆっくり描くタル・ベーラの白黒世界は、彼の長編第五作『ダムネーション/天罰』(1988)を基点に形成されている。これこそ『サタンタンゴ』(1994)のスローシネマの美学のまさに原点である。 「タル・ベーラ伝説前夜...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:00 AM

September 13, 2021

第78回ヴェネチア国際映画祭 山下つぼみ監督インタビュー《後編》

(前編はこちら)ーーイメージフォーラム研究所で制作されたアニメ作品を除くと、かなり台詞が多く、状況や心情がほとんど言葉で説明されているような作品が多いように見えます。それに対して、『かの山』では、言葉を削ぎ落とした、まったく逆のアプローチをしています。『かの山』に登場するカップルは、関係の溝を視線によって語っています。後半の入浴シーンまで二人の視線はまったく合いません。背中を向ける、あるいは、遮蔽...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:41 PM

第78回ヴェネチア国際映画祭 山下つぼみ監督インタビュー《前編》

第78回ヴェネチア国際映画祭、オリゾンティ部門の短編コンペティションに、山下つぼみ監督の新作『かの山』がノミネートされた。 複数の短編を制作しながらも、まだ私たちにとって未知の若手監督である彼女に、ここに至るまでの道のり、新作に込められた思いを伺った。 *インタヴューは前編、後編に分けてお送りします ーー『かの山』に至るまでの映像、あるいは映画との関係を教えていただけますか? 山下つぼみ 子供の頃...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:33 PM

March 21, 2021

《第3回 映画批評月間:フランス映画の現在をめぐって》『涙の塩』ウラヤ・アマムラ、スエリア・ヤクーブ、ルイーズ・シュヴィヨット インタヴュー

本インタビューを読むことで、フィリップ・ガレルがいかに3人の若い俳優たちと誠実に向き合い、彼女たちとともに映画を撮ってきたかが伝わってくるだろう。特に脚本段階では、俳優たちとのコミュニケーションから、細部を柔軟に変えていることが、スエリア・ヤクーブとルイーズ・シュヴィヨットの言葉から伺える。シュヴィヨットの述べた「遭遇するふたつの『若さ』についての映画」という言葉は重要である。  また、彼女たち3...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:43 PM

March 2, 2021

『二重のまち/交代地のうたを編む』小森はるか+瀬尾夏美監督インタビュー

 つくり手たちは四人の登場人物ーー彼らはまちの外からやってきて、まちの人に話を聞き、まちについて書かれたテキストを朗読するーーを「旅人たち」と呼ぶ。バスに揺られる若い女性の姿に、彼女の声のナレーションがすうっと被さるとき、それを見る観客たちもまたこの「まち」に漂い着いたひとりの旅人になる。  このまちには、地面の下にもうひとつのまちがあるらしい。このまちの少し遠い未来を描いた物語があるらしい。旅人...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:39 AM

November 20, 2020

『空に聞く』小森はるか監督インタビュー

東日本大震災の後、約三年半にわたり陸前高田災害FMのパーソナリティをつとめた阿部裕美さん。『空に聞く』では、地域の人々の声を聞き、その声を届ける彼女の日々が映されている。かさ上げ工事が進み、新しいまちが作られていく中で、どのようにして暮らしていくのか。 小森はるか監督に、阿部裕美さんのことや「空」に込められた思い、また「あの時にしか撮れなかった」と監督自身が語るファーストシーンのことなどお話を伺っ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:00 AM

October 15, 2020

『スパイの妻<劇場版>』 黒沢清監督 インタヴュー

 いよいよ劇場公開を迎える黒沢清監督による初の8K作品『スパイの妻』(2020年度ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞受賞作)は、太平洋戦争前夜の神戸を舞台とした氏にとって初めての時代物の作品である。つねに我々の同時代に潜んでいる亀裂を、ごく当たり前の風景に見出し続けてきた黒沢清監督は、世界史を揺るがす激動が足音を潜めて迫り来る時代への孤独な闘争を織りなすひと組の夫婦に、いかなる視座をもって、いかなる光...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:35 PM

September 26, 2020

『イサドラの子どもたち』ダミアン・マニヴェル監督インタビュー

 神話的なダンサー、イサドラ・ダンカンはモダンダンスの祖である。1913年4月19日、4歳と6歳の彼女の子供ふたりを乗せた車がセーヌ川に転落。ふたりとも溺死した。彼女はその事実から立ち直ることができなかった。  ダンカンというダンサーについてなにも知識を持たないままにこの映画を見始めた観客にまず知らされるのは、上記の事実だけだ。いわゆるイサドラ・ダンカンについてのドキュメンタリーでも、イサドラ・ダ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:20 AM

June 27, 2019

『幻土』ヨー・シュウホァ監督インタヴュー「Outside to Outside」

大規模な埋め立て事業によって、国土の拡張を図り続けるシンガポール。ヨー・シュウホァ監督の長編2作目となる『幻土』(げんど)は、そんな母国を舞台に、現場で働く移民労働者の失踪事件と、その真相に迫る刑事との混沌とした夢現な状況を描いている。刻一刻と変容する都市の景観、海岸沿いを覆うネオンの照射、そして異国の地で繰り返される日常の搾取に対し、いまだ見ぬ夢の場所を想像することとは、いったいどういうことなの...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:43 PM

April 17, 2019

『愛がなんだ』今泉力哉監督インタヴュー

関係の現状維持を目的にしてしまう人の物語に魅かれる 「体裁とか、不謹慎とか。友情とか、家族とか。生活とか、夢とか。社会とか、身分とか。そういう類いのものは"好き"という気持ちの前では無力だ」──今泉力哉の長編第三作『こっぴどい猫』の主人公が書いた小説『その無垢な猫』にあるこの一節は、角田光代の原作を映画化した彼の最新作『愛がなんだ』の主人公テルコのためにあるのかもしれない。職務を怠慢でクビになろ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:57 PM

March 17, 2019

『小さな声で囁いて』山本英監督インタヴュー

光を観る 映画は幾度も旅を描いてきたし、いつも風景が問題になる。山本英もまた熱海という観光地に向き合うのだが、山本の描く旅にはそもそも目的がはっきりとせず、沙良(大場みなみ)と遼(飯田芳)の過去に何があったのかもほとんど分からない。ふたりは未来を見失った放浪者だろう。しかし、熱海の風景は観光地としての夢を見させる力を失っている。代わりにあるのはいくつもの過去で、自分たちの過去すらもが朧げなふたり...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:41 PM

February 13, 2019

ガブリエラ・ピッシュレル監督インタビュー
常川拓也

some kind of hope in the pessimistic world ボスニア出身の母とオーストリア出身の父を持つガブリエラ・ピッシュレルは、かつてクッキーを箱詰めする工場で働いていた。だからこそ、その経験や価値観を指針とし、映画に正当な労働者の視点を持ち込んでいる。また同時に、彼女は「ロッキー・バルボア」のような度胸のあるへこたれない女性主人公を創出したいと語っていた。それらは、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:15 PM

November 10, 2018

『体操しようよ』菊地健雄(監督)和田清人(脚本)インタビュー

(c)2018『体操しようよ』製作委員会60歳のシングルファーザー佐野道太郎(草刈正雄)が定年退職した日、娘の弓子(木村文乃)から、手紙をもらう。しかし、その内容は、今後は自分で家事をするようにというものだった。初めての家事、そしてラジオ体操を通してそれまで関わることのなかった地域と交流を持つことで、道太郎は新しい人生を見つけていく。 定年後の生活という、父親世代の物語を映画化するのにどのようなや...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:12 AM

October 11, 2018

『眼がスクリーンになるとき』福尾匠インタヴュー
三浦翔

「メディアよりイメージを優先する」態度  福尾匠の『 眼がスクリーンになるときーーゼロから読むドゥルーズ『シネマ』 』(フィルムアート社)は、映画をイメージの分類学として論じた『シネマ』から無数に並ぶ映画作品や作家の固有名をほとんど排し、哲学的なシステムとして再構築する野心的な挑戦である。それはある意味で映画史に対して挑発をかけるかのようでもあるが、運動イメージ=物語的な古典映画、時間イメージ=反...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:08 AM

September 24, 2018

『あみこ』山中瑶子インタヴュー
三浦翔

底知れない広がりや誰にも居着かないしなやかさ 約一年前の第39回ぴあフィルムフェスティバルで、山中瑶子監督は初監督作となる『あみこ』で「PFFアワード2017」観客賞を受賞した。その後ベルリン、香港、韓国、カナダなど世界中の映画祭を周り評価され、遂に9月1日(土)にポレポレ東中野で劇場公開された。通常のレイトショーが即座に満席となったことで、異例のスーパーレイトショーという聞き慣れぬ追加上映までを...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:08 PM

September 7, 2018

PFF総合ディレクター 荒木啓子インタヴュー
三浦翔

映画監督のイメージを持つこと  ぴあフィルムフェスティバル(以下:PFF)は、"映画の新しい才能の発見と育成"をテーマにした映画祭である。今年40回目を迎えるPFFは、いわゆる自主映画と呼ばれる、商業映画の枠組みではなく自分たちの手で映画を作る監督たちの映画を上映する「PFFアワード」をメインプログラムとしており、合わせて様々な招待作品の上映とトークを企画し、映画祭全体が新たな映画作りを志す人の...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:04 PM

April 13, 2018

『泳ぎすぎた夜』五十嵐耕平&ダミアン・マニヴェル監督 インタヴュー
松井宏

すべての日々は新しくて、発見に満ちている 五十嵐耕平&ダミアン・マニヴェル監督 インタヴュー フランスと日本の同世代の監督が、お互いの作品に恋に落ちて、友人になって、一緒に映画をつくることを決めた......。まるで映画の1エピソードみたいなお話だけれど、ダミアン・マニヴェルと五十嵐耕平にとっては、ごくごく自然で、そして必然的なことだったようだ。ふたりの話を聞いているとそう思うし、それは彼...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:30 PM

March 28, 2018

アンゲラ・シャーネレク監督インタビュー

帰らざる時間 アンゲラ・シャーネレク監督インタヴュー  3月14日から17日にかけてアテネ・フランセ文化センターにて行われた特集上映で、私たちは彼女の作品群を発見した。一作ごとに変化する作風、しかしそれらを貫く揺るぎない映画への意志。  取材前日のQ&Aで、小津安二郎の偉大さについて「彼は他のなににも似ていない映画をつくった」と語っていた彼女。その言葉はある意味で、彼女自身の作品についても当ては...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:30 PM

January 12, 2018

『わたしたちの家』清原惟監督インタビュー
三浦翔

『わたしたちの家』のテーマはいかにして聴くことができるのか ふたつの物語がなにも物語的な説明もなしに重なってしまうというコンセプトからは、一見すると映画的な実験精神を感じるかもしれない。しかし『わたしたちの家』から感じるのは、あたかも映画とは昔からこのようなものであったとでも言わんばかりの勇気と知性である。こんな映画を撮り上げる清原惟はどんな人物なのか、なにを考えているのか。清原監督の霊感に迫って...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:00 AM

September 14, 2017

『汚れたダイヤモンド』アルチュール・アラリ監督インタヴュー vol.2
松井宏

←vol.1 明解さの探求 アルチュール・アラリ監督インタヴュー ──作品全体を通して、ライティングがものすごく作り込まれている。夜のシーンはどれも本当に美しい。撮影監督のトム・アラリはあなたのお兄さんですが、ライティングについて、あるいは作品全体のルックについて、彼とはどんな話し合いをしたのでしょう? A.H. トムとはものすごく時間をかけて話し合ったし、準備にもかなり時間をかけた。トムとはずっ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:51 PM

September 9, 2017

『汚れたダイヤモンド』アルチュール・アラリ監督インタヴュー vol.1
松井宏

明解さの探求 アルチュール・アラリ監督インタヴュー つくり手の多大なる思考と、実践の苦闘がまざまざと刻まれ、ごつごつとした異質さを備えながら、それでいてなお透明な抜けの良さを獲得してしまう映画が、たしかにある。アルチュール・アラリの初長編作『汚れたダイヤモンド』はそういう作品だ。シナリオや演出やテクニカルな面はもちろんのこと、俳優について、ジャンルについて(そう、今作は「フィルム・ノワール」だ)、...全文を読む ≫

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July 22, 2017

『密使と番人』三宅唱監督インタビュー 「You know we've got to find a way」

あの三宅唱監督が時代劇を?本作の存在を耳にしたときには、素直にそんな驚きがあった。完成した作品を目にすると、たしかに時代劇の衣装を着てチョンマゲを結った登場人物たちは出て来はするものの、日本刀による立ち合いも、時代劇調の会話のやりとりもない。人里離れた山の中を黙々と歩む男と、その周辺に住む者がわずかばかり出てくるだけだ。そして、人の歩みに合わせてススキが音を立て、夜が訪れ、雪が降る。 ユーロ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:30 AM

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